国内フリマアプリの激戦を制した雄がアメリカの悪戦苦闘から退かない理由（1）

（株）メルカリ

2013年2月の設立から、18年6月に東証マザーズ上場。早い段階からアメリカを中心に積極的な海外展開を行う（株）メルカリ。日本国内のフリマアプリの激しい競争を勝ち抜き、圧倒的シェアを誇るに至る一方で、アメリカでの苦戦が続いている。それでも挑戦を続ける理由とは何か―。

5年で流通額1兆円突破

　個人の間で不用品を売り買いできるCtoCのフリマアプリ「メルカリ」。ファッションを中心に、ゲームソフト、家電製品、コスメ、日用品、家具などあらゆるものが出品され落札される巨大なフリーマーケットだ。

　ファッションでは最も売買されているブランドはファストファッションの「ユニクロ」で、気軽に利用されている。不用品に限らず、野菜、果物、酒などの食品や、ハンドメイドなどここでしか買えないアイテムや、トイレットペーパーの芯、蛇の抜け殻といった変わったものも出品されている。

　現金が額面以上の価格で出品され、クレジットカードのキャッシング限度額を使い切った人が、携帯電話の決済やカードのショッピング枠で現金を購入しているとみられ、法定利率の上限を超える利息を受け取ったとして、出品者が逮捕されるという事件が起こり、世間の注目を集めた。最近でも、夏休みの宿題を想定した読書感想文や自由研究の工作などが出品されることが問題視されるなど何かと話題も多い。

　メルカリは、2013年7月にアプリがリリースされ、現在、日本国内ではアプリが7,500万ダウンロードされ、利用者数は月間1,100万人を超えるフリマアプリの最大手だ。商品撮影はスマートフォン、手続きは数分で完了、売り買いできる手軽さや、売れる楽しさ、掘り出し物を探して買う楽しさを体験できることから若い世代を中心に利用されている。

　商品代金を仲介して預かり、双方の取引評価完了後に売上金を移す決済システムにより、支払いトラブルを回避、宅配業者と連携し、匿名配送を可能にすることで個人情報を保護する。こうした利用者にとって使い勝手の良いサービスを提供していることも、支持される理由になっている。

　サービス開始から約1年後の14年7月10日に初めて1日の流通額が1億円を突破、それから約2年半後の17年2月1日には1日の流通額が10億円を突破するなど、短期間で10倍も拡大した。その後も勢いは止まらず、18年11月14日時点で累計流通額が1兆円を突破した。ネットの世界ではこうした急成長は珍しくないが、成長のスピード感はやはり目を見張るものがある。

激戦を生き残り君臨

　フリマアプリの始まりは12年に遡る。7月にレディースファッションに絞り込んだ「Fril（フリル）」がサービスを開始、10月には、ハンドメイド作品を取り扱う「minne（ミンネ）」がスタートした。さらに、12月に、ガラケーで若い女性向けのファッションを中心としたフリマサービスを展開していた「ショッピーズ」がスマホ向けのアプリを提供した。

　12年はフリマアプリの黎明期であったが、翌7月にはメルカリがより手軽に便利に利用できるアプリを武器に参入してきた。出品される商品に制限を設けず幅広い商品が流通することが可能になった。

　9月になると、ファッション特化型の写真共有アプリにショッピング機能を付加するかたちでリニューアルしフリマ機能を加えた「STULIO（ステューリオ）」、12月には大手SNSサービスのラインの「LINE MALL（ラインモール）」が登場した。

　14年2月にファッションに特化した「kiteco（キテコ）」、11月に楽天が手数料無料の「ラクマ」をスタート、15年12月にはファッション通販大手の「ZOZOTOWN」の（株）スタートトゥデイも参入し、さらに競争が激化した。

　インターネット上のサービスでは寡占化の速度が異様に速く、通常、上位数社しか生き残ることができない。そのため、各社は認知度を上げるためテレビCMを投入するなどし、激しく競い合い、生き残りを目指した。

　そして、この戦いにおける優勝劣敗が明らかになり、ラインやスタートトゥデイを始め多くの企業が撤退し、現在はメリカリがガリバーとして君臨し、フリルを吸収したラクマが後を追い、ミンネはハンドメイドという限定された領域で支持を集めるという構図になっている。

　ネットの世界では新しいマーケットができると次々にプレイヤーが参入し、競争のなかで淘汰され、短期間で勝敗が決着する。メルカリは後発組だったが、幅広い商品を流通させ、使い勝手の良さも評価され、トップの座に上り詰め、さらに勢力を拡大しようとしている。

（つづく）
【西川　立一】