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2018年03月30日 07:04

風雲急を告げる朝鮮半島情勢 ハワイに集う日米韓の専門家の分析(中) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

主導権は米中どちらに?

 こうしたアーミテッジ氏の問題提起を受け、参加者の間で活発な議論が展開された。

 A アメリカ政府は中国を敵対国と認識している。習近平は毛沢東の神格化を自らに当てはめるのであれば賢明な方向とはいえないだろう。なぜなら毛沢東は独裁化で失敗したからだ。1人で決定することのリスクはあまりに大きい。失敗が許されないわけで、余裕のない政治は危険極まりない。そんな中国とどう向き合うのか。

 B アメリカにとっての脅威は多様化している。人種問題、ロシアや中国、不可解な北朝鮮、収まる兆しの見えないテロ。真の脅威は何か?脅威を峻別する必要がある。
 思えば、第二次世界大戦や1980年代の冷戦時代はより深刻だった。国家の存亡がかかる危機的状況に世界が飲み込まれた。翻って、現在は中国の脅威といっても、軍事的能力はあるが、攻撃の意図はないわけで、それほど危機が迫ったとも思えない。ロシアも同様だ。ISISは唯一、反米という強固な意図をもつ存在だが、攻撃能力には限りがある。よって、優先順位をつけ、右往左往することはない。

 C トランプ政権のアジア政策には優先順位はあるのか。「ツイート外交」では限界だろう。大声で叫ぶ「サウンド外交」よりはましといった程度。TPPからの脱退は失敗としか言いようがない。最悪の決定だった。

 D (Cに同感の意を示し)北朝鮮の金正恩との核ミサイルボタンの大きさを競うようなことも無意味。ティラーソン国務長官の解任を始め、スタッフ不在状態は深刻である。歴史的観点から見れば、トランプの対応は失敗の烙印を押されることになるだろう。日本との関係強化のみが評価に値する。

 E 先週、河野外相と会談した。来る米朝首脳会談では核ミサイル問題に加え、拉致問題を提示してほしいとの要請がった。安倍首相はスキャンダルで苦しい立場のようだ。しかし、9月の総裁選を乗り切れば、戦後最長の首相になる。ただ、現状では安倍・金正恩会談は実現するのかと問われれば、難しいと答えざるを得ない。北朝鮮情勢は日々動くが、安倍政権はついて行っていない。

 F(中国に詳しい) 一帯一路の行方に関心がある。中国、ロシア、中央アジアなどの連携が追求されているからだ。また、アメリカの対中経済圧力(関税強化)は成功するのか。大いに疑問だ。今回の決定で、台湾も圧力を受けることになる。アメリカや世界の市場も厳しい反応に終始している。日本も含め、各地で株価が急落することになった。中国の反発と反撃は無視できない。ノルウェー、スリランカ、カンボジアなどでの中国の動きも不穏だ。
 とはいえ、アメリカが台湾へ空母を派遣するような行動は得策とはいえない。2,300万人の台湾の未来を守るうえで、アメリカは武器の売却を検討すべきだ。

 G アメリカが中国を軍事力で破壊することはあり得ない。あくまで外交重視で臨むべきである。ポンペオ新国務長官は政治家で、スマートな人物だ。インテリジェントだが、軍事選択の可能性も柔軟に使える才覚の持主である。ティラーソンはバランス感覚に欠けた。これからはマティス国防長官がカギを握るはず。
 長期的視点から、北朝鮮の政権交代の可能性を検討すべき。金正恩の意図は計り知れない。軍事的対応では被害も大きく、自殺行為になりかねない。その意味では、先制攻撃はあり得ない。あくまで経済制裁の強化に注力すべし。南北対話は前向きなスタートだ。韓国はよくやった。在韓米軍は絶対に必要で、その存在を前提に有利な交渉を図るべき。日本による経済制裁も有益である。

 H 朝鮮半島情勢について悲観してはいない。未曾有のチャンスかもしれないからだ。世界はこれから1年から1年半にかけて大きな混乱期に入るだろう。過去の変化、混乱、たとえば60年代とはまったく違う。何をしても咎めを受けない可能性すらある。新たな国際関係の文化の台頭ともいえる。
 思い起こしてほしい。83年のラングーン事件。アメリカは北朝鮮に反撃をしたか。しなかったではないか。今はどうか。北朝鮮の出方次第では反撃、先制攻撃もあり得る。しかも、北朝鮮の核保有という新たな情勢下でのことだ。この違いは無視できない。日本や中国の出方も重要になる。とくに北朝鮮にとって最大の経済通商相手国の中国の役割は大きい。なぜなら経済制裁の主役であるからだ。金正恩は経済と核開発の両輪を目指したが、経済では成功していない。それを成功に導けるのは中国であろう。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
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