2024年03月29日( 金 )

「業界の破壊者ではない」OYO LIFEの戦略とビジネスモデル(前)

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OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN CEO 勝瀬 博則 氏

ソフトバンク・ビジョン・ファンドが2億5,000万ドル出資したインドの格安ホテル予約サービス「OYO Rooms(オヨルームズ)」。そのOYO(オヨ)が2月、日本に「賃貸住宅」事業で進出すると発表した。不動産業界やホテル業界に限らず、世間から大きく注目された「OYO LIFE(オヨライフ)」は3月28日にサービス開始。サービスインまでに1,000室を用意するとしていたOYO LIFEの戦略について、OYO Hospitality Limited(英国)が66.1%、ヤフー(株)が33.9%を出資して設立された日本の運営法人・OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPANの勝瀬博則CEOに聞いた。

手間だった「部屋探し」不明瞭だった「賃料」

 ――部屋の確保状況はいかがでしょうか。また、ユーザー登録件数はいかがでしょうか。

CEO 勝瀬 博則 氏

 勝瀬 リリース通り、3月28日までに1,000室超を確保することができました。また、事前予約を2月から開始しましたが、(3月末時点で)1万3,000人超の方から応募があり、反響の大きさに大変驚くとともに自信になりました。物件は都心の主要6区(※)の駅近に絞って確保しました。

 ――OYO日本進出に際して、ホテルではなく住宅を選んだのはなぜでしょうか。また、OYO LIFEには何ができるのでしょうか。

 勝瀬 OYOは「ホテルオペレーター」というイメージが先行していますが、OYOは「ホテルも運営している不動産会社」と考えています。OYOがやろうとしているのは、ホテル経営で培ったITとオペレーションを通じた不動産のバリューアップです。ITを使って、利用者の不便を解決する仕組みを提供します。日本の賃貸住宅マーケットは「不便を利便」に変える余地が大きいと判断したので、賃貸住宅市場を選びました。

 日本の賃貸住宅市場は、紙で進められる手続きが多く、まだまだITが浸透する余地があると考えています。我々が調査した結果によれば、物件探しから実際に生活できる状態に至るまで、約45日かかっていました。また、部屋探し、内見、契約、引越し手配、家具店で家具購入、家電量販店で家電購入など、入居に至るまでに26回も実地に足を運んでいました。とにかく賃貸住宅まわりは手間がかかっていたのです。OYO LIFEであればこの手間がかからず、部屋探しから入居まで最短30分で済みます。用意している物件は立地の良いものばかりですので、部屋への移動も含んだ時間です。圧倒的に時間を節約できます。

 もう1つの課題は、賃料などの価格が不明瞭なことです。10万円の家賃の部屋を契約する場合、10万円だけでは足りません。カーテンや家具家電をそろえるのは当然ながら、敷金や礼金、共益費や退去に関わる費用など、多岐にわたる費用がかかるのです。そもそも共益費がかかるので、毎月の支払いも10万円では足りません。初期費用やさまざまな追加の費用を加えると、家賃10万円と表示されている部屋を24カ月借りた場合、我々の試算では14万5,000円というのが実質家賃であることがわかりました。このように、本来の賃料がわかりにくく表示されているというのは問題だと思います。

わかりやすいだけでなく「短期で使う場合はお得」

 ――OYO LIFEが想定している入居者のメインターゲットは、どのような方でしょう。

 勝瀬 個人、法人ともに需要があると思います。社宅需要も高まっていますので、とくに法人需要は高まっていくのではないでしょうか。現在、日本では人手不足の時代に入りました。企業の採用コストは高まっていますが、給与を上げるという判断は日本では難しいのが現状です。そこで、福利厚生を手厚くしようとする企業が増えています。その1つが社宅です。大企業はバブルやリーマン・ショック後の景気低迷時に、寮や社宅を手放してきた経緯があります。また、コアビジネスではないところで、社宅などの資産を保有することに対して、株主の目も厳しいです。社宅に入居するのは主に若手社員ですが、若手社員の数によって柔軟に増減できるバーチャル社宅需要は高いと見ています。我々のような立地が良く社宅として使える物件は、企業にも重宝されていくのではないでしょうか。

 OYOLIFEの物件は月額賃料が高いという声を聞きますが、18カ月以内に引っ越す場合は通常の賃貸よりもOYOLIFEがお得です。なぜなら初期費用がかからないからです。

 サブスクリプション型とすることで、初期費用を月額賃料に均等に振り分け、定額のシンプルな価格表記にしています。2年以内に引っ越す可能性が高ければ高いほど、初期費用が抑えられ、料金がわかりやすいサブスクリプション型が選ばれるようになると思います。

 ――OYO LIFEの供給は、まずは東京都内とのことですが、日本国内におけるエリア展開について、今後の計画はございますか。

 勝瀬 東京は日本で最も大きな都市ですし、住宅需要も高いので、最初のマーケットとして選びました。ただ、地方のほうが現状への不満、潜在需要は多いのかなとも思っています。福岡などの中核都市はもちろん、地方都市でも展開する可能性は大いにあります。

(つづく)
【永上 隼人】

(※)渋谷区、目黒区、新宿区、中央区、文京区、千代田区

<Company Information>
OYO TECHNOLOGY&HOSPITALITY JAPAN
代 表:勝瀬 博則
所在地:東京都千代田区大手町1-1-2 大手門タワー
設 立:2018年7月
TEL:0120-132-722
URL:https://www.oyolife.co.jp

(後)

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