2024年10月13日( 日 )

打ち上げ花火は日本だけのものなのか?(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 花火の見所は、花火が演出する形、色、立体感、爆発音など、さまざまだが、昔の花火の色は黄色のみだったという。しかし、その後、技術が発達し、現在ではたくさんの色を表現できるようになった。

 色の表現は添加する元素によって違ってくる。バリウムは緑色、カルシウムは橙色、ナトリウムは黄色、銅は青を表現する。さらに元素を混ぜることにより、それ以外の色も表現できるようになった。

 花火は色だけでなく、音でも我々を楽しませてくれる。サルートという花火は花火特有の音を演出するし、アルミニウムなどの薄片では、ノイズを発生させる。火薬の玉に穴を空けると、呼子(よびこ)のような音色を発生させることができる。このようにかたちや色だけでなく、さまざまな音を演出することで花火大会を盛り上げている。

 さらに、最近になって大きな進化を遂げたのが色の演出である。花火が広がる途中、色が変わったり、一度消えた色がまた現れたりなど、劇的な色の演出ができるようになったのだ。花火の寿命は打ち上げてから空で消えるまでのたったの5秒ほどだが、この5秒のために花火師は数カ月におよび情熱を注ぎこむことになる。

 日本には花火師の腕を競う各種大会があり、日本の花火のレベルは世界的にみてトップレベルのようだ。日本の花火は基本的に球形だが、欧米諸国の花火は円筒形だ。このような根本的な形状の違いも日本の花火が美しい要因に挙げられる。

 確かに日本の花火師のレベルは高いし、日本人に愛されてはいるが、花火は日本だけのものではなく、世界中で楽しまれていることも事実だ。

 最後に花火業界および市場についてみてみよう。花火業界は大きく分けて2つに分けることができる。花火大会の運営のみを手がける企業と、花火大会の開催・運営はもちろん、製造もしている企業である。

 花火を打ち上げるのに必要な花火玉をつくるのは、花火師だ。日本の花火師の技術レベルは世界的に高いと言ったが、日本の花火師は高度な技術が必要とされる大玉を中心に製造しており、大量生産されるサイズの小さい玉は中国で製造されている。中国は「世界の工場」と言われて久しいが、花火玉においても、中国は世界最大の花火玉生産国である。全世界の花火玉の7割~8割はおそらく中国で製造されているだろう。

 日常を忘れて夜空を見上げながら花火の美しさに見とれるのは、実に幸せなことだ。春の花見と夏の打ち上げ花火には共通点があり、日本人の美意識を現しているような気がしてならない。現在、打ち上げ花火は日本だけでなく世界的に楽しまれるようになってきている。花火のさらなる進化に期待したい。

(了)

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