2024年03月29日( 金 )

虎ノ門 国際新都心への道すじ~森ビルがつくる都市のかたちとは(前)

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 アークヒルズ、六本木ヒルズに代表される「ヒルズ」シリーズで東京の再開発を牽引してきた森ビル(株)。「ヴァーティカル・ガーデンシティ」を理想に掲げ、さまざまな手法で都市づくりに取り組んできた同社が現在、創業の地で手がけるのが、虎ノ門ヒルズエリアの再開発だ。超高層、駅直結など話題が尽きない虎ノ門ヒルズエリアの再開発を担当する都市開発本部開発事業部・開発1部部長の長尾氏と広報室の落合氏に森ビルが手がけてきた再開発と虎ノ門ヒルズについて聞いた。

原点は1956年完成の西新橋2森ビル

 ――御社創業の地でもある虎ノ門エリアはこれから大きく変わります。虎ノ門エリアと御社の歴史とともにお聞かせください。

西新橋2森ビル

 西新橋に現存する「西新橋2森ビル(以下、2ビル)」が森ビルの貸しビル事業の原点です。森ビルの創業者である森泰吉郎は、災害などに強い鉄筋コンクリート造の強固なビルを建設すべく、1956年、生家跡に2ビルを完成させました。その後も、ビル名の前に番号を振った、いわゆる「ナンバービル」を虎ノ門周辺に次々に建てていきました。ナンバービルの基本的な考え方は、2ビルと同様、災害に強い強固なビルということに加え、建物としてのスペックや合理性を高めることでした。また、ナンバービルはその多くが近隣の方々との共同建築の手法を用いており、地元の方々との信頼関係をベースとして建てられたものでした。

 その後、約30年間でナンバービル開発を集中して行い、多いときは40棟以上のナンバービルが存在しました。このナンバービルの発展と時を同じくして、霞が関が近いことも後押しとなり、虎ノ門も日本有数のオフィス街へと変わっていきます。しかし、丸の内など周辺のエリアでは再開発事業によって大規模ビルが次々と竣工する一方で、虎ノ門エリアは小規模なビルが密集したまま取り残されてしまいました。転機となったのは、2014年の「虎ノ門ヒルズ 森タワー」の誕生です。我々は「ここから、東京の未来をつくり出す」という強い想いをこめ、この「虎ノ門ヒルズ 森タワー」を誕生させました(事業主:東京都、特定建築者:森ビル)。

 「虎ノ門ヒルズ 森タワー」の誕生および「新虎通り」の開通により、虎ノ門エリアは明らかに新しい磁力を放ち始め、人々のエネルギー、ビジネスのエネルギーが堰を切ったように集まり始めています。

 ――虎ノ門エリアでは新たに3つの超高層ビルが開発されますが、エリア全体との連携についてはどのように考えていますか。

(左)広報室・落合有氏(右)都市開発本部開発事業部開発1部部長・長尾大介氏

 エリア全体の回遊性を高める、という観点が1つ重要だと考えています。とくに「(仮称)虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」は、新たに整備される「東京メトロ日比谷線虎ノ門新駅(仮称)」と一体になったプロジェクトであり、新駅とまちをつなぐ交通結節空間として、地下には吹き抜けの駅前広場を整備する計画となっています。また、同プロジェクトでは、周辺の開発プロジェクトとつながる歩行者ネットワーク整備の一環として、桜田通りをまたぐ歩行者デッキが設けられることもポイントです。森ビルのプロジェクトも含めて、周辺ではオフィス、住宅、ホテル、商業、病院、カンファレンス、バスターミナルなど、さまざまな都市機能が新たに整備される予定です。それらの都市機能を地上、地下、デッキの各レベルで結び付け、エリア全体の回遊性を高めることが狙いです。

 森ビルは、住む、働く、遊ぶ、学ぶ、憩うなど、さまざまな機能がコンパクトに集約された「ヴァーティカル・ガーデンシティ」を理想として掲げています。世界から人・モノ・金・情報を惹きつける「磁力=総合力」を高め、東京が国際都市間競争を勝ち抜くためには、グローバルプレーヤーが必要とするあらゆる都市機能がコンパクトにまとまっていることが理想です。虎ノ門エリアも、再開発によって真の国際新都心・グローバルビジネスセンターとして“磁力”ある都市となるべく、新たに生み出されるさまざまな都市機能を有機的に結び付けるネットワークが重要だと考えます。

虎ノ門および周辺

虎ノ門ヒルズエリア(パース)

超一流のコラボレーション

 ――ヒルズの建築デザインについて統一されたコンセプトなどはございますか。

新虎通りのイメージ

 “ヒルズ”で統一されたコンセプトはありません。我々が手がけるプロジェクトは、その時代に応じた最先端のデザインに加えて、エリアの歴史、町並みなどあらゆるものを考慮し、いわばすべてオーダーメイドでつくり上げているからです。たとえば、「愛宕グリーンヒルズMORIタワー」と「愛宕グリーンヒルズフォレストタワー」の外観は、それぞれ仏教と縁の深い蓮の花のつぼみと花びらを模したシンボリックなものとなっています。また、2棟の建物は、愛宕山の自然、伝統、文化と融合する荘厳な気配を漂わせる青松寺の伽藍を挟んで配置され、山門のようなイメージでデザインされています。

 また、愛宕グリーンヒルズの建物の外観デザインは、世界的な建築家シーザー・ペリ氏が手がけていますが、ほかにも森ビルの物件では、国内外の超一流の建築家・デザイナーの方々に関わっていただいています。特徴的なのは、外観デザイン、内観デザイン、さらに用途ごとのインテリアデザインなど、それぞれ、その分野の超一流の方を起用していることです。

 この超一流同士のコラボレーションというのは、一見すると合理的ですが、困難もともないます。それは、コミュニケーションの相手が増えるだけでなく、超一流の方々の強い個性と主張をまとめ上げることが求められるためです。超一流の建築家・デザイナーをまとめ上げるためには、デベロッパーである森ビルに、都市づくりに対する明確な思想や強い信念、そして、彼らを納得させる論理やリーダーシップが不可欠になります。

 そうして、森ビル自身が総合力や統合力をもち、それぞれの分野のナンバーワンを世界から集め、まとめ上げることで、開業から15周年を迎えた六本木ヒルズや、10周年を迎える上海環球金融中心など、世界的に高く評価され続ける都市をつくり出すことができているのではないかと思います。

 虎ノ門ヒルズエリアで新たに建築する3棟のタワーも、それぞれ世界的な建築家・デザイナーの方が手がけています。すべてが完成すれば、すでに完成している「虎ノ門ヒルズ 森タワー」と合わせて、エリアのシンボルとなるのではないでしょうか。

(つづく)
【永上 隼人】

<COMPANY INFORMATION>
森ビル(株)
代 表: 辻 慎吾
本 社:東京都港区六本木6-10-1
設 立:1959年6月
資本金:670億円
売上高:18/3)2,497億円

 
(後)

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