2024年04月20日( 土 )

国内フリマアプリの激戦を制した雄がアメリカの悪戦苦闘から退かない理由(2)

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(株)メルカリ

高い潜在ニーズ

 急成長してきたフリマアプリマーケットに対して、ライバルとなるのが個人取引のネットオークション。市場規模は3,458億円、「ヤフーオークション(ヤオフク)」がトップを独走している。しかし、利用者が減少傾向で、明らかにフリマアプリの影響を受けている。

 メルカリと比較してみると、メルカリは女性の利用者が多く、10代、20代、30代が中心なのに対し、ヤオフクは男性の利用者が多く中高年が目立つ。しかし、メリカリでも、50代、60代のレコード、美術品、ゴルフなどのスポーツ用品、骨董品など趣味のアイテムの取引が目立ち増加傾向にあり、利用層も広がっており、中高年層でも、ヤフオクを侵食しようとしている。

 ニッセイ基礎研究所がメルカリからデータの提供を受けて、「みんなのかくれ資産調査委員会」による全国の10~60代の男女2,536名を対象とした、日本の一般家庭に眠る不要品の総量に関する調査によると、日本のかくれ資産総額(自宅内の不要品)の想定価値は、推計37兆177万円に上り1世帯あたり約70万円。

 金融資産や不動産に続く第3の資産として、今後さらなる活用が見込まれる潜在的資産といえ、また、若者を中心に、モノの「所有」から「利用」へという価値観も強まっている。フリマアプリ利用者の半数以上が売ることを前提に新品を購入し、新品であることを重視している人は、利用者と非利用者合わせて3割以下という調査結果もある。

 こうしたことからフリマアプリによる取引の潜在ニーズは高く、人々の意識変化もあり、フリマアプリの利用は今後も増大することは確実だ。実際、16年のフリマアプリの市場は3,052億円(経産省調べ)だったが、17年は約6割増の4,835億円と大幅に増え、3,569億円のネットオークション市場を追い抜いた。今後も成長が見込まれ、トップのメルカリのシェアも拡大し、寡占化もより一層進み、業界では1兆円市場になる日もそう遠くないという見方もある。

創業から海外展開を視野

代表取締役会長兼CEO 山田 進太郎 氏

 まだまだ、急拡大するフリマアプリマーケット市場だが、国内だけではなくメルカリは創業当初から世界を見据えていた。メルカリの創業者で山田進太郎現会長兼CEOの「米国は世界の縮図。米国事業を制するものが世界を制する」という考えのもと、使い勝手の良いサービスであればどこでも通用すると、国内のビジネススキームをそのまま持ち込むことにした。日本でのフリマアプリサービスを展開したわずか半年後の14年1月、米国法人を設立、9月には米国版アプリの提供を開始した。17年、英国にも進出した。

 米国では3年でアプリが3,000万ダウンロードされたが、5年目となる現在、山田会長の描いた構図どおりにはいっていない。メルカリが行った調査で全米のスマートフォンユーザーにおけるサービスの認知度も5~7%と低く、流通総額は10分の1以下いう水準にとどまっている。

 日本では瞬く間に利用者を獲得し、フリマアプリ市場を席巻し、トップの座に上り詰めたが、何が普及を阻み利用が伸び悩んでいるのか。米国では週末ごとにあちらこちらで頻繁にガレージセールが開かれ、引っ越しの際のムービングセールも広く行われ、地域で不用品が取引されており、生活に深く浸透している。

 ネットでも、全米各地でローカル情報を交換するクレイグスリストなどの掲示板を通じた中古品の売買が頻繁に行われ、Facebookにもフリマ機能があるが、対面での取引が大半で、この長年の慣習を打ち破れていない。売るためには商品を出荷しなければならないが、米国では日本のコンビニなど身近な受付拠点が少ないことも利用が伸びない理由になっている。

(つづく)
【西川 立一】

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