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2018年09月28日 07:01

2030年の世界 アルビン・トフラーの『未来の衝撃』から読み解く(2)

知の巨人、アルビン・トフラー

▲アルビン・トフラー氏と筆者の浜田和幸氏
(1993年10月、ワシントンの浜田氏の自宅で)

 2030年まで、あと12年。どんな世界になっているのだろうか。経済力では中国がアメリカを抜き去るとの予測がもっぱらだ。そうなれば、軍事力や政治力の面でも中国が世界を牛耳ることになるかもしれない。北朝鮮の暴走を防ぐにも、アメリカは中国の力を借りざるを得ないのが現状だ。「人口」という武器は、市場という最終兵器を構成する。世界最大の人口大国は同じく人口の大きさで肩を並べるインドとの戦略的関係を強化しつつある。

 「中国の夢」と称する「一帯一路」計画はインド、ロシア、中央アジアはいうにおよばず、アラブ中東からヨーロッパ、アフリカをカバーする巨大な「中華経済圏」構想にほかならない。ロシアの進める「ユーラシア構想」と一体化すれば、「アメリカ第一主義」を掲げるトランプ政権とは真っ向から対峙するものになるだろう。現在進行中の米中間の関税闘争は貿易通商戦争に発展する危険性を秘めている。どちらに軍配が上がるのか。2030年の世界を占う上で、アメリカから中国に覇権が移行することになるのか、注目すべき動きは枚挙にいとまがない。

 さて、アルビン・トフラー博士といえば、世界の未来研究をリードしてきた存在で、ハイジ夫人との二人三脚で数多くのベストセラーを生み出してきた“知の巨人”である。筆者にとっては8年近くのアメリカでの研究生活のなかで出会った最も衝撃を受けた人物にほかならない。80歳を過ぎても、ロサンゼルスを本拠に地球をくまなく飛び歩く行動派であったが、2016年冥界に旅立った。

 しかし、今でも彼と交わした未来への思いの数々は忘れられない。2030年を予測するにあたっては、自称タイムトラベラーより、はるかに地に足のついた視点を提供してくれている。

 若いころからアメリカの自動車メーカーGMの工場でベルトコンベアーの流れ作業を体験したり、偵察衛星の盗聴器を自分で組み立てたり、崩壊直後のソ連に出かけたかと思えば、改革開放経済に歩み出した中国に足を踏み入れるといった具合で、知的好奇心と実証的な探求心の塊であった。日本の政界の奥の院にもアプローチをかけるといった裏技にも長けていた。会うたびに、その想像力に圧倒されたものだ。

 『フォーチュン』誌の副編集長時代から鋭い分析眼には定評があったが、同時にあらゆる現象を一刀両断に切りさばくパワーは伝説的にさえなっていた。相手を射抜くような視線の時もあるが、話題が家族のことになると途端に表情が和らぐ愛妻家でもあった。とはいえ、障がいをもって生まれた1人娘の将来には心を痛めていた。

 行く先々で多くの愛読者に囲まれ、さながらロックスターか人気映画俳優と同様の扱いを受けるような人気者でもあった。トフラー氏は冗談交じりに「ブラッド・ピッドかアンジェリーナ・ジョリーになったようだ。でも、自分のほうがピッドよりは男前だな」と語ったことがある。すると、横から、ハイジ夫人が「ピッドはあなたほど歳を取っていないこともたしかね」と茶々を入れる。

 何しろ2人の共同作業は年季が入っていた。トフラー氏がGMに籍を置いていたころ、ハイジ夫人は全米自動車労組で働いていたとのこと。そうした共通の体験を重ねながら、2人は世界の未来を分析する作業に従事するようになった。とはいえ、単なる経済的データを積み重ねるのではなく、人間の心理や病理にもメスを入れ、社会現象の背景や行く末を綿密に思考するのが、彼らの特徴的な手法であった。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

前参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

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