• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年09月14日 07:00

なぜ、文科省は自発的「植民地化」に邁進するのか!(4)

国際教育総合文化研究所 所長 寺島 隆吉 氏
朝日大学経営学部 教授 寺島美紀子 氏

ノーベル賞受賞者で英語に血道をあげた人はいない

 ――経済界を中心に、「英語力こそが研究力であり、経済力、国際力だ」と喧伝されています。しかし、先生は著書で、そのいずれもが神話に過ぎないと喝破されています。この点についてもう少し詳しく解説していただけますか。

 寺島 日本人のノーベル賞受賞者の経歴を克明に調べましたが、1人として英語に血道をあげた人はいませんでした。『英語で大学が亡びるとき』で詳しく述べましたが、これまでの日本のノーベル科学賞受賞者21人でアメリカの大学で博士号をとった方はわずか3人に過ぎません。ノーベル賞を受賞するような研究をするにあたって必要なのは語学力・英語力ではなく、「科学する心」であり、母語で思考しながら疑問をつくり出し、未知のものを創造する力です。高度で創造的な思考を支えるのは母語による「国語力」と「数学力」です。

▲国際教育総合文化研究所 寺島 隆吉 所長

 母語(日本語)で深く思考できる以上のことを外国語(英語)で思考できるはずがありませんし、母語(日本語)で読み書きできる以上のことを外国語(英語)で書いたり話したりできるはずがありません。これを私は「母語力(国語力)上限の法則」と名付けています。この法則を破れる人がいたとしたら、それは「化け物」でしょう。

 ところが現在の政府は大学の授業を英語で行うことを強要し、そのような方策をとった大学だけに巨額の研究資金を出す一方で、今まで各大学に交付してきた研究費を毎年のように削る政策を続けています。さらに、防衛省の巨額の軍事費から研究費を出そうとしています。これでは自由で独創的な研究が生まれるはずがありません。ノーベル賞受賞者を含めて、多くの識者から、「今後、日本からはもうノーベル賞は出ないだろう」という声が出始めているのも当然でしょう。近年の日本人ノーベル賞連続受賞はすべて過去の遺産(60代、70代)だからです。先に述べたように、日本の科学力は、急速に失速・劣化しています。

 英語力=経済力というのも神話に過ぎません。これが本当であれば、アメリカの人口の1%だけが豊かになり、残りの99%の生活が下降の一途をたどっていることを説明できません。IT産業で有名なシリコンバレーでさえ、自家用車をねぐらにして職場に通う「ワーキングホームレス」が少なくない、という実態をAP通信が報じて大きな話題を呼びました。このような国のどこが「経済力」の強い国といえるのでしょうか。

 またインドでは英語が公用語になり、それがインド経済力の牽引車になっているように喧伝されています。しかし、インド工科大学(ITT)やインド経営大学(IIM)などの高等教育機関を出てIT産業で働いている人は総人口の約0.25%に過ぎません。インドでは英語教育はおろか、基礎教育すらも満足に終えていない児童が75%もいるのです。英語力=経済力というのは、インドの一般庶民にとっては幻想に過ぎません。

(つづく)
【聞き手・文・構成:金木 亮憲】

<プロフィール>
寺島 隆吉 (てらしま・たかよし)

国際教育総合文化研究所所長。元岐阜大学教育学部教授。1944年生まれ。東京大学教養学部教養学科を卒業。石川県公立高校の英語教諭を経て岐阜大学教養部および教育学部に奉職。岐阜大学在職中にコロンビア大学、カリフォルニア大学バークリー校などの客員研究員。すべての英語学習者をアクティブにする驚異の「寺島メソッド」考案者。英語学、英語教授法などに関する専門書は数十冊におよぶ。また美紀子氏との共訳『アメリカンドリームの終わり―富と権力を集中させる10の原理』『衝突を超えて―9.11後の世界秩序』(日本図書館協会選定図書2003年度)をはじめとして多数の翻訳書がある。

<プロフィール>
寺島 美紀子 (てらしま・みきこ)

朝日大学経営学部教授。津田塾大学学芸学部国際関係論学科卒業。東京大学客員研究員、イーロンカレッジ客員研究員(アメリカ、ノースカロライナ州)を歴任。著書として『ロックで読むアメリカ‐翻訳ロック歌詞はこのままでよいか?』(近代文芸社)『Story Of  Songの授業』、『英語学力への挑戦‐走り出したら止まらない生徒たち』、『英語授業への挑戦‐見えない学力・見える学力・人間の発達』(以上、三友社出版)『英語「直読理解」への挑戦』(あすなろ社)、ほかにノーム・チョムスキーに関する共訳書など、隆吉氏との共著が多数ある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2018年09月21日 17:38
NEW!

【10/3】福岡のソウルフード、てんぷらの「ひらお」がアクロス福岡にオープン

   福岡のてんぷら専門店「天婦羅処ひらお」が10月3日、福岡市中央区のアクロス福岡地下2階に新店舗をオープンする。店舗面積は約35坪で、席数は30席。...

2018年09月21日 17:11
NEW!

【沖縄県知事選2018】投票所での撮影は許されるのか?~公職選挙法では「想定外」

  進んで日常を「晒す」時代の秘密選挙のありかた ▲広大な面積を独占する普天間飛行場。  右側に輸送機「オスプレイ」が停まっているのがわかる ...

2018年09月21日 16:55
NEW!

筑後川に男性の変死体

   21日午後0時57分、福岡県大川市新田の新田大橋から南方約600m先の筑後川内で、通行人が男性の変死体を発見した。現在、福岡県警が遺体の身元などを調べている。

2018年09月21日 16:12
NEW!

「筑後川で人が流された」は見間違え~ネット一時騒然

   きょう(21日)昼、増水した筑後川で「人が流された」との通報が警察および消防に寄せられ、緊急車両が事故現場とされる河畔に集結。SNSでも「筑後川で誰かが流された...

2018年09月21日 16:09
NEW!

中国経済新聞に学ぶ~日本3大車メーカー 中国で生産力拡大

   トヨタ、ホンダ、日産の日本3大自動車メーカーがこのごろ、中国での増産投資計画のスタートを相次いで決定し、生産能力を拡大させ、中国市場でより多くのシェア獲得をねら...

2018年09月21日 15:39
NEW!

生涯介護のいらない人生で最期まで親の尊厳を保つ~痛みや高血圧は悪玉か善玉か?

  日中特殊鍼法研究会会長 長尾治療院院長 長尾 良一  ▲長尾 良一 氏  痛み、痺れ、だるさなどや、不安やイライラ...

安倍政治の終わりの始まり意味する自民党党首選

   NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は20日の自民党総裁選で明らかになった勢いに翳りがみえる安倍...

2018年09月21日 15:22
NEW!

アセアンのリーダー国を目指すインドネシアの強みと弱み:日本の出番!(前編)

   NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャ...

2018年09月21日 15:08

地場企業を育成したバンカー(4)~企業と街を育んだ銀行マン

  福岡銀行元専務 杉浦 博夫 氏  地域の発展には、商工業の育成が欠かせない。それを担うのが、主に地元の銀行であろう。預金という形で企業の財産を守る...

2018年09月21日 15:00

【特別企画】芝居と音楽が織りなす至福の時間と空間~1人演劇「信長」

   芝居と音楽のコラボ再び。昨年6月、大濠公園能楽堂で開催された中島淳一氏と黒木あすか氏による競演は大盛況で幕を閉じた。そして今回、新たに元衆議院議員で音楽家の新開...

pagetop