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2019年05月31日 15:53

HC市場規模の比較とDIYの現状 背景にある日米のライフスタイルの違い(1)

 1970年代に第1号店が誕生してから拡大・繁栄してきたホームセンター(HC)だが、日本の景気停滞状況と相まって、その業態に陰りが見え始めている。もともとアメリカで展開されていた同業態店舗の模倣から始まった日本のHCは国内で独自の発展をしてきたが、この世界的な景気低迷のなかにおいても、やはりアメリカ業態の模倣が生き残りの方策となるのだろうか。

ホームセンターの萌芽

 戦後、日本の流通業の若手経営者たちはアメリカ流通業界の雄といわれたシアーズとKマートに学んだ。そのなかの何人かが後に日本型大型店と呼ばれる業態を創業した。当初、アメリカに倣って“食品なし”でスタートしたが、より強い店舗になるためのラインロビングの一環として、“食品”を加えた。

 ラインロビングとはいろいろな部門(業種)を集めて1カ所に消費者が買いたいと思っているものをそろえるという手法である。いわゆる利便性の提供である。それまで消費者は衣、食、住それぞれ別の店に行かなければならなかったし、具体的にはさらに細かく店を使い分けなければならなかった。たとえば、肉1切れにしても「かしわ屋」という鶏肉の専門店には牛、豚肉は置いていなかった。靴や下駄は履物店に行くことが普通だった。交通手段もなく、徒歩がほとんどで消費者は文字通りモノの豊かさとは縁遠い日常を送っていた。

 当初、業界の理論的リーダーは食品と非食品は利用頻度が違うという理由で、“食品と非食品の合体”には反対だった。だが、当時の日本人のライフスタイルから見ても非食品だけでの規模拡大はいささか無理があり、必然的に日常消費の典型部門である“食品”に各社こぞって手を伸ばした。

 アメリカに倣い、「よりたくさん、より安く」というコンセプトを基本にして、食品を加えた新しいかたちの店は多くの消費者の支持を得ることになる。とくに衣料品は安く売っても高い粗利率が取れ、さらに消費飢餓という時代背景による売れ残りリスクがなかったため、彼らは食品をより安く売ることができた。そんな流れのなかで従来型の小売業は瞬く間に姿を消した。

豊かになると消費者のマインドが変わる

 日本には「隣百姓」という言葉がある。我々の国民性を表す実に言い得て妙な表現だが、簡単にいえば「隣が稲刈りの準備を始めたからうちも…」の類いである。隣が洗濯機を買ったから…、隣がテレビを買ったから、という消費が戦後は結構長い間続いた。しかし、豊かさが重なるとそのかたちが変化する。「十人一色」から「十人十色」になり、やがて「一人十色」となる。

 消費者の要求レベルが高くなるのである。豊かになるほど消費者は妥協しない。

 たとえば何でもある大型スーパーだが、園芸用のおしゃれな女性用長靴はない。気に入ったシャツを見つけたが、それに合うパンツが…。いろいろあるが欲しいものがないという現象が現れるのである。豊かになると消費者を十把ひとからげにした品ぞろえは見向きもされなくなる。かつて通用したラインロビングが通用しなくなるのだ。

 そこに登場するのがカテゴリーキラーである。やがて日本型大型店はそのラインのほとんどをカテゴリーキラーに浸食される。紳士服、靴、カジュアル衣料、スポーツ用品、家電、日用品、書籍、文具…。

 1970年代前半に登場したホームセンター(HC)は日本型大型店の部分カテゴリーを切り取ってより豊かな商品種類をそろえることで「買いたいものがある」状態をつくり出した。その後、かつての日本型大型店を彷彿とさせる猛烈な出店攻勢で、新たな市場もつくり出しながら市場を席巻する。そして今やその数は5,000店に迫ろうとしている。

(つづく)
【神戸 彲】

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)

1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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