2024年04月26日( 金 )

架空巨額ファンド 再び表面化した詐欺師・徳川高人(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 企業主導型保育事業の助成金をめぐる大型詐欺事件が発生した。その中心にいたのが、川崎大資だったが、九州随一の詐欺師といえば、過去から現在に至るまで「徳川高人」の右に出る者はいない。県知事選出馬、大手企業相手に巨額訴訟を起こすなど名の知れ渡ったこの人物。近年は表に顔を出さずにいたが、過去にもち掛けた2億円の投資をめぐり現在福岡地裁で係争中だ。取材過程で判明したのは、「ありえない話を信じ込ませる」詐欺の常套手段だった。

取材過程で入手した文書
※クリックで拡大

 事件をまとめてみる。始まりは2010年に遡る。A社代表は親族から紹介を受けるかたちで、徳川と知り合った。資力がある人物として紹介された徳川は当時、前述の受話器マークの著作権を保有しているとして、大手通信会社など約130社を相手取り、総額5,000億円規模の損害賠償訴訟を行っている頃だった。

6種類の著作物「受話器の象徴」

 受話器マークとは、携帯電話にも表示されるが、電車内や駅構内、カーナビなど生活の至るところで見かけるものだ。1982年にこのマークが文化庁において、著作物として認可され、それを買い受けた徳川が大手企業に対し「30年以上にわたって著作者の許可なく、マークを無断使用した」として、損害賠償を求めたのだった。テレビや新聞では報道されなかったが、一部週刊誌に取り上げられ「徳川高人」の名を世に広めた出来事であった。結果として徳川が賠償金を手にすることはなかったのだが・・・。

 2010年11月、A社関係者と徳川、M社代表は一同に会することになった。A社はメガソーラー事業を行う上で、まとまった資金が必要となることから、今後の資金調達を見据えて、徳川の投資話に興味をもった。

 当時の徳川の説明では、「受話器マークの裁判で多額の賠償金が手に入る」「インドネシアの財閥を中心とした50億のファンドがある」「2億円入れてもらえば、遅くとも2カ月後に元本回収できる」という旨の説明で、投資に勧誘した。さらに徳川はファンドに投資してくれれば、その後のメガソーラーのための資金調達も協力するとの話だった。冷静に考えれば、誰が聞いても怪しい話にしか聞こえてこない。それでも、多額の賠償金や巨額ファンド、会社の将来を考えると資金調達が事業のネックになることは見えていた。そのため、ファンドへ2億円の出資を決断し、同年中にはファンドへ金が振り込まれた。これが期日に返還されないことで今の訴訟に発展している。

機構から送られたダイレクトメール
機構から送られたダイレクトメール
※クリックで拡大

 A社と同じように、ファンドへ投資した個人や法人は1人や2人ではない。取材の過程で、当時、福岡市中央区にあった徳川事務所を訪問したことのある人物に話を聞くことができた。

 「事務所を一歩入れば、まさに高級なホテルのようだった。豪華な美術品や装飾品が置かれていた。各階に女性秘書がいて、数時間の滞在だったが、茶室を含め部屋をいくつも案内された。今思えば、信用させるためのアピールだったのだろう。ハッタリで、金持ちだと信じ込ませる手口だった」―――使い古された詐欺の手口のようにも思うが、信じてしまう人がいてもおかしくはない。徳川をよく知る別の人物は「何人もの被害者が怪しいとは思いつつ、虚構に騙され実態がありもしない投資ファンドに金を振り込んでしまっていた」と語る。

(つづく)
【東城 洋平】

(前)
(後)

関連記事