• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年01月16日 10:20

検察の冒険「日産ゴーン事件」(25)

青沼隆郎の法律講座 第20回

有価証券報告書重要事項虚偽記載罪(金商法第197条違反)

 ゴーンら2名は2名の使用人に命じて、ゴーンが退任後に受け取る毎事業年度の約10億円の確定報酬を示す文書類を平成22年度から平成29年度までの8年間分を秘密裡に保管させ、もって、有報に記載すべき確定役員報酬について不記載の形態(不作為)による虚偽記載を実現したものとして断罪した。

 ちなみに、日産では役員報酬の決定権は3名の代表取締役(ゴーン、ケリー、西川)の合議に委任している。ただし、役員報酬も一般の債務と同じく、期首に予算に計上され取締役会の承認を受け、期中に役員としての業務執行の実在が確認され、それに応じて支給され、期末の決算において、これらが適正な支出であることが承認された結果が有報に転記される。

 上記の有報の記載事項の成立プロセスから見て、そもそも不作為による虚偽記載罪は存在しない。これは検察が有報の作成プロセスを知らないこと(または無視)に起因する。

 金融庁がゴーンらに金商法違反がないとした点と検察の見解の相違は、まさに、隠匿された確定報酬決定文書類に対する法的評価の差異である。検察はこれらの文書の法的効力は確定的に発生しており、会社はゴーンに退任後、無条件に支払債務を負うと解釈したのに対し、金融庁は役員報酬の決定自体は適法だが、それが確定した会社債務となるためには取締役会による予算における承認と決算における承認が必要と判断した差異による。

 検察と金融庁の判断のいずれが正当かは企業会計の初心者にでも判断できることである。
結局、検察は犯罪でも何でもない行為を犯罪として逮捕拘留起訴したもので、その冤罪公訴提起の責任は重大である。

 しかも、検察が役員報酬の決定が適法に執行されたとして、ゴーンらの責任を問うなら、
3名によってのみ正当な決定が成立するのであるから、西川を同罪としないことには重大な矛盾がある。恣意的な逮捕拘留起訴との非難に値する。

ゴーンの名誉回復と損害回復

 刑事裁判で無罪となってもゴーンが失った名誉と損害は回復されない。とくに、世界的名声を得た企業経営者としての地位が再び元に戻ることはない。その結果、失う財産的損害も膨大なものである。

 しかし、ゴーンは2名の司法取引協力者と弁護人2名を相手に民事賠償請求訴訟を提起し、かつ、2名の弁護人の弁護士懲戒請求をする他ない。ゴーンにとっては認容される金銭より、真実の追及によって、2度とこのような国家権力による権力不正を暴き、世界に示すことに意義がある。

 検察の不当な公訴に対する国家賠償請求も理論的には考えられるが、これを認めないのが裁判所であり、司法談合の1つの要諦でもある。本来、世界に通用しない日本の後進性そのものである。

結語

 明治大学法科大学院教授・瀬木比呂志(元裁判官)の著書『絶望の裁判所』によれば、司法試験(司法修習後に受ける2回試験と呼ばれるもの)の成績の半分以下の者は裁判官や検察官になれないという。つまり検察官はエリート法曹である。

 このエリート法曹集団である検察官僚のさらにエリート集団「特捜部」が再び歴史に残る重大冤罪を犯した。先に大阪地方検察庁特捜部は厚生省局長・村木氏を「証拠捏造」という犯罪を犯してまでも訴追する冤罪を犯したことはまだ国民の記憶に新しい。

 筆者はある事件で非常識な判決を受けた際、依頼した知人の弁護士が、実は司法修習の裁判官修習で、裁判官は先に結論を措定し、それに合った証拠を適示し、判決文を書くと習ったと語った。知人の弁護士も強い違和感を感じていたからこそ数十年も昔の修習体験を語ったものと思う。

 この「結論先にありき論法」こそ、東京大学名誉教授・川島武宜博士がすでに50年以上前に指摘した法律家がやってはならない論法であった。この論法を検察官や裁判官が使い続ける限り、日本から冤罪・誤判をなくすことはできない。

 検察は公訴手続においても重大な違法を犯し、公訴実体的内容においても重大な違法判断を犯した。これらはすべて「結論先にありき論法」の行き着いた先である。
これら検察の重大な違法行為が裁判所により適正に裁かれなければ日本は文字通り、文明後進国として世界の物笑いとなる。

(了)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年04月20日 07:03
NEW!

【スーパーマーケット・トレードショー】加速する変革への対応 SMが抱える課題を解消する商材続々と(4)

  食用昆虫など新アイテムも登場  2回目となる今回の実証実験は、19年2〜3月に行うが、前回の実証実験について、ここで振り返っておこう。  「食...

2019年04月20日 07:00
NEW!

海外でも評価される光冷暖システム 博多が誇るグレートモーニングとは(中)

  (有)チョコレートショップ 代表取締役 佐野  隆 氏 Anny Group KFT(株) 代表取締役社長 二枝 たかはる 氏 (株)力の源ホー...

2019年04月19日 17:36

「九州名物とめ手羽」からあげグランプリで最高金賞受賞

   日本で一番うまい唐揚げ屋を決めるからあげグランプリ(主催:(一社)日本唐揚協会)の授賞式が、4月17日に東京都内のホテルで行われた。  手羽先部門で...

2019年04月19日 17:04

地域住民から愛される新たな公共交通へ~AI活用型バス「のるーと」運用開始で式典

  挨拶する倉富純男・西日本鉄道(株)社  西日本鉄道(株)は19日、三菱商事(株)と共同で運行するAI活用型オンデマンドバス「のるーと」の2...

2019年04月19日 16:13

【九州国立博物館特別展】「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」~九州初!

   「千本釈迦堂」の名で親しまれる京都の大報恩寺は、鎌倉時代1220年に義空上人が開創した古刹。その本堂は、応仁の乱をはじめとする幾多の戦火を免れ、京都市内最古の建...

2019年04月19日 15:10

【JR九州列車運行状況】線路の安全確認によるダイヤの乱れが発生(19日午後2時5分現在)

   JR鹿児島本線の大牟田駅で線路の安全確認を行った影響で、19日午後2時5分現在、以下の路線で遅れが発生している。 鹿児島本線(下り線) ...

2019年04月19日 15:00

厚生労働省公表の「ブラック企業」4月12日発表 福岡労働局分

   厚生労働省は17年5月から、労働基準関係法令に違反し書類送検された企業の一覧表をホームページに掲載している。4月12日に公表された福岡労働局分は下記の通り。 ...

2019年04月19日 14:48

【パチンカー代の『釘読み』】ダイナム、熊本県に1,165万円を寄付

  左:(株)ダイナム 保坂 明取締役 右:熊本県総務部 山本 倫彦部長  全国でパチンコホール「ダイナム」を400店舗以上展開している(...

2019年04月19日 12:39

海外でも評価される光冷暖システム 博多が誇るグレートモーニングとは(前)

  (有)チョコレートショップ 代表取締役 佐野  隆 氏 Anny Group KFT(株) 代表取締役社長 二枝 たかはる 氏 (株)力の源ホー...

2019年04月19日 11:46

「チャレンジャーではいられなかった」選挙を終え、「街づくり」議論へ意欲~調崇史市議

   自民党福岡市議団に所属し、今回の福岡市議会議員選挙では城南区で3選を果たした調崇史市議。選挙を終えた感想を求めたところ、「1度目は民主党で、2度目...

pagetop