2024年03月29日( 金 )

国内フリマアプリの激戦を制した雄がアメリカの悪戦苦闘から退かない理由(3)

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(株)メルカリ

人材面の強化

 こうした現状を打破するためにまず取り組んだのが人材強化。17年6月に、ジョン・ラーゲリンを経営陣に迎え入れ米国法人のCEOに据えた。同氏は、Googleでアンドロイドグローバルパートナーシップディレクターなどを務め、14年にFacebookに転じ、東京大学大学院経済学研究科で論文研究をした経歴ももっている。要職を歴任した大物であるラーゲリンをスカウトしたことは、国内外のIT関係者を驚かせ、同氏が入社したことで、Googleなどから多くの有能な人たちも流入した。

 これを契機に、アプリの全面的な刷新を始め、ブランディングや広告といったマーケティングにおいても新たな戦略を展開、オフィスの移転など、大幅な見直しを進めてきた。

 アプリのアイコンやサービスロゴを、日本と同様のポップな赤い箱のデザインから、「MERCARI」というサービス名や「M」の文字を強調し、テーマカラーも赤から紫がかったブルーに変え、クールなものに変更した。

 米国ではアプリを使ってモノを購入することは当たり前になっているが、売ることは一般的になっていない。そこで、売るアプリという視点から、アプリの使い勝手から宣伝方法まですべて見直した。

 広告でも攻勢に出た。米国で人気スポーツのプロバスケットNBAのホームスタジアムの前や高速道路沿いなどに屋外看板広告を設置、車のなかでラジオを聴くことが多いことから、各局の人気パーソナリティが読み上げるCMも流して、認知度を高めようとしている。

 また、課題だった集配も、従来から荷物を扱っているUSPS(米国郵便公社)に加え、全米のドラッグストアチェーンに窓口をもつ米フェデックスと提携、大重量や急ぎの配送などにも対応できるようになり、改善が進んでいる。

 米国本社をサンフランシスコ市内から、シリコンバレーの中心に位置するパロアルト市に移転。オフィスの広さは約2倍となり、200人まで収容できる規模になった。米国事業で着々と進む態勢強化をさらに加速し、さらなる投資を進めるため、メルカリは18年6月、東証マザーズ市場に上場をはたした。メルカリ株は、5,000円の初値をつけ、公開価格の3,000円を大きく上回った。最終的には5,300円で取引を終え、時価総額は7,172億円となった。

 今回の上場でメルカリは約600億円を調達し、重点投資分野の1つである海外事業に約100億円投資する予定だ。

(つづく)
【西川 立一】

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