2024年04月19日( 金 )

いま問われる突破力!~野党共闘の行方は~(中)

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野党の統一候補さえ擁立できれば勝てるというのは誤り

 小沢 現在は19年の参院選(7月28日)まで、1年を切りました。「みんなで大同団結して頑張らなければ、政治は変えられない」ということは、多くの人は理解できていると思います。また、そうできなければ「自分も、党も勝つことができない」ということも心理的にも十分感じているはずです。

 その意味では紆余曲折はありながら、少しずつ進んできた、野党の再編・結集を図るチャンスだと思っています。何とかして、国民の期待に応えるために、来年の参院選に間に合うように、事実上今年いっぱいになりますが、野党が結束できるような体制づくりに尽力したいと思っています。

 多くの方に考えを改めていただきたい注意点があります。それは、「野党の統一候補さえ擁立できれば選挙に勝てる」という考え方です。これは誤りです。「それでは選挙に勝てません」2016年の参院選では、1人区はすべて野党の統一候補でした。しかし、3分の2は自公勢力に取られました。惨敗です。このことを強く認識する必要があります。

 2007年の参院選では、1人区29議席のうち、自民党に取られたのは3つだけです。残りはすべて勝ちました。それは、民主党という1つの党になって、それに応援団として共産党が加わってくれたからです。19年の参院選は、現時点でいえば、さらに政党が細分化されています。今のママでは1人区では勝てません。また比例区はドント方式(※1)なので、自民党の票は1,800万前後で増減はないのですが、それでも勝てません。勝つためには、理想的には、大同団結して1つの党になることですが、それが叶わぬ場合、最低限オリーブの木方式(※2)をとる必要があります。その場合は、既存の政党とは別に届出政党をつくり、その政党に個人が参加するかたちで選挙に臨むことになります。

自分が望む政策を実行してくれるかどうか半信半疑です

▲政治経済学者 植草一秀 氏

 植草 私が「オールジャパン平和と共生」の市民運動で主張しているのは、国民にとって大事なのは政党より「政策」であるということです。それは、どの政党であろうと、良い政策は、良い政策であり、悪い政策は、悪い政策だからです。

 安倍政治は、「戦争をする国にする」「原発を推進する」「格差拡大を容認する」などある意味で、政策がはっきりしています。それに賛成する国民もいると思いますが、はっきり「NO」という国民も非常にたくさんいます。彼らの票の受け皿になる党、候補が必要です。

 しかし、最近の選挙では、旧民主党、民進党などが野党第1党として存在するのですが、これらの勢力のなかには、自公の考え方に近い主張をする人もたくさんいます。そこで、国民にしてみれば、その党に入れても、自分たちが望んでいる政策を実行してくれるかどうか、過去に民主党の「消費税の増税」という苦い経験もありますので、半信半疑なのです。私はそのことが野党統一候補を擁立しても、なかなか票が集まらない原因になっている、という見方をしています。

何が何でも、反自公の勢力を2つに割ろうとしています

 植草 前回(17年衆院選)、自公勢力は「民共共闘」というキャンペーンを張りました。これは「共産党と手を組む党に票を入れるのですか?」との意味をもっています。

 先ほど申し上げましたように、絶対得票率で見ると、14年の衆院選も17年の衆院選も自公は24.6%なのに対し、反自公は、14年は28%、17年は25.2%でいずれも自公を上回っています。そこで、反自公の勢力が1つにまとまってしまうと、一気に政権をひっくり返されてしまうからです。安倍政権にとっては、何が何でも、反自公の勢力を2つに割っておく必要があるのです。その具体的な戦術として一番よく使われるのが、共産党と組む人たちと共産党と組まない人たちという区分けです。

 「共産党に対する好き嫌い」はあるとは思いますが、「国民の生活が第一」の観点からいえば、安全保障の問題、原発の問題、経済政策の問題など、一般国民が望んでいることを現在の共産党の政策はかなり代弁しています。そういう意味では、自公の術策にはまらずに、共産党を含むかたちでの野党連合を考える必要があると思いますが、如何でしょうか。

(つづく)
【金木 亮憲】

※1【オリーブの木方式】
複数の政党が緩やかな連合体を形成すること。「オリーブの木」は1995年から2007年までイタリアに存在した政党連合。

※2【ドント方式】
比例代表における議席配分に関する当選者の決定方式の1つ。各党の得票数を整数1,2,3…で順に割っていき、その商の大きい順に定数になるまで議席を与えていくもの。日本では 82年の公職選挙法の一部改正の際にドント方式が採用され、翌年の参院選において初めて導入された。
 

(前)
(後)

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