2024年04月25日( 木 )

働き方改革と下請法

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岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士・税理士

岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建設工事紛争審査会会長、経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。

 前号では、いわゆる働き方改革関連法のなかから、「時間外労働の上限規制」についてご紹介いたしました。長時間労働の是正は、重要なテーマとなっています。これは自社の労働者の労務管理を適切に行うだけではなく、ほかの事業者との取引において、長時間労働につながる取引慣行の見直しが必要となります。「労働時間等見直しガイドライン(労働時間等設定改善指針)」では、具体的に次のような配慮が必要とされています。

(1)週末発注・週初納入、終業後発注・翌朝納入等の短納期発注を抑制し、納期の適正化を図ること
(2)発注内容の頻繁な変更を抑制すること
(3)発注の平準化、発注内容の明確化その他の発注方法の改善を図ること

 また、親事業者における働き方改革に向けた取り組みの影響が、下請負業者の負担となって押し付けられた場合には、下請法違反となったり、優越的地位の濫用として独占禁止法に違反することになる場合もありますので、十分な注意が必要です。

 公正取引委員会では、下請法違反に該当する可能性がある事例として、次のような行為を挙げています。

・短納期発注を行い、取引の相手方に休日勤務を余儀なくさせ、人件費などのコストが大幅に増加するにもかかわらず、通常発注の単価と同一単価を一方的に定める行為(買い叩き:一方的に、著しく低い対価での取引を要請する行為)


・自己都合により設計変更をしたのに、納期延長を認めなかったため、取引の相手方に休日勤務を強いたが、結果として納期に間に合わなかったことを理由にペナルティの額を差し引いた取引対価しか支払わない行為(下請代金の減額)や、商品の受領を拒否する行為(受領拒否)


・取引の相手方に対して部品の製造を委託しているところ、当初の発注から設計・仕様を変更したことにより、取引の相手方にその変更への対応や当初の納期に間に合わせるための人件費増加などが生じたにもかかわらず、その費用を負担しない行為(不当な給付内容の変更および不当なやり直し)


・商品発注のために必要なデータを自社システムへ入力する作業を、取引の相手方に対して無償で行わせる行為(不当な経済上の利益の提供要請)

 なお、下請法が適用される親事業者や下請負事業者は、取引の内容と事業者の資本金の規模によって判別されますので、前記のような行為があったとしても、常に下請法違反に該当するわけではありません。また、建設工事に係る下請負(建設工事の再委託)には建設業法が適用され、下請法は適用されませんが、建設業者が請け負った建築物の設計・内装設計、工事図面の作成を他の事業者に委託する場合には、下請法が適用されることになります。

 このように法律の適用関係が複雑ですので、下請法や建設業法に関して疑問がある場合は、弁護士にご相談ください。

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【建設・不動産業界法律相談】残業時間の上限規制、36協定の再点検を

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