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2019年02月19日 15:42

伊藤産業がアンパンマンバッグを国内でつくる理由~在庫を抱えず職人を大切にした安定経営

9割以上の商品を国内工場で製造

 テレビ番組がスタートしてから30年以上になる大人気キャラクター「アンパンマン」。ボイス情報(株)のライセンスキャラクター消費者調査2018によると、小学校に入るまでの子ども10人のうち、およそ6人がアンパンマングッズをもっているという。驚くほどの人気ぶりだ。

 アンパンマンバッグを製造する伊藤産業(株)は、90%以上を国内の自社工場でつくっている。多くのメーカーが海外でモノをつくる時代に、なぜ国内製造にこだわるのか。

余分な在庫をもたず、多くの種類を少しずつつくる

 自社工場でつくるメリットは、どれくらいの数をつくるか自由に決めることができることだ。たくさんの種類があっても、注文に合わせて少しずつつくることができるので、余分な在庫をもたなくてよい。

 一方、海外の委託工場でつくる場合、規定の製造数が決まっているのが普通だ。たくさんの種類を海外でつくると、たくさん輸入して在庫をかかえることになる。国内製造することで、安心して使える品質のいい商品づくりに集中できるのだ。

ほしい数だけ注文、商品をすぐ届ける

アンパンマンこどもミュージアムの店舗

 国内でつくると、1カ月以内という短い時間でお客さんに商品を届けることができる。しかし、海外の工場でつくると、そうはいかない。また、注文を受ける時もそれほど注文数にこだわらなくて済む。

 伊藤産業は百貨店や小売店に販売する問屋に定番品を卸し、アンパンマンこどもミュージアム店舗でミュージアム限定品を売っている。問屋もほしい数だけ注文できるので、たくさん商品を仕入れずに販売できるのが大きなメリットだ。また問屋に余分な在庫がないので、返品もほとんどなく、バランス良く在庫を管理できている。

職人の高齢化

 20年ほど前、職人が高齢になり、製造場所を海外に移すことも考えたという。しかし、そうすると職人の仕事を海外に移すことになってしまう。同社は国内で職人につくってもらう方が日本社会や経済のためになると考え、今後も国内製造をすることに決めた。今もこの道を選んでよかったと感じているという。30~40年勤務する従業員も多く、中には80歳まで仕事をする従業員もいる。自分のペースで仕事できることが、腕のいい職人が同社で長く働きつづける秘訣ではないだろうか。

 海外から国内の自社工場に製造を戻す動きがモノづくり業界にはある。しかし、職人が高齢になって人数も減っているので、一度海外に移したモノづくりを日本に戻すのは難しいことも多い。また、人手や人件費がかかることが理由で日本の技術が中国など海外に移ってしまった事例もたくさんある。

子どもが泣き止むアンパンマン、ロングセラー商品をつくる

アンパンマンバッグや小物入れ

 30年ほど前、テレビでアンパンマンを見て子どもが泣きやむのを見て、時代が変わっても変わらないキャラクターとしての魅力があると見込んだことが、アンパンマンを選んだきっかけだったと代表取締役社長・伊藤晴夫氏はいう。

 同社では流行を追いかけずに長い目で見ることを大切にして、バランス良くロングセラーグッズをつくっている。

 従業員と信頼できる関係を築くことで、スキルやノウハウをもつ職人が長く在籍する同社。同社のこうした取り組みが、時代を超えても支持される商品をつくり続けられる秘訣だと思われる。

<プロフィール>
石井 ゆかり

みどりの宇宙(株) 経営コンサルタント。筑波大学卒業。京都大学農学研究科修士課程修了。ヘルスケア関連メーカーに勤務後、人の健康と企業の発展に貢献したいという想いから、経営コンサルタントとして中小企業の経営支援を行っている

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