【BIS論壇】国家情報局創設

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は3月14日の記事を紹介する。

 高市政権はこのほど、インテリジェンスの司令塔として首相を議長とする「国家情報会議」と、インテリジェンス実務を担当する「国家情報局」を設置する法案を閣議決定した。

 欧米5カ国のスパイ組織『Echelon(梯子の隠語)』(英国、米国、カナダ、豪州、ニュージーランドのアングロサクソン5カ国が85年以上前の1940年代に創設した)に比べても大幅に出遅れており、遅きに失した感がある。   

 国家情報会議は首相のほか官房長官、外務大臣などで構成。安全保障やテロ防止、外国のスパイ活動取り締まりなど重要情報を調査、審議するという。事務局の「国家情報局」は現在の内閣情報調査室を格上げし、国家情報局長をトップに据える。

イメージ    日本のインテリジェンス組織は大幅に出遅れており、「情報三流国」の感は免れない。英国の有名なMI6(秘密情報部)、米国のCIA(中央情報局)、ロシアの対外情報局(SVR)や悪名高いGRU、今回のイラン攻撃の裏で動いたといわれるイスラエル諜報機関モサド、さらに韓国のKCIAなどに比べても、日本の諜報機関の出遅れはいかんともしがたい現状だ。

 安全保障は軍事のみならず、国力の基盤である経済情報(ビジネスインテリジェンス)の国際的な収集、分析も必要だ。その意味で、今回の高市政権の国家情報局構想に経済情報面からの視点が欠けていることは問題だ。官庁の意見、情報のみでなく、経済情報に関しては企業、民間の意見も取り入れ、国家情報局が官民協力して慎重に機能することを期待したい。

 共産党をはじめ野党が危惧しているスパイ防止法などによる人権侵害や個人情報の保護、通信傍受などに関しては、裁判所の許可取得などの慎重な配慮が望まれる。また、国家情報局の活動に関しては第三者委員会などで審査する制度も必要と思われる。

 この機会に国家情報局などに勤務する情報担当者のインテリジェンス教育の必要性を強調したい。日本においてはとくに情報、インテリジェンス教育の出遅れが目立つ。

 米国では軍、産、学の諜報教育の強化、教育が国家ベースで急速に進みつつある。一方、EUではフランスが中心となり、2006年9月にベルサイユにビジネスインテリジェンス大学院を設置。米国の情報教育の動きに対抗しようとしている。(『知識情報戦略』石川昭、中川十郎編著/税務経理協会  60~62ページ参照)

 筆者のビジネスインテリジェンス研究の恩師である、スウェーデン・ルンド大学のDedijer博士は、50年前の1970年代に世界で初めてビジネスインテリジェンス講座を立ち上げ、経済情報教育の始祖だとみなされている。日本でも国家情報局創設を機会に中・高・大学でのAIを含む情報教育が強化されることを祈念する次第である。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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