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「天神ビッグバン」のなかで 取り残される新天町!?
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2019年02月28日 16:40

「天神ビッグバン」のなかで 取り残される新天町!?

福岡市が進める再開発プロジェクト「天神ビッグバン」では、2024年までの建替え期限が近づくにつれて、各所で再開発の動きが慌ただしくなってきた。しかしその一方で、エリア内にある商店街「新天町」では、そうした動きはまったく見られない。もしや再開発の変化の波に、取り残されてはいないだろうか―。

第1号物件着工、新たな動き続々

営業終了が発表された「イムズ」

 2019年1月29日、福岡地所(株)は大型複合ビル「(仮称)天神ビジネスセンター」の起工式を執り行い、新築工事に着手した。

 同物件は福岡市の再開発プロジェクト「天神ビッグバン」の第1号物件として位置づけられており、17年1月に公表した当初計画では地上16階建て、高さ約76mを想定していた。だが、17年9月に市の国家戦略特区をめぐって、国が航空法に基づく高さ制限を緩和したことを受け、建物を地上19階建て、高さ約89mまで高層化。これにともなうデザイン・構造の設計変更の見直しにより、着工時期や竣工予定が後ろ倒しとなっていた。延床面積は6万1,000m2。天神地区で最大級のオフィスフロアのほか、低層階と地下には商業テナントも入る。総事業費は約500億円で、竣工予定は21年9月。

 遡ること1月9日には、三菱地所(株)が商業施設「イムズ」の営業を21年度内に終了したうえで、再開発に着手する旨を発表した。事業スケジュールは未定だが、22年度内の新築着工を目標としている。

 「イムズ」は1989年4月に開業した地上14階・地下4階建の商業ビルで、ビルの正式名称は「天神MMビル」。三菱地所としては初の都心型商業施設として、「情報文化の発信基地」をコンセプトに、天神の“顔”の1つとしての存在感を発揮してきた。だが、築30年が経過しようとし、「天神ビッグバン」の進行にともなって周辺エリアの将来像が変化していくなかで、新時代の天神に求められるニーズに応えるべく、再開発により新たな価値を創造していくとしている。新たなビルの計画内容については不明だが、福岡市を含めた関係者との協議の下、都市機能の強化・魅力づくりに寄与することを念頭に検討を進めていき、「天神ビッグバン」に大きく貢献するとともに、福岡市のまちづくりの一翼を担っていく考えだ。

 エリア内にあるオフィスビル「ヒューリック福岡ビル」も、高級ホテルを核とした大型複合商業ビルへと再開発される。

 同ビルは、不動産大手のヒューリック(株)が所有する地上9階・地下2階建の複合ビルで、竣工は1960年1月とすでに築60年近くが経っている。明治通り沿いの福岡パルコ新館や新天町商店街と隣接する場所にあり、敷地面積は約1,450m2。入居テナントはオフィス中心だが、1階部分にはドラッグストアも入居している。新たなビルの概要は不明だが、天神ビッグバンによる高さ制限や容積率の緩和などを活用するほか、ヒューリックが展開する高級ホテル「THE GATE HOTEL」が入る見込み。また、立地している「天神2丁目南ブロック」では地区計画で新たな地下通路が設置される予定で、新ビルもこの地下通路につながるとみられる。

 15年2月に打ち出されてから早4年が経過した「天神ビッグバン」。エリア内ではほかに、「天神コア」「福岡ビル」「天神ビブレ」の3棟が建替えによる一体開発が行われる予定のほか、大名小跡地再開発では高級ホテル「ザ・リッツ・カールトン」が入る高層ビルなどが計画されるなど、24年までの期限が次第に近づくにつれて、にわかに動向が活発化してきた。

 しかし一方で、エリア内にありながら、これといった動きも見られず、静観の構えを崩さない場所もある。それが「新天町商店街」だ。

独自の存在感を発揮する繁華街中心部の商店街

 「新天町商店街」(以下、新天町)は、福岡市中央区天神2丁目にあるアーケード付き商店街で、南北2つの通り(北通りと南通り)と、地下街「ファーボ」(Favo)とで構成。商店街全体の敷地面積は約8,300m2で、東部、中央部、西部の3棟の建物の合計延床面積は約2万6,000m2。

 新天町の始まりは、終戦直後のころにまで遡る。当時の天神町周辺は、福岡大空襲で罹災して焼け野原状態となっており、人々の間には暮らしへの不安ばかりが蔓延していた。そうしたなかで、「町に活気と笑顔を取り戻そう」と立ち上がったのが、博多商人たちだった。そのきっかけとなったのは、1945年の終戦直後に出された、西日本新聞社の「郷土再建活動案」。その案のなかの1つに商店街建設があり、その実現に向けて、当時のおたふくわた(株)(現・ハニーファイバー(株))社長の原田平五郎氏に話がもちかけられた。だが巷では闇市が横行し、1本の材木さえも入手が困難な時代。それでも「値段がべらぼうに高い闇市の天下では、人々のためにならない」と、原田氏を中心に博多部の老舗の商店主たちが結集し、45年10月には「商店街創立準備委員会」が立ち上がった。

 その後、入居店舗の募集には600店が殺到。そのなかから資金状況や業種のバランスなどが考慮され、最終的には78店舗が選び出された。起工式は同年12月22日、落成創業式は翌46年10月15日。完成した商店街の姿は、木造瓦葺きの2階建てが東西に4列、12棟の町並みだった。これが現在の新天町の始まりである。ちなみに「新天町」という名前は、「新天神町」の名称を親しみやすく呼びやすく省略して命名されたものだ。

 創業から4年後の50年には、新天町は全店舗一斉の大改装に踏み切った。もともと終戦直後の物資不足のなかで強行された建設だっただけに、そこかしこにアラが見え始めていたことに加え、同年6月に勃発した朝鮮戦争の特需による好況も後押しした。そうして行われた大改装は、西日本初の延べ288mという大規模なアーケードを備えたものだった。

 その後、68年には全体の不燃化(鉄筋コンクリート造)が完了。72年に新天町ファーボも開業した。そして81年に「新天町大時計塔(メルヘンチャイム)」が完成。同時計塔は完成以来、新天町のシンボルとして親しまれている。その後も「新天町プラザ」や、ドーム型アーケードの「新天町サンドーム」などが次々と完成。現在に至っている。

回遊性の高い構造と調和を保つための組織形態

 現在の新天町は、ファッションや飲食店、雑貨、アクセサリー、薬局、書店など約100店舗が軒を連ね、昔からある店と新しい店とがバランス良く融合。デパートやファッションビルに囲まれた天神のど真ん中という立地も相まって、日ごろから多くの人々が行き交う、非常に活気にあふれた商店街となっている。

 全国的にも衰退・疲弊している商店街が多いなかで、なぜ新天町はこれほどまでに賑わいを維持できているのか。そこには、福岡市の都心部に位置するという立地的な優位性だけでなく、いくつかの仕掛けがある。

 まずは商店街の構造上の特性だ。全国的に衰退が進んでいる商店街の多くは、通路型のタイプのものとなっている。歴史的な経緯で見ると、古くからの門前町であったり、街道沿いであったりと、いわば人々の生活動線上に商店が集まることで、自然発生的に形成されてきたものだ。近代でも、駅やバスターミナルなどの交通拠点を起点にして形成された通路型のタイプの商店街が数多くあるが、こうした商店街では、モータリゼーションの進行や交通拠点の移転などによって通路としての意味合いが薄くなってくると、自然と人々の足が遠のいてしまう恐れがある。

 一方で、戦後になって人為的に形成されてきた新天町では、当初から道路の動線設計が回遊性に主眼を置いたものになっている。メインとなる通路に狭い通路を組み合わせることで、買い物客が商店街内を歩き回れるようなつくりだ。また、繁華街という立地を考え、商店街組合の私有地にもかかわらず通路を24時間開放するほか、イベントなども開催可能なメルヘンチャイムのある広場、冷暖房の入ったアーケードなど、天神というそもそも人が集まりやすい立地に加えて、回遊性の高いつくりにすることで、賑わいを創出する仕組みができている。

 次に挙げられるのが、商店街の運営形態だ。新天町では、商店街全体の運営を新天町商店街商業協同組合(以下、組合)、(株)新天町商店街公社、(株)新天町エステートの3つの組織が連携して行っている。担当は、組合が商店街の共同宣伝や組合員の事業推進、新天町商店街公社が商店街の土地建物の賃貸借と管理運営、新天町エステートが商店街の不動産の賃貸・仲介・売買および維持管理だ。こうした体制により、道路計画や業種構成と配置、また宣伝・研修などの共同事業の運営の組織化ができている。

 なかでも、ほかの商店街とは大きく異なる強みとなっているのが、商店街の土地・建物の所有権の部分だ。通常の商店街は各店舗それぞれに所有者が異なり、店舗の業種構成や広告宣伝、意見調整などの部分で、商店街全体の歩調を合わせることが難しい。そのため、たとえ売上不振で空き店舗が出ても、そのまま放置されるケースが多く、やがてその“空き”が商店街全域に広がってしまうリスクを抱えている。

 一方で新天町の場合は、土地・建物は前出した3つの商店街組織が所有しており、そこから入居希望者に貸し出すという方式。そのため、新天町では既存店の閉店などが発生した段階で、新天町エステートが積極的に新規店舗を誘致することで、空き店舗を出さないような仕組みができている。また、商店街としての魅力を高めるような店舗を誘致する一方で、風俗店などをシャットアウトするなど、組合独自で店舗の選定基準を設定。商店街全体としての調和を保っている。

 また、広告宣伝の部分でも、新天町に入居する際の条件として組合に対する一定額の宣伝広告費の支払いが義務付けられており、これを原資として組合が積極的な宣伝広告やイベントの開催を一手に引き受けている。ほかに、商店主同士の結束を高めるのにも組合が大きな役割をはたすことで、強固な団結の下に商店街全体の調和と格調が高められている。

 このような商店街構造や組織形態の仕掛けにより、新天町は一定水準以上に調和された空間と、それにともなう賑わいの創出に成功しているといえよう。

老朽化進む低層の建物、再開発は必要ないのか?

都心部でありながら低層の建物となっている新天町

 そのように、現状は賑わっている新天町ではあるが、直面している課題がないわけではない。たとえば建物の問題だ。

 新天町の各テナントが入居する建物はいずれも低層のものが多く、近隣に高層の建物が立ち並ぶ都心部の一角としては異質だ。空間活用の観点から見ると、非常に無駄が多いと言わざるを得ない。また、建物施設自体も決して新しいものとはいえず、年々老朽化が進んでいる様子も見られる。せっかく高さ制限や容積率が緩和される天神ビッグバンのエリア内にあるのだから、大々的な再開発を行うのであればまたとない好機だと思われるのだが、前述したように、そうした動きはまったく見られない。これでは、都心の一等地というせっかくの好立地も“宝の持ち腐れ”になってしまっている。

 さらに、今後は天神ビッグバンの進行とともに、近隣には今以上にさらに大型・高層化した商業施設などが誕生してくることが想定される。新天町のすぐ北側に隣接するヒューリック福岡ビルも建替えにより新たな商業施設に生まれ変わる予定だが、周辺にこうした新たな商業施設が次々とできてくれば、客足の確保のために、いかにして対抗していくのか。しかも、“敵”は周辺の実店舗だけではない。インターネットやスマートフォンなどのITインフラの普及にともない、今やネット通販なども新興勢力として台頭。商店にとっての非常に強力なライバルとなって牙を剥いている。こうしたネット通販に対する対策の面でも、新天町はそれほど先行しているようには見受けられない。新たな商業施設やネット通販などにはない商店街ならではの強みを打ち出し、差別化を図っていくことも、喫緊の課題だといえよう。

 今は福岡市自体の人口も増加傾向にあることに加え、インバウンド客なども含めて都心部である天神には多くの人が集まる状況にはなっているが、これもいつまでも続くわけではない。現状ではある程度の賑わいを確保できている新天町であっても、このまま安穏としていては将来的に衰退する局面に突入していくことも危惧される。今後、新天町が福岡市中心部の商店街として、いかにして存在感を発揮し、生き残りを図っていくのか。あるいは、天神ビッグバン期限内に、駆け込み的に再開発計画が打ち出されるのか―。静観の構えを崩さない新天町の今後の動向が注目される。

【坂田 憲治】

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