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2019年04月15日 07:04

原発と住民の関係も変化 再エネ小売との協力構想も(後)

住民が再エネの可能性模索

 唐津市湊地区は同市中心部から車で海沿いを走ること約15分で着く集落で、神集島を臨む港町にはいい風が吹く。海を背にして山側を見ると、海風を受けて勢いよくまわる2つの風車が見えた。18年2月に稼働を開始した唐津市湊および相賀風力発電所のものだ。

 同発電所の運営・管理を行っているのは自然電力(株)。福岡市に本社をもち、唐津市湊風力発電所の工事も手がけた。同社はいま、同地区の住民団体「湊中学校区地域まちづくり会議」と電力小売事業での協力を構想している。

 同社は、11年設立の自然エネルギー発電所の設置から運営、アセットマネジメントまで行う発電事業者。17年からは電力小売事業も行い、企業などの環境対策に向けた支援も行っている。

 14年には熊本県合志市で太陽光発電所の売電収益の一部を地域の農業振興に還元するプロジェクトを立ち上げたほか、長野県小布施町では自治体や地元ケーブルテレビと共同で電力会社「ながの電力(株)」を設立するなど、さまざまなかたちでの地域貢献を行っている。唐津市でも開設当初から先述の風力発電所の売電収益のうち、1%が地区の農業支援に還元されるプロジェクトが予定されていたが、今回の住民団体との構想は、そのプロジェクトとは別。今回の構想は住民団体が代理店のようなかたちで地域住民への契約を進め、その件数に応じた金額を受け取るというものだが、同社は、「企業や自治体との協力はこれまであったが、地域の住民団体との協働は初めての試み。協議次第でスキームが変わる可能性がある」としている。

「まちづくりへの考え変えたい」

まちづくり会議のメンバーと自然電力の担当者

 風車を臨む湊公民館で自然電力の井手脩治氏、「まちづくり会議」で電力部会の部会長を務める新英樹氏、そして同地区出身で同「まちづくり会議」で以前会長を務めていた唐津市議会議員・原雄一郎氏の3者会合を取材。考えを聞いた。

 合同会社や自治体も出資するかたちでの発電所運営などですでに実績ある同社。しかし、「電力小売で住民団体と連携するのは初めて」だという。井手氏は、「電力小売に参入したのは最近で、事業としてのアピールもある」としたうえで、「地域への還元を模索していく」と熱意を見せる。

 「まちづくり会議」が電力小売事業を考えたのは、予算の問題からだった。唐津市の事業で、市内8つの中学校区にそれぞれ予算を分配、地区ごとに特色あるまちづくりが行えるように意図したものだが、20年度以降の予算は市として予定されていない。

風車と田畑

 湊中学校区地域まちづくり会議では同地区に在住の若手の人々が中心となって運営し、これまで地区の祭り「湊神祭」などを催したほか、イベントを行うことでソフト面からの地域の活性化を行ってきた。ハード面を駐在員ら年配者層が務めているが、「連携は取れている」と新氏。実際に、電力小売事業に対する意見集約は年配者層も行い、地域全体での取り組みになっている。

 今回の構想を進めるなかで、「まちづくり会議が祭りを運営していることを初めて知った」という声を聞いたという新氏、「これまで『あって当たり前』と思われてきたお金への考え方を変える機会になる」と述べ、「これまで以上に人々が自分たちの地域のことを考える良い機会になっている」と語る。

 自然電力の小売事業の特色は再エネ由来の電力比率を明らかにしている点だが、意外にも、構想について話し合うなかで、「原発に対するスタンスについて、これまで話には出てこなかった」と原氏は明かす。「イデオロギーの話ではなくて、地域がどうするか、どうしていくかという考えに立って進んだ話」として、「たとえ結実はしなくても、次に繋ぐことができるのではないか」と地域の自主性が促され次世代に希望を託すことができたという考えを示した。

 早ければ年内に話をまとめようという今回の構想。現在は集めた資金の使途の明確化を図るなど、地区内でのすり合わせを行っている。新氏は、「納得してもらう以上、自分たちもきちんと説明できるようにしたい」と地元目線で進めていく考えを強調した。

 日本の原子力発電事業が岐路に立つなかで、人々の意識も変わってきている。今回の取材では、その変化の中心はやはり若い人たちで彼らが将来を担っていくのだと改めて実感させられた。

(了)
【小栁 耕】

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