2024年04月19日( 金 )

ドワンゴ業績悪化、ITクリエーターは群雄割拠の時代へ

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 出版・IT大手のカドカワ(株)が13日、川上量生氏を代表取締役から取締役に降格させる人事を行った。川上氏は、ニコニコ動画で知られる(株)ドワンゴ創業者の1人で、昨冬リリースしたばかりの位置情報ゲームが伸びず、カドカワ傘下のドワンゴの業績が悪化。カドカワの2019年3月期の連結業績予想が下方修正されたことで、引責辞任したとみられている。

 ドワンゴの「niconico」(通称:ニコニコ動画)をはじめ、インターネット上の動画コンテンツを取り巻く環境はめまぐるしく変化している。ドワンゴの収益の柱は、ニコニコプレミアム会員(月額有料会員)で、2016年3月末の256万人をピークに、最新のデータ(2018年12月末)では、188万人にまで減少している。一方で、企業や個人が動画を配信できるサービスの「ニコニコチャンネル」の有料会員は右肩上がりで、サービス開始から5年間で、約10倍に成長している。お金を払って映像を見る人は減っても、映像をつくって配信したい人は確実に増えているということだ。

 また、若者の間でブレイクしている「TikTok(ティックトック)」は2017年夏にサービスが始まって以来、瞬く間に世界中でトップクラスの動画共有サービスにのし上がった。誰でも簡単に、短い動画をつくることができることがとくに若い世代に受け入れられているとみられる。

 「YouTube」の動画が、家庭のリビングにある一番大きなテレビで見られる時代となった今、インターネット動画を視聴するのは当たり前、撮影・製作することも当たり前となってきた。スマホで気軽に動画を撮影し、気軽にSNSや動画共有サービスにアップロードするのは、もはや日常。インターネット動画においては、自分1人で見るだけではもの足りず、いかに多くの人に長く見てもらえるかが、重要視される世界となってきた。

 映像のクリエーターは、これからますます「たくさんの人に見てもらえること」に主眼を置かなければならないだろう。数多く再生させることができるクリエーターこそが生き残れるのではないか。高画質のカメラ機材で、芸術作品のような「自己満足」な動画をつくっているだけでは、誰にも見てもらえない。インターネット動画の世界では、どれだけ「共感」され、どれだけ「拡散」されるかが、再生回数増加のカギを握る。

 若者のテレビ離れが進むなか、若い世代の人たちは、テレビディレクターやカメラマンといったテレビ番組を製作する職業への関心度が薄くなっているという話を聞いたことがある。一方で、小学生の「将来なりたい職業」ランキングでは、ユーチューバーが上位に食い込む。法やコンプライアンスに縛られ、一定レベルのクオリティを求められる放送局用の番組をつくるより、「好き勝手」にできる動画共有サイト向けの動画づくりの方に若者の関心は向いているというわけだ。

 「視聴者にどう訴えかけたら、視聴率を維持できるか」に力を注いで映像づくりを行ってきたテレビマンたちは今まさに、インターネット動画の世界でも大いに力を発揮し、新たな「飯のタネ」を創造できるのではないだろうか。アニメ、ゲーム、動画など、分野は違えども、ITクリエーターたちの群雄割拠はさらに熱を帯びてきている。

【杉本 尚丈】

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