2024年04月20日( 土 )

公文書改ざん事件は森友事件枝葉に過ぎない

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は森友学園問題に関する佐川宣寿氏への証人喚問と公文書改ざんについて論じた3月27日付の記事を紹介する。


元財務省理財局長の佐川宣寿氏の証人喚問を実施しても、佐川氏が証言を拒絶すれば真実は掴めない。問題の核心は国有地の不正廉売である。
国有地が不正に払い下げられていなければ、そもそも問題は生じていない。
時価が約10億円程度と見られる国有地が、1億3,400万円で払い下げられた。
しかも、国は土壌改良費として1億3,200万円を支払っている。差し引き200万円で時価が約10億円程度と見られる国有地が払い下げられた。
この売却価格を近畿財務局が公表していなかった。豊中市議の木村真氏が情報開示請求を行ったのに、国が情報を開示しなかったことが問題の発端だった。
木村市議はメディアに情報を伝え、朝日新聞が昨年2月9日にこれを報道した。これが問題表面化の端緒である。

国会が問題を取り上げたのは昨年2月17日だ。安倍首相は待ってましたとばかり、威勢よく踏み込んだ。「私や妻がこの認可あるいは国有地払い下げに、もちろん事務所も含めて、一切かかわっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もしかかわっていたのであれば、これはもう私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきりと申し上げたい、このように思います」
「いずれにいたしましても、繰り返して申し上げますが、私も妻も一切、この認可にもあるいは国有地の払い下げにも関係ないわけでありまして、(中略)繰り返しになりますが、私や妻が関係していたということになれば、まさに私は、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員もやめるということははっきりと申し上げておきたい」

朝日新聞が問題を報じてから、財務省および近畿財務局は関連公文書を洗いざらい点検したと考えられる。その公文書には、政治の関与、問題処理の特殊性、特例処理の言葉が散りばめられていた。これでは逃げ切ることが難しいと判断し、公文書改ざんの方針が定められたのだろう。
問題になりそうな個所を消滅させてしまえば、国会での追及を乗り切ることができる。この方針が固められ、安倍首相夫妻が関わった痕跡はすべて消される前提で、安倍首相が踏み込んで発言したのだと考えられる。
しかし、公文書は民主主義の根幹となる国民共有の資産である。その改ざん=虚偽公文書作成は刑法でも懲役1年以上10年未満の刑罰が科せられる重大な刑法犯罪である。
14の公文書、300箇所以上の改ざんは、歴史上類例を見ない巨大国家犯罪である。証拠の改ざんで現職の検事が実刑判決を受けたのが大阪地検特捜部である。その大阪地検特捜部がこの事件を担当していることは皮肉である。大阪地検特捜部がこの事件を立件し、きびしい判断を示さなければ世間が黙ってはいない。

近畿財務局、財務省、より広く捉えて政府は、国会に虚偽公文書を提示して、国会の業務を妨害した。偽計業務妨害罪も問われなければならない。
佐川宣寿氏の公文書改ざん事案に関する国会証人喚問は、事件全体の枝葉の部分の調査にかかるものだ。森友問題全体を佐川宣寿氏が主犯とする公文書改ざん事件に矮小化してはならない。
問題の核心は国有地の不正払い下げ疑惑であり、公文書に関しては、虚偽公文書作成罪だけでなく、財務省、近畿財務局、政府による偽計業務妨害罪について、迅速な捜査と立件が求められている。

※続きは3月27日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第2002回「昭恵氏喚問実現まで野党は全審議拒絶せよ」で。


▼関連リンク
・植草一秀の『知られざる真実』

 

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