2024年05月06日( 月 )

貫き続ける信念がある~「天麩羅処(てんぷらどころ)ひらお」の顧客第一主義(後)

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上限1,000円!新メニュー「カンパチ漬け丼」にかける思い

 「天ぷらのひらお」アクロス天神店に足を運ぶと、他の店舗にはないポスターが貼ってある。店舗限定メニューの「カンパチ漬け丼セット」だ。
 ひらおのカンパチ漬け丼の発売は、青柳社長がたまたま立ち寄った「みなと食堂」(鹿児島県鹿屋市)でカンパチ丼に出会ったことが始まりだ。日本有数の漁獲量を誇り、しっかりと脂がのった弾力のある「かのやカンパチ」と絶妙に絡み合う秘伝のタレ。唯一無二の味に惚れ込んだ青柳社長はすぐに、アクロス店での販売を決意した。

アクロス店のイチ押しメニュー「カンパチ漬け丼」

 しかし、販売開始までの道のりは険しいものだった。みなと食堂の場合は鹿屋漁協直営で漁協から近いということもあり、常に新鮮なカンパチを仕入れることができる。鹿屋市から330キロ近く離れている福岡市の場合、鮮度を保ったまま輸送するのは容易ではなく、何度も試行錯誤を重ねることとなり、鹿屋市の協力もあってやっと今回の販売にこぎつけた。現在は、アクロス店のみの販売だが、軌道に乗れば他店舗での販売も視野に入れている。同店のオープン当日に、臨時スタッフとして参加した鹿屋市農林商工部の平川陽祐氏は、「福岡の有名な店舗でこだわりをもって鹿屋の食材を提供してもらえることを、とても嬉しく思います」と話している。

自ら課したルールを守り続ける

「ひらお」アクロス店

 青柳社長は値段にも強いこだわりがある。それは1,000円以下の商品を提供し続けることだ。カンパチ漬け丼セットは現在、味噌汁付きで800円。これに天ぷらを加えると通常は1,500円ぐらいになるが、青柳社長は「ひらおで出す商品は1,000円を上限にしている。これは最初に自分で決めたことなので守り続けたい。一度その壁を越えてしまうと、次も簡単に値上げをすることになる」と客にとっては嬉しい「こだわり」を語る。19年10月から消費税が10%に引き上げられる予定だが、意思を変えるつもりはないとのこと。

 「うまい!安い!はやい!」をモットーにしている同社は、仕入価格の高騰、増税の度に試行錯誤を行いながら、クオリティーを下げることなく顧客の要望に応えようとしてきた。味やサービスへの尽きることのないこだわりは、足を運んでくれたお客さんをとにかく満足させたいという「顧客第一主義」を追求した結果の原点回帰ともいえる。そのひと口、その一食に全力で向き合うこと、まさにそれこそがひらおの「ビジネスモデル」だ。

(了)
【麓 由哉】

(前)

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