2024年03月29日( 金 )

スルガ銀行の不正融資を検証する(前)

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 女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」など、投資用不動産関連融資で不正が相次いでいるスルガ銀行(本店:静岡県沼津市)が危機に直面している。【表1】を見ていただきたい。

<この表から見えるもの>
◆スルガ銀行は創業家が歴代頭取を世襲しているのがわかる。岡野光喜頭取は31年間トップを務めていたが、2016年6月、その座を米山明広頭取に譲り会長に就任。しかし実権はそのまま保持し続けているのが実態だ。
◆スルガ銀行は、1887年(明治20年)に岡野喜太郎が結成した共同社を前身として、1895年(明治28年)に設立された(株)根方銀行が源流である。翌年商号を(株)駿東実業銀行とし、1912年(明治45年)7月19日に(株)駿河銀行に商号変更。その間、地方銀行や信用組合を吸収合併し長らく駿河銀行の名で親しまれていた。

~岡野光喜頭取の登場~
◆1985年、岡野光喜専務が創業家出身5代目の頭取に就任すると経営方針を変更。今まで花形部門であった法人融資から個人向け融資に切り替えたのだ。【表2】を見ていただきたい。
<この表から見えるもの>
◆その方針を行内外に示すために、1990年に駿河銀行からスルガ銀行へ表記を変え、2004年10月1日に現在のスルガ銀行に商号変更している。カタカナの銀行にしたのは、先進性を標榜する岡野光喜頭取(当時)が、行内で絶対的な権力を掌握したことを意味する。
・筆者もある地方銀行の貸付係として融資を担当したことがある。取引先の担当者はプロであり、求める資料をきちんと提出してくれるし、融資ロットも大きい。しかし個人は説明しても理解を得られないことも多く、しかも住宅金融公庫との抱き合わせであり、苦労したことが思い出される。
◆個人融資に特化することは口でいうほど容易ではなかったと思われる。創業家出身でかつ大株主であったからこそ行内で異を唱えるものもなく、経営方針の変更ができたといえよう。
◆近年はカードローンに注力し、住宅ローンやアパート建築などの不動産融資の二本立てで融資を推進した結果、個人向けの貸出比率は9割を超えている。
個人取引に特化した独自のビジネスモデルで5期連続最高益を上げて地銀の優等生となった。
【表3】を見ていただきたい。

<この表から見えるもの>
◆スルガ銀行の2017年3月期決算の経常利益(一般企業の営業利益に相当)は571億円。地銀64行のなかで、横浜銀行の873億円、千葉銀行の700億円、福岡銀行の601億円についで堂々の第4位である。森信親金融庁長官が「地銀のモデル銀行」としてお墨付きを与えたのは、この好業績が背景にあったからといえよう。
◆しかし昨年から不正融資の実態が次々と明らかになってくると、18年3月期の決算は一転して悪化。経常利益は前期比▲281億円の290億円(▲49.2%)。当期利益も前期比▲224億円)の192億円(▲53.8%)と5割を超える大幅な減益となった。
・収益が大きく減少したのは、同行の営業部門において収益を追求する姿勢が強くなり過ぎた結
果、それが審査書類の改ざんなどにつながったようだ。その最大の要因として挙げられるのは、創業家が歴代頭取を120年あまりにわたって世襲。絶対的な権力を掌握してきた弊害が、ここに至って一気に噴き出したということではないだろうか。

(つづく)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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