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2018年09月25日 07:00

なぜ、文科省は自発的「植民地化」に邁進するのか!(8)

国際教育総合文化研究所 所長 寺島 隆吉 氏
朝日大学経営学部 教授 寺島美紀子 氏

大学入試では英語は民間業者に「外注」

 寺島 英語教育「改革」に、もう1つ重大な動きがあります。それは、大学入試センター試験に代え、2020年度から新テスト「大学入学共通テスト」を導入する一環として、英語だけは民間業者による試験を活用することを決めたことです。その理由にあげているのは、英語では「読む・書く・聞く・話す」という「4技能」が重要だが各大学が独自に「話す力」を測定するのは無理だろうというものです。だから英語だけは「民営化」し、民間に外注しようというわけです。

 これは、虎視眈々とビジネスチャンスをうかがっていた英語教育産業にとって、まさに「棚からぼた餅」の政策でした。「英語」を商品として売りさばき巨利を得ようとする国内と国外(主としてイギリスとアメリカ)の教育産業は諸手を挙げて、この政策を歓迎しました。というよりも、このような政策を裏で着々と推進してきたのが、こうした勢力だったというべきでしょう。いま英語教育の現場は莫大な利潤追求の場になろうとしています。

 たとえば日経新聞(2018年4月26日)は「英会話学校が出前授業 大学入試改革控え需要」という見出しで、「新たな大学入試制度では英会話能力も問う。ノウハウや英語が堪能な教員が足りない高校も多いとみられ、外部サービスの利用が広がりそうだ」「英会話スクールECC(大阪市)は5月から出前授業を始める」「初年度は2,500人が3単位程度利用すると想定し、売上高は3億円を見込む」と報じています。

 この記事は、さらに「ECCは、英語圏出身者が高校などの授業を補助する外国語指導助手(ALT)の派遣事業も強化する」「現在は数千万円程度の売上高を5年で10億円程度まで引き上げたい考えだ」と述べています。ここでも「英語母語話者を教壇に立たせる」というマケレレ原則がみごとに生きています。しかもその売上高が将来は「10億円」と見込まれているのですから、商品としての「英語」「英語人」がいかに重大であるのかが、よくわかるのではないでしょうか。と同時に、現場の英語教育がますます塾化・予備校化して、「ザルみず効果」のため真の英語教育が崩壊していくようすが、今から見えるような感じがします。

母語を耕し、自分を耕し、自国を耕す英語教育を

 ――本日の問題は英語教育の領域を超えて、日本の将来の政治・経済・社会に直接的に大きな影響をおよぼします。読者の明日にアドバイスをいただけますか。

 寺島 私は長く、岐阜大学教育学部で未来の英語教師を育てる仕事をしてきました。『英語教育原論』でも詳述しましたが、英語教師には3つの仕事と3つの危険があります。3つの仕事とは、(1)「英語だけが外国語ではない」ことを教える、(2)「英語を学び続ける」夢を育てる、(3)英語の「学び方」「転移する学力」を育てることです。3つの危険とは、(1)英語による「自己の家畜化」、(2)英語による「学校の家畜化」、(3)英語による「国家の家畜化」です。

 先にも述べましたが、英語教育「改革」を重ねれば重ねるほど学力が低下しています。日本人の英語力は「聴解力」より「読解力」の点数が低くなりました。つまり、現在の若者は、以前よりももっと読めなくなり、従って書けないし、聞けないし、話せません。

 この英語教育「改革」という問題は、「教育の原理」で動いているのではなく、「経済の原理」で動いていることを読者の皆さまにもしっかり認識していただく必要があります。私たちが取るべき道は、上は大学から下は小学校まで「英語漬け」にされて、アメリカ流の経済運営、アメリカの軍事戦略に盲目的に従うことではないはずです。

 私は今後も「母語を耕し、自分を耕し、自国を耕す英語教育」を目指して、日本の将来のために、一石を投じたいと考えております。

(了)
【聞き手・文・構成:金木 亮憲】

<プロフィール>
寺島 隆吉 (てらしま・たかよし)

国際教育総合文化研究所所長。元岐阜大学教育学部教授。1944年生まれ。東京大学教養学部教養学科を卒業。石川県公立高校の英語教諭を経て岐阜大学教養部および教育学部に奉職。岐阜大学在職中にコロンビア大学、カリフォルニア大学バークリー校などの客員研究員。すべての英語学習者をアクティブにする驚異の「寺島メソッド」考案者。英語学、英語教授法などに関する専門書は数十冊におよぶ。また美紀子氏との共訳『アメリカンドリームの終わり―富と権力を集中させる10の原理』『衝突を超えて―9.11後の世界秩序』(日本図書館協会選定図書2003年度)をはじめとして多数の翻訳書がある。

<プロフィール>
寺島 美紀子 (てらしま・みきこ)

朝日大学経営学部教授。津田塾大学学芸学部国際関係論学科卒業。東京大学客員研究員、イーロンカレッジ客員研究員(アメリカ、ノースカロライナ州)を歴任。著書として『ロックで読むアメリカ‐翻訳ロック歌詞はこのままでよいか?』(近代文芸社)『Story Of  Songの授業』、『英語学力への挑戦‐走り出したら止まらない生徒たち』、『英語授業への挑戦‐見えない学力・見える学力・人間の発達』(以上、三友社出版)『英語「直読理解」への挑戦』(あすなろ社)、ほかにノーム・チョムスキーに関する共訳書など、隆吉氏との共著が多数ある。

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