周囲と調和しつつも個性を発揮、建築に求められる場所性(後)
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yHa architects 一級建築士 平瀬 有人 氏
佐賀大学大学院 准教授自律的かつ他律的、いかに世界とつながるか
――さまざまなプロジェクトを手がけられていますが、建築設計やデザインをされるなかで、最も大事にされていることは何でしょうか。
平瀬 やはり“場所性”ですね。その場所に新たな建築物ができることによって、景観にどのような影響を与えたり、長い目で見た場合にどのような場所になっていくかなど、その場所と建物とをどのように関係して考えていくかです。何かしらその地域性のようなものを読み解いていって、たとえば先ほどの五ケ山ダム湖畔観光拠点では、大きなランドスケープのなかでの地面が隆起するようなありかたを考えたり、富久千代酒造の場合は古い町並みのなかでのバランスを考え、外観にあまり手を入れられない分、内部でいかに革新的なことができないかなど、そういった場所性を考慮した設計やデザインを重視しています。“自律的かつ他律的”とよく言っているのですが、他律的に周辺の環境からそこに寄り添いながら、物としては強い自律的なものをどうつくっていくかということに興味があります。
私は観光においても、建築自体がコンテンツになるのではないかと思っています。寺社仏閣であったり教会であったり、観光って基本的には建築物を見て回ることが多いですよね。海外では建築ツアーとかもありますし、「建築観光」というものをテーマにしたアーキテクチャー・ツーリズムというものもあります。そうした目玉となり得るような建築をつくりたいな、という思いはありますね。
――佐賀大学で教鞭を執っていらっしゃいますが、学生たちに一番に伝えていることは何でしょうか。
平瀬 そうですね、基本的には日本という島国で判断しないほうがいい、というようなことを伝えています。海外のなかでどういう立ち位置にいるかを常に考えなさい、と。今はもう、いかに世界とつながるかという時代です。我々も、積極的に海外に発信したいなと思っています。
――最後になりますが、今の福岡の都市開発・まちづくりについてはいかがですか。
平瀬 建築の世界では、福岡といえば「ネクサス香椎」がものすごく有名です。そのネクサスは1980年代の建築で、今ほどの洗練さはありませんし、粗い部分もたくさんあります。ですが、粗削りながらもきちんといろいろなものを考えながらつくられているな、という感じがします。それが今の建築をいろいろと見ると、さまざまな部分が洗練された結果、コピー&ペーストのような同じものの繰り返しになってしまっていて、建築文化という視点から見ると限界な気もしますね。時代もあるのかもしれませんが、経済効率重視みたいな、何となく全般的にそちらにシフトしている感じを受けます。ディテールとか、細かい造りの部分で見るとよくできていると思うのですが、あまりテーマがないというか…。建築の立場から言えば、そこにもう少し自由さみたいなものが入ったほうが良いと思いますね。
今後の福岡の都市開発においては、世界に注目されるようなものになってほしいな、という思いがあります。あとは今、日本の都市というものがどこも似てきているように感じますので、“福岡ならではの何か”がほしいですね。(了)
【坂田 憲治】<プロフィール>
平瀬 有人(ひらせ・ゆうじん)
1976年生まれ。東京都世田谷区出身。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、同大学院博士後期課程単位満了。博士(建築学)。ナスカ・早稲田大学理工学部建築学科助手・非常勤講師を経て、yHa architectsパートナー。2007年に文化庁新進芸術家海外留学制度研修員(在スイス)、08年より佐賀大学准教授を務める。
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