2024年04月25日( 木 )

虎ノ門 国際新都心への道すじ~森ビルがつくる都市のかたちとは(後)

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新虎通りのエリアマネジメント

 ――虎ノ門と新橋はそれほど離れていませんが、隣接する2つのまちの性格は大きく異なると感じます。

新虎通りCORE

 たしかに「虎ノ門」と「新橋」の雰囲気は大きく異なりますが、2014年には環状2号線が整備され、地上には新橋と虎ノ門を結ぶ「新虎通り」という新たな通りが誕生し、両エリアの間に大きな人の流れが生まれました。新虎通りの沿道は、東京都の「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」の指定を受けており、1階に賑わい施設を設けることなどを条件に容積率が緩和されるため、今後、建替えが進むことが期待されています。そうなれば、沿道にさらなる賑わいが生まれ、新橋と虎ノ門の間の回遊性が高まり、虎ノ門と新橋の賑わいが混じり合うのではないでしょうか。

 18年9月には、街区の統合・再編を実現する第1号プロジェクトである「新虎通りCORE」が竣工する予定です。新橋と虎ノ門の中間地点に位置するこのプロジェクトは、沿道開発のモデル事業として街並みづくりを牽引し、新虎通り沿道の賑わいづくりの拠点となることを目指しています。

 また、新虎通りでは、「新虎通りエリアマネジメント協議会」が中心となって、沿道の賑わいづくりを進めています。16年11月には、新虎通りを使った「東北六魂祭パレード」を開催。東北6県を代表する祭が新虎通りを行進し、約3万人の観客を集めました。また、「旅する新虎マーケット」では、日本全国のヒト・モノ・コトを集めた発信を行い、地方の文化を全国に発信するショーケースとして注目を集めました。今後も、新虎通りを活用したイベントを開催していく予定です。週末の賑わいなど、まだ課題も残っていますが、虎ノ門ヒルズエリアとも一体となって、この新虎通りを盛り上げていきたいと思っています。

森ビルの再開発の軌跡

 ――森ビルが手がける大街区・再開発の源流はなんでしょうか。

 森ビルの再開発の源流はアークヒルズです。アークヒルズは、民間初の大規模再開発事業であり、オフィス、住宅、ホテル、コンサートホール、屋上庭園などがコンパクトにまとまった複合都市です。まさに、職住近接、文化の発信、都市と自然の共生などを具現化した「ヒルズ」の原点であり、六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズの源流となった大街区の再開発です。

 当時、高層のオフィスビルとしてはすでに「霞が関ビルディング」(※)がありましたが、アークヒルズはオフィスビルだけではなく、さまざまな用途を複合した“街”をつくりあげました。

アークヒルズ(竣工前航空写真)

アークヒルズ

 アークヒルズは、17年もの歳月をかけて実現したプロジェクトであり、当時の森ビルの規模からいっても、非常に大きな挑戦でした。当時の森ビルがこの事業を成し遂げられたのは、当時から森ビルがまちづくりに対する高い志と情熱をもっていたからだと思います。そして、これらの志と情熱は、周囲から「できるはずがない」と言われ、同じく17年をかけて400人の地権者と実現させた「六本木ヒルズ」へとつながっていきました。

 アークヒルズでは転出を選ばれた権利者の方も多かったのですが、アークヒルズの成功が森ビルへの信頼につながり、六本木ヒルズでは多くの方に残っていただくことができました。今では、残った地元の方々が核となり、オフィスワーカー、住民、店舗スタッフ、近隣の方々など、さまざまな人が参加するコミュニティが生まれています。

六本木ヒルズ

 六本木ヒルズでは、新たにタウンマネジメントという考え方を導入し、都市を育み、都市の磁力を高めることを意識しています。六本木ヒルズは2003年の開業から今年で15年を迎えますが、今も毎年4,000万人以上を惹きつけ、商業施設の売上も昨年過去最高を記録するなど、年月が経つにつれて”磁力”が高まっています。

 森ビルが目指すのは、大規模な再開発による都市再生で東京全体の磁力を高め、「東京を世界一の都市にする」ことです。そのために、今後港区を中心に、1兆円をかけて10年で約10のプロジェクトに取り組みます。ご紹介した虎ノ門ヒルズエリアだけでなく、たとえば虎ノ門・麻布台では、約1,300戸の住宅に加え、ホテル、インターナショナルスクール、生活支援施設や交流施設などの多様な都市機能を一元的に整備するほか、外国人にとっても暮らしやすい生活環境を創出し、東京の磁力をさらに高めていきます。

 いずれも、デベロッパーとしてチャレンジし甲斐のある、難易度の高いプロジェクトばかりですが、「だからこそ森ビルの出番なんだ」という想いもあります。これからも森ビルは、東京が世界の都市間競争に勝ち抜いていくため、都市の総合力向上に寄与し、世界中からヒト・モノ・カネを惹きつける「磁力」ある都市づくりに邁進していきます。

(※)1968年に完成した国内初の超高層ビルとして知られる三井不動産が開発したビル。地上36階建、地上高147m。

虎ノ門ヒルズ
地域分断を避けるため、環状2号線をトンネル構造としたことで、トンネルの換気口が必要となったが、虎ノ門ヒルズ森タワーの敷地内にガラス張りでデザインした換気塔を設けることで解決した。

画像左が換気塔

六本木ヒルズ
広場状の歩行者デッキ(66プラザ)も本来は道路の上を構造物で覆うことは道路法で禁じられているが、港区の公園と位置づけることで現在の姿を実現することができた。結果的に、街全体の緑化と歩車分離による安全性、街区をシームレスにつなぐことを実現できた。

66プラザ(従前、従後)

(了)
【永上 隼人】

<COMPANY INFORMATION>
森ビル(株)
代 表: 辻 慎吾
本 社:東京都港区六本木6-10-1
設 立:1959年6月
資本金:670億円
売上高:18/3)2,497億円

 

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