2024年04月27日( 土 )

国内フリマアプリの激戦を制した雄がアメリカの悪戦苦闘から退かない理由(4)

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(株)メルカリ

米国進出・成功の意義

 株式上場時には、山田会長は「上場を通じて、メルカリが成し遂げたいことはテックカンパニーとして世界を目指すことだ」と語った。ラーゲリン氏も「米国という多様性のある巨大マーケットで、サービスレベルをシリコンバレー級に引き上げられれば、米国以外の国でも世界に挑戦できる」と考えており、さらなる事業拡大に向けて、新たな施策を展開しようとしている。

 メルカリは、「人」「テクノロジー」「海外」、この3つに投資することで成長を担保しようとしている。人に関しては株式上場を機に、さらなる成長エンジンとして、国内外を問わず、優秀な人材を採用していこうとしている。

 山田会長は「テクノロジーで差別化できない企業は生き残れない」という。マシンラーニングによる出品率、売却率の向上、カスタマーサポートの自動化、自動翻訳による異なる言語間での取引推進を推進し、AI、ブロックチェーン、IoT、量子コンピューターなどに、積極的かつ永続的に投資を続けていく。

 インターネットオークション市場は、海外市場は国内市場の10倍以上で、海外への視線も熱い。「多様な人種、文化をもつ人たちがいる米国で成功することは、プロダクトがユニバーサル化されたことを意味する」と山田会長は考えている。そして、米国での成功を足がかりに、より簡単に、より便利に、もっと楽しく世界中で使ってもらえる「世界的なマーケットプレイス」を目指そうとしている。

 楽天は10年5月にBuy.comを買収して「Rakuten.com」として事業を展開、米国進出をはたした。14年9月には、10億ドルという巨費を投じて、米国のEbatesを傘下に収めた。Ebatesは、会員がEbatesのサイトを経由し数千の外部ECサイトで買物すると、キャッシュバックやポイント還元などが受けられるユニークなECだ。

 「Rakuten.com」とEbatesと連携させ、米国市場での事業拡大を狙ったものだったが、米国事業は巨額の減損を強いられ苦戦を強いられている
 国内最大のメッセージアプリ「LINE」も、「WhatsApp」や「FacebookMessenger」の米国勢に押され、ひと頃の勢いはすっかり影を潜めて、台湾、インドネシアといったアジア市場に軸足を移している。

 米国市場は世界をリードする魅力的なマーケットだが、競争も厳しく勝ち抜くのは至難の業で、楽天、ラインも成果を出せていない。一方で、Amazon、Facebookといった米国勢は、日本に進出し瞬く間に市場を席捲し大きな成功を収めている。

 日本では技術やサービスが、世界標準とは異なるかたちで国内市場に最適化するように独自の発展、進化を遂げている「ガラパゴス化」が海外普及への大きな壁となった。携帯電話サービスはその典型で、米国発のスマートフォンの登場で一気に駆逐され、今では風前の灯火である。先行した技術、サービスをもちながら、ある程度の市場規模のある国内で安住して、世界へ目が向けられるのが遅れた。

 これに対し、メルカリは、早くから世界を意識し、国内事業が定まらない段階で、米国に進出するなど、果敢にチャレンジしている。料理レシピサービスのクックパッドも国内のトップの座に安住することなく、グローバル化を推し進めている。14年から本格的に海外展開を進め、今では欧米、南米、中東、アジアに広がり、実に21言語67カ国でサービスを展開している。

 事業展開に際して、重視しているのが現地の事情に対応したローカリゼーション。ビジネスフォームは基本的に一緒だが、地域の食習慣、味覚に対応することで、それぞれのエリアで受け入れられるサービスを提供する。メルカリもローカリゼーションを進めながら、米国市場を開拓しようとしている。

 黒船が来航し日本は開国を強いられることになったが、AmazonやFacebookは現代の黒船ではなく、提供するサービスの利便性や有用性で受け入れられた。米国でメルカリが利用を伸ばすためには、ひとえにサービスのコンテンツがユーザーにとって使いやすく役に立つかに尽きる。そして、ある程度ローカルライズすることも必要だ。ネットの世界では答えが出るのも早い。抜本的改革が功を奏すか、早晩、その答えが出るだろう。

(了)
【西川 立一】

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