• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年05月20日 16:49

電力から情報通信、道州制、演劇興行まで~傑物・芦塚日出美氏の足跡をたどる(1)

芦塚 日出美 氏

 2018年11月に、「旭日中綬章」受章の栄誉に浴した芦塚日出美氏。九州電力に入社後、技術畑で研鑽を重ね、やがては副社長にまで上り詰めた後に、九電グループの九州通信ネットワーク(現・QTnet)の社長に転じて同社の経営再建にメドをつけ、また同時期には福岡経済同友会で“道州制”に向けた数々の活動を行い、さらにはその後、請われて博多座の社長に就任し、経営の建て直しに見事成功――等々。同氏のこれまでの経歴を簡単に列挙しただけでも、普通の人の4~5人分に相当するほどの濃密な人生を送ってきているように思える。

 電力から通信、そして地方自治や芸術・文化に至るまで、多岐にわたる分野で活躍し、そのたびに輝かしい実績を残してきた傑物の足跡を、簡単に振り返ってみよう。

学生時代に形成された芸術・文化の下地

 芦塚日出美氏が生まれたのは、まだ太平洋戦争が開戦する前の1939年12月である。幼少期を福岡市や長崎県諫早市、長崎市で過ごした芦塚氏は、中学3年のときに再び福岡市に戻った。高校受験を経て進学先に選んだのは、“福岡御三家”の一角である名門・修猷館高等学校。同校の質実剛健で自由闊達な校風の下、芦塚氏は勉学に打ち込むだけでなく、所属していた英研での活動などにも力を入れていった。

 さらに高校卒業後、芦塚氏が進学した大学は、これまた名門・九州大学である。九大工学部の門戸を叩いた芦塚氏は、大学での実験などの勉学の傍ら、レコードでの音楽鑑賞やダンス、そしてときには麻雀にも打ち込みながら、バラ色の青春時代を謳歌していった。

 この高校・大学での学生時代に、勉学だけでなく趣味や遊びなども含めて、さまざまな分野に全力で打ち込んでいったことが、芦塚氏の今に通じる、豊かな感性と芸術・文化への深い造詣などの人間的な素養の下地となった――といっても過言ではないだろう。

技術屋としての充足感と、渡仏研修での貴重な経験

 九大卒業後、22歳で九州電力に入社した芦塚氏は、上椎葉水力発電所で2年半、北九州支店電力課で2年半と、計5年間にわたって現場での経験を積んだ。

 さらにその後は、本社の工務部給電課に配属。自動電圧・周波数制御装置や系統保護装置、系統安定化装置など、電気の品質確保や電力の安定供給のための開発・設置・試験・運用などに従事していた。

 こうした、いわゆる“技術畑”で研鑽を積んでいた当時のことを、芦塚氏は「これぞ男の生きる道」「よくぞ電力技術屋に生まれたり」――と、自身が電力系統運用技術の最先端にいるという充足感や満足感を味わっていたと述懐する。

 さらに、ちょうどこの時期、芦塚氏は生涯の伴侶となる美穂夫人とも出会った。父の知人の紹介による見合い結婚ではあったものの、互いに強く惹かれ合い、出会った翌年には結婚。2人の子宝にも恵まれ、芦塚氏は公私ともに充実していた。

 そんな芦塚氏にとって大きな転機となったのが、73年に経験したフランス電力公社(EDF)での研修だった。

 当時のフランス電力公社は、電力系統の計画・運用に関しては世界随一の技術力やノウハウを有していた。技術畑に身を置いていた芦塚氏にとって、総合給電・自動化システムを始めとした世界最先端のEDFでの研修は、さぞかし刺激を受けたであろうことと推察される。

 さらに、フランスでの研修で芦塚氏が習得してきたのは、単なる電力系統の技術だけではなかった。フランスでの研修に先立って、「1つの言語を知ることは、1つの文化を知ることなり」との信念の下でフランス語の特訓に明け暮れた芦塚氏は、“華の都”といわれるフランス・パリの芸術・文化に触れたことで、自身の優れた感性にさらなる磨きをかけていった。

 このフランスで磨かれた感性や芸術・文化に対する造詣の深さが後々、自身が博多の芸術・文化の拠点「博多座」の再建を引き受けた際に大いに役に立とうとは、このときの芦塚氏にはまだ知る由もなかったことだろう。

(つづく)
【坂田 憲治】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年06月01日 07:00

どうなるこれからの新幹線 計画から50年で開業は半分(後)NEW!

 新幹線を所管する国土交通省鉄道局は、「現時点で、整備新幹線のスキームを見直すことは検討していない」という。新幹線整備にともなう地元負担をめぐっては、過去にもいろいろ...

2020年06月01日 07:00

最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(後)NEW!

 福岡市においては高島宗一郎市長が19年4月の市長会見で、スーパーシティ構想への意欲を示している。

2020年05月31日 07:00

ストラテジーブレティン(252号)~「コロナパンデミック中間総括」(後)

 コロナ以前から3つの歴史的趨勢が起きていた。1. ビジネス、生活、金融、政治のすべてを覆いつくすIT・ネット・デジタル化、2. 財政と金融の肥大化による大きな政府の...

2020年05月30日 07:00

危機に直面し、自らをイエス・キリストにたとえる孫正義の自信と勝負魂(4)

 このインドネシア事業については、日本ではまったく報道されないが、他にもソフトバンクの進めるアジアビジネスは広範囲におよんでいる。とくに、「アジア電力網構想」は...

2020年05月30日 07:00

どうなるこれからの新幹線 計画から50年で開業は半分(中)

 自由民主党所属の参議院議員で、与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームのメンバーでもある西田昌司氏は、新幹線整備の経緯について次のように分析する。

2020年05月30日 07:00

最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(中)

 スーパーシティによく似た言葉として、「スマートシティ」というものがある。「スマートシティ」とは、IoT(モノのインターネット)などの先端技術を用いて、基礎インフラと...

2020年05月29日 17:27

【北九州市】週明けも学校の授業を午前中のみに~新型コロナウイルス感染者増大を受け(5月29日現在)

 北九州市では、5月23日から28日にかけ連続で感染者が発生し、28日は21名と大きく増えている...

2020年05月29日 16:18

国交省・民都再生事業に認定 「舞鶴オフィスプロジェクト」8月着工へ

 国土交通省は今年4月21日付で、「舞鶴オフィスプロジェクト」を民間都市再生整備事業として認定した...

2020年05月29日 16:00

国交省が中間とりまとめ ESGを踏まえた不動産特定共同事業の検討会

 ESG投資の拡大やブロックチェーン技術の台頭、クラウドファンディング市場の拡大など、不動産を取り巻く環境は近年大きく変わってきた。このような潮流を踏まえ、国土交通省...

2020年05月29日 15:53

どうなるこれからの新幹線 計画から50年で開業は半分(前)

 新幹線とは、「時速200km以上で走行できる幹線鉄道」を指す。1964年に開業した東海道新幹線(東京~新大阪)以来、75年には山陽新幹線(新大阪~博多)、91年に上...

pagetop