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2018年09月25日 10:50

TATERU改ざん問題の本質を探る(前)

改ざん発覚で株価は暴落

 8月31日、東証一部上場の(株)TATERUが顧客の預金通帳(エビデンス)を改ざんし、銀行に融資の申請をしていたことが明らかとなった。
 TATERUはアパート建設資金の借り入れを希望する顧客の預金残高を水増しして実際より多く見せ、西京銀行の融資審査を通りやすくしていた。TATERUは改ざんの事実を認め、顧客に謝罪。TATERUは手付解除により顧客へ100万円を支払っていた。この顧客は、西京銀行への融資申請で必要な預金残高を示すインターネットバンキングの履歴データをTATERUの担当者に渡した。顧客は審査を通過したが、西京銀行への問い合わせで預金額が改ざんされた事実を知ったという。

 報道を受けてTATERUは31日夜、「誠に遺憾ながら、そのような事実がございました」と発表。1,425億円を超えていた時価総額は、週明け月曜日から大きく下落。9月4日には特別調査委員会を設置し、同様の書類の改ざんの有無の確認および調査の結果判明した事実を踏まえた再発防止に関する助言のため調査を開始することを発表したが、株価の下落は止まらず、時価総額は6日時点で3分の1にまで下がった。なお、発表によれば調査には3カ月を要するという。

全員傍観者だった一連の改ざん問題

 スルガ銀行とスマートデイズの件で明るみになったように、一般的には投資家側にも不動産投資に関するリテラシーが欠けていると思わざるを得ないケースは多い。新築アパートの価格は数千万円から1億円を超えるため、ほとんどの投資家が自己資金だけでは足りず、金融機関からの融資を必要とする。本来、「投資家(買主)」「販売会社(売主)」「銀行(金主)」の3者はお互い対等な立場である。投資家にはアパート経営に関する知識、販売会社には商品を販売する責任、預金を運用する銀行にはアパートが融資に適切かどうかを判断する知見と責任が必要とされる。

 TATERUの投資家に関しては、「改ざんを告発した」立場であり、アパート経営に関する知識を用いる必要がなかった。今回の問題では、少なくとも販売会社、銀行の2者がそれを欠いていたというのが結論だろう。販売会社であるTATERUは本来融資が実行されない投資家のエビデンスを改ざんし、身の丈に合わないアパートを販売した。西京銀行は改ざんに気付かず、融資を承認した。

改ざんする業者と目利きがない銀行

 エビデンスを改ざんする販売会社、リテラシーの低い投資家を責めてもことの本質は改善されない。これからしばらくアパートは売りにくくなるだろうが、いずれ金融機関は蛇口を緩める。その時、同じようなトラブルが起こることは想像に難くない。

 不動産業者は異口同音に「銀行は不動産に関する目利きはない」と話す。さらに、一部の業者からは「エビデンスの改ざんはどの業者もやっている(いた)」とも聞かれた。現状、金融機関が融資しなければアパートは売れないのだ。とくにスルガ銀行で問題となった高利回りを謳った低利回りのアパートのような商品に融資がつかなければ、問題はこれほど大きくなることはなかっただろう。不動産に対する目利きがない金融機関がじゃぶじゃぶと低収益のアパートに融資した挙げ句、スマートデイズは多額の負債を抱えて破産し、TATERUの問題にもつながった。いずれも、銀行から融資を引き出すために(もしくは結託して)エビデンスを改ざんしたことがポイントとなっているが、最大の問題点は何だったのか。

 もちろん、アパート業者による改ざん行為はあってはならない行為であるが、銀行も「知らなかった」では済まされないほど、その改ざんは陳腐なものだ。今後、銀行は改ざんを防ぐために預金通帳の原本確認を徹底するなどの対策が講じられるだろうが、改ざんされるのは預金残高だけではない。要は、いたちごっこであり、アパート業者に誠実さを求めるだけ無駄である。本質的に、銀行はもっと不動産を見る目を養わなければならない。

 次はTATERUとはどのような会社なのか、改めて見ていこう。

(つづく)
【永上 隼人】

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