• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年04月15日 16:38

「中興の祖」の役割を担った西部ガス元会長 田中優次氏

激動・大競争時代転換期に攻撃能力を発揮

 昔々、福岡の財界には「七社会」と呼ばれる長閑な組織が存在していた。九州電力、金融機関=福岡銀行、西日本銀行、福岡シティ銀行そして、西日本鉄道、西部ガス、九電工を指す(2004年に西日本銀行と福岡シティ銀行が合併したので、現在は空いた1枠をJR九州が担う)。「七社会」の企業に共通しているのは政府による庇護産業ということで、民間の激烈な競争で立ち上がった企業はなかった。

 西部ガスは「七社会」の下部クラスに位置して身分相応に横ならびで地域貢献に努めてきた。いわばおっとりした公家集団としての社風がしっかりと確立されていたのだ。この安定時代が継続できていれば田中優次氏が「中興の祖」として活躍することはなかったであろう。

西日本銀行と福岡シティ銀行の合併という信じられない出来事があった。業種は違えど「政府による庇護政策は終わった。それぞれに自力で経営をやれ!」という通告を受けたのと同じことであった。

 平易にいえば「本業のガスを売っておれば会社が安泰という時代の終了」ということである。そして競争相手は同業種ではなく異業種となる。福岡、九州でいえば九電がライバルになるのである(2000年初頭で連結10倍の開きがあった)。

21世紀になって九電の攻勢が顕著になった。「オール電化」を旗印にガス利用の領域を浸食するようになってきた。ここに至って「田中優次の活用」という神託が下されたのである。

大殊勲:八仙閣のM&A

 この非常事態を迎えて社内で激論が展開された。結果、「本業・ガス利用を増やすには、こちらから攻めなければならない」という社内コンセンサスには至った。だが「具体的な方策は何か?」となると途方に暮れていたのも事実であった。

「ガス需要発掘」主義の旗頭・田中優次氏(当時、取締役)はある日、「八仙閣は後継者をめぐる深刻な悩みを抱えており、混迷している」ということを耳にした。

 八仙閣は福岡を代表する中華料理店である。同氏は「中華料理店におけるガス使用量は半端ではない。また、この店を買収できたら絶大な広告塔の役割をはたしてくれる」と強かな計算をした。早速、オーナーに接近を図った。すると田中氏の人柄がオーナーの琴線に触れ、企業買収交渉はトントン拍子に進んだ。04年のことだ。そして、同氏は新生八仙閣の初代社長に就任したのである。

 八仙閣は今でも変わらず繁盛している。また掌握した博多駅東の場所は西部ガスグループの拠点機能も担っているのだ。

このM&Aの貴重な経験を全社で共有し、その後の企業買収に生かした。そして何よりも「ガス需要を拡大させるにはこちらから攻撃をかけるしかない」という社風に激変。「公家集団」と囁かれていた体質は溶解してしまったのだ。

次なる挑戦へ、誰が第二の田中優次になるのか

 11年3月、東日本大震災で痛手を被った九電も攻勢への立て直しに余念がない。「七社会」のメンバーであるJR九州・西鉄・九電工は事業規模4,000億円に躍起になって挑戦している。筆者が高く評価しているのは西鉄国際物流事業である。ヨーロッパ各都市に駐在員をおいて事業展開をしており、当面、1,000億円規模の国際物流事業を目指しているという。

 筆者は西部ガスの26年度の事業目標に『売上高3,000億円を掲げる』ことを提案する。現在の2,000億円規模から50%加算する壮大な計画となる。過去のM&Aの積み重ねでも、本業ガスの供給を加算しても到底、実現するものではない。田中元会長が04年に八仙閣を買収したような新たな戦略が必要とされている。問われているのは『第二の田中優次が現れるか!』であろう。   

【児玉 直】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年10月21日 07:00

疾病リスク低減表示拡大と公正競争規約はトクホの救世主となるのか?(2)NEW!

 18年6月15日に閣議決定された「統合イノベーション戦略」および「未来投資戦略2018」において、トクホ等の保健の用途に係る表示の拡大についてその可能性を検討するこ...

2019年10月21日 07:00

「放射能でおもてなし?」~安全性を疑問視する国内外からの声が急増!(3)NEW!

 「東京オリンピック」の安全性を疑問視する国内外からの声が急増しています。今のところは、安全性を疑問視する声は海外からの声が大きいのが現状です。しかも、今年に入って急...

2019年10月20日 07:00

疾病リスク低減表示拡大と公正競争規約はトクホの救世主となるのか?(1)

 2015年4月1日に誕生した機能性表示食品制度は、それまでの「特定保健用食品(トクホ)」や「栄養機能食品」の行政主導の動きから、官邸主導の決定となり、食品の機能性表...

2019年10月20日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(4)

 関電の取締役会は機能不全となってしまった。かかる場合、虞犯取締役は辞任する他なく、また、関電は直ちに仮役員の選任を裁判所に申請し、適法な取締役で構成された取締役会に...

2019年10月19日 07:00

【凡学一生のやさしい法律学】関電報告書の読み方~関電疑獄を「町の法律好々爺」凡学一生がわかりやすく解説(3)

 関電の前号のような事情・実態もあってか、竹中平蔵氏が語っているように、政府高官の子弟が多く電力会社に就職している実態がある。竹中氏は遠慮しているので凡学一生の体験を...

2019年10月19日 07:00

癒しを求めて 全国から経営者が来院(後)

 慢性疲労には、水素も効果的です。大学病院の研究では、水素ガスの吸引は、ストレスや慢性疲労には極めて効果があることがわかりました。疲れが溜まっていくと、細胞内のミトコ...

2019年10月18日 17:59

「私たちにも何かできることがあるはず」~台風19号により氾濫した多摩川を取材して

 多摩川駅から歩いて約5分先の川沿いを歩いた。本格的な夏も終わり、コンクリートで固められた堤防というのに、上流から流されてきた大木や草木によって、現場では生草と粘土の...

2019年10月18日 17:49

日本初上陸の王室ご用達のスペイン料理店「ホセ・ルイス」出店~カトープレジャーグループがスペイン大使館で事業戦略発表会を開催

 (株)カトープレジャーグループは11月1日、日本初上陸のスペイン王室ご用達レストラン「ホセ・ルイス」を、東京・渋谷に出店。10月16日には、駐日スペイン大使館(東京...

2019年10月18日 16:57

ホークス、台風19号の被災地に義援金

 福岡ソフトバンクホークス(株)と福岡ソフトバンクホークス選手会(会長:柳田悠岐選手)は台風19号の被災地支援として義援金200万円の寄付とヤフオクドームに募金箱を設...

2019年10月18日 16:19

健康長寿の産業化で医療コスト削減を目指す

 国の財政問題がさまざまに語られるなか、中心となるのは高齢化の進行と、それにともなう医療費の高騰や経済活動の減退だ。これらの対策として医療費を削減するとともに、経済活...

pagetop