2024年04月19日( 金 )

架空巨額ファンド 再び表面化した詐欺師・徳川高人(前)

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 企業主導型保育事業の助成金をめぐる大型詐欺事件が発生した。その中心にいたのが、川崎大資だったが、九州随一の詐欺師といえば、過去から現在に至るまで「徳川高人」の右に出る者はいない。県知事選出馬、大手企業相手に巨額訴訟を起こすなど名の知れ渡ったこの人物。近年は表に顔を出さずにいたが、過去にもち掛けた2億円の投資をめぐり現在福岡地裁で係争中だ。取材過程で判明したのは、「ありえない話を信じ込ませる」詐欺の常套手段だった。

(株)中小企業倒産防止開発機構が入るビル
(株)中小企業倒産防止開発機構が入るビル

 実は本サイトにも過去、たびたび登場している人物だが、いずれもポジティブな話ではない。まずは徳川の人物像をまとめてみよう。1995年、99年の福岡県知事選に出馬も落選。出馬した際のプロフィールによると、「佐賀県三田川町出身で西南学院大学中退。1982年、服飾・食品販売事業を開始。1994年、政治研究所『政治分析センター2001』を設立」とあるが、今ではどこまでが正しい経歴なのかもわからない。ただ、それ以上に目立ったのが、選挙運動期間中に破産宣告を受けたことや、選挙後に詐欺容疑で逮捕されたことだった。

 その後、しばらく表舞台に出ることはなかったが、2005年「(株)中小企業倒産防止開発機構」という政府機関かと勘違いしそうな名称の会社を設立。「中小企業を救済し、企業再生を支援する」との触れ込みだったが、複数の訴訟を抱えるなどトラブルが絶えなかった。2007年秋には福岡県内の中小企業に対し、「先着100社限定、総額50億円立替金キャンペーン実施中」とのダイレクトメールを送付していた。

機構から送られたダイレクトメール
機構から送られたダイレクトメール
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ダイレクトメールの内容
ダイレクトメールの内容
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 冷静に考えれば、こんなうまい話はあるはずもないのだが、資金繰りに窮した経営者は藁にもすがる思いで、同社の門を叩くのであった。罠にはまった経営者は立替金を受け取るために、高額な手形を振り出し、怪しいと気付いたときにはすでに手形は換金されて、第三者から支払いを求められる事例が発生。「手形のパクリ屋」―――これが当時の徳川の別名であったが、2009年3月、徳川は詐欺容疑で逮捕される。大阪市の飲食店経営会社から総額3億数千万円の約束手形(二十数通)を騙し取った疑いだった。当然、しばらく身動きは取れなくなる。

6種類の著作物「受話器の象徴」

 次に徳川が世間を驚かせたのは、2012年の受話器マークの著作権をめぐる巨額賠償訴訟だった。これは詳しく後述する。今回判明した架空ファンド投資詐欺はこの裁判に紐づくことがわかった。なお、最近では、住宅、太陽光設備販売の(株)EarthFriendly(佐世保市)や足場工事の平成工業(株)(下関市)に潜り込んでいたようだが、いずれも昨年破綻している。また久留米市に同じ「(株)中小企業倒産防止開発機構」名で、2016年9月に設立された会社があり、徳川が代表を務めていたが、18年6月に清算していることもわかった。

 現在、福岡地裁で進行中なのは、福岡県内の太陽光発電関連A社らが、徳川高人が代表を務める(株)中小企業倒産防止開発機構(以下、機構)と証券会社と称するM社に対し、損害賠償として2億円を請求している事件である。2018年夏頃から始まった裁判はもう1年が経過しようとしている。なお、A社に取材を申し込んだが、「係争中につき、コメントできない」との回答だった。

(つづく)
【東城 洋平】

(中)

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