2024年04月27日( 土 )

No Charity, but a Chance!(後)

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(福)太陽の家 副理事長 山下 達夫 氏

別府は「障がい者スポーツ発祥の地」です

 ――太陽の家の現在の活動に関して教えていただけますか。年間約9,000人の視察が、国内・海外からあると聞いています。50周年の記念式典には、天皇皇后両陛下、そのほか皇太子など多くの皇室関係者が視察に訪れています。

太陽の家

 山下 現在太陽の家は、本部を別府に置き、日出、大分、杵築、愛知、京都に事業所があります。合せて約1,000人の障がい者、約700人の健常者、約100人の高齢者が在籍しています。その活動は、大きく3つの柱に分かれます。

 1つ目の柱は、「障がい者スポーツ支援」です。大分県・別府は「障がい者スポーツ発祥の地」です。1964年の東京パラリンピックを経て、1975年には「第1回フェスピック大会」(現在のアジアパラ競技大会の前身)が大分県で開催されました。1981年には「第1回大分国際車いすマラソン大会」が開催され、今年で38回目を迎えます。

世に身心障がい者はあっても仕事に障害はあり得ない

 2つ目の柱は、「障がい者の自立支援」です。創設者の中村博士は、「保護より機会を」「世に身心障がい者はあっても仕事に障害はあり得ない」という理念のもとに太陽の家を創設しました。太陽の家は、障がい者施設ではありますが、一般企業や共同出資企業、協力企業などへの就労ができるようになる支援を行っています。

お客は1日約1,000人で、8割は地元や近隣の健常者

 3つ目の柱は、「障がい者の地域密着」です。太陽の家では、スーパーマーケット「サンストア」を1977年に開設しました。太陽の家からの雇用は22名で、障がい者は16名です。今年で40年を迎えます。お客さんは1日約1,000人、8割は地元や近隣の健常者です。

現代社会は複雑化し急速に精神障がい者が増えている

 ――太陽の家創設当初に比べて変化した点、現在課題となっている点はありますか。

 山下 身体障がい者の自立支援のために太陽の家はつくられました。その後、労働基準法や交通安全法が厳しくなり、ヘルメット着用、車のシートベルト着用、さらに飲酒運転取り締まり強化などが進んだおかげで、大きな事故は激減しました。また、ポリオウィルスによって引き起こされる脊髄性小児麻痺は、ポリオワクチンの発達で日本ではほとんどなくなりました。

 一方で、現代社会は複雑化し、急速に精神障がい者が増えています。そこで、太陽の家でも、私が16年に着任してからは、精神障がい者の雇用促進に力を入れています。現在精神障がい者の雇用、採用に関して企業は十分なデータベースを持っていません。太陽の家は、そのデータを提供することによって共同出資企業に貢献、Win-Winの関係を引き続き維持していきたいと考えています。

2020年東京パラリンピックの聖火は博士の銅像前から

 ――中村博士の人生を描いた物語がTV化されると聞きました。その点にも触れながら、読者(健常者、障がい者)にメッセージをいただけますか。

中村裕博士の銅像

 山下 中村博士の物語『太陽を愛したひと~1964あの日のパラリンピック~』は、今年の夏にNHK総合テレビで夜10時から11時10分まで放映される予定です。中村裕博士の役は、向井理さん、夫人の役は、上戸彩さん~岸恵子さんです。ぜひ、ご覧になってください。

 健常者の読者に対するメッセージは、「我々は障がいはありますが、皆さまとまったくおなじ“ふつう”です」心のバリアフリーをつくって欲しいと思います。一方、障がい者の読者に対するメッセージは、「感動される人ではなく、感謝される人になって欲しい」。障がい者だからと言って甘えることなく、頼ることなく、自立してほしいと思います。

 今、太陽の家で、ぜひ実現したいことが1つあります。2020年東京パラリンピックの聖火の1つを、ここ大分・別府 太陽の家の中村裕博士の銅像の前を出発点にすることです。ぜひ、読者の皆さまの応援もよろしくお願いいたします。

(了)
【金木 亮憲】

太陽の家
 大分県別府市亀川に本部を置く(福)。1965年に医師中村裕によって創設。作家の水上勉(「太陽の家」を命名)や評論家の秋山ちえ子の支援もあって、オムロンの立石一真、ソニーの井深大、ホンダの本田宗一郎らの実業家の理解を得、共同出資会社を設立、障がい者を雇用し、通常の工場と同さまの製品の生産を行う。障がい者が施設内で閉じた生活を送るのではなく、地域と積極的に関わることを目指している。別府市の太陽の家内にあるスーパーマーケットや銀行の支店、体育館、温泉などの施設は地域の住民も利用でき交流の場にもなっている。

 
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