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2019年09月19日 11:18

福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(前)

 福岡市の指定管理者である「(福)福岡市身体障害者福祉協会」(以下、協会)に勤務していた50代の女性職員(Aさん)が今年5月、自殺していたことがわかった。関係者への取材から、自殺の原因として上司からのパワハラが疑われる証言や証拠が見つかっている。

 さらに職員間の関係悪化に気づきながらも、それを見過ごしてきた組織の体質も自殺の背景にあるとみられる。問題視されるのはAさんの自殺を隠蔽するかのような法人のあり得ない対応。これまで遺族は法人から一連の経緯に関する説明を受けていないことがわかっている。職員1人の死に向き合えない組織に、命と深く関わる福祉サービスを提供する資格はあるのか。

協会本部建物 ふくふくプラザ
協会本部建物 ふくふくプラザ

関係者から届いた心の叫び

 「助けられなかった無念を晴らしたい。組織は何の責任も取らず、泣き寝入りするしかないのか」―――データ・マックスに一通のメールが届いたのは5月下旬。Aさんを知る人物からの「心の叫び」だった。Aさんの死後1週間以上経過しているが、法人が自殺を隠蔽していると言わざるを得ない状況だというものだった。

 Aさんが勤務していたのは、「(福)福岡市身体障害者福祉協会」(本部:福岡市中央区)で、市の指定管理の元、市の所有する建物を事務所や施設として使用し、福祉サービスを提供している。1950年に設立された同協会は財団法人を経て、98年に社会福祉法人となり、現在は延べ12の障害福祉、老人介護事業所を運営している。歴史も古く、福岡市の障害福祉を長年支えてきた組織の1つだといえるだろう。パートも含めた事業従事者は200名を超えることから、経営陣には大企業並みの運営手腕が問われるのは間違いないところだが、明らかになったのはあまりにもお粗末な対応だった。

 取材で判明した事柄を時系列でまとめると、以下の通りとなる。

時系列でまとめた事柄
※クリックで拡大

周囲が信頼寄せる人物

びっしり書き込まれた手帳
びっしり書き込まれた手帳

 Aさんは2012年に同法人に雇用され、福祉事業に従事するようになった。離職率の高い業界ではあるが、Aさんの勤続年数は7年で、生前従事していたのは訪問介護部門。協会運営の「ピアサポートふくおか南センター」に配属されていた。要介護者とヘルパーをつなげる役割を担うサービス提供責任者として、正規雇用されていた。

 日頃の仕事ぶりを知る関係者は「真面目で責任感が強い。常に手帳を持ち歩いて、利用者の情報を書き込んでいた」と話す。また別の関係者は「感情を表に出す人ではないが、仕事に対しては真面目で利用者ファースト。利用者やその家族、ヘルパーにも信頼されていた」とAさんの仕事に対する姿勢を評価する。

 遺族に見せてもらった手帳には、びっしりと書き込まれた訪問介護の記録が残っていた。一見するだけで、Aさんの仕事の几帳面さが伝わってくる。仕事柄、休みでも急な対応も必要になる仕事だ。遺族は「仕事中心の生活だった。休日もよく利用者から電話が入り、利用者の元に向かっていた」と話す一方で、関係者からは「利用者を重視するあまり、管理者(上司)との板挟みになっていたかもしれない」と職場の人間関係を心配する声が聞こえてきた。

残されたメッセージ

 仕事に真面目で利用者からの信頼も厚かったAさんがなぜ死を選んだのか――ー。

 今年4月に休職を申し出て、5月に命を絶ったのだが、それ以前に職場環境の変化があった。協会での運営体制に変更があり、2年ほど前、いくつかの事業所が統合されるという組織変更があった。

 このころにAさんは管理者である男性(Bさん)の下につくことになった。管理者は複数いるサービス提供責任者をまとめ、利用者へのサービス提供を効率的かつ、スムーズに調整する役目を担う。Aさんは仕事上の相談や報告をBさんにするようになる。人間誰しも相性というものがある。2人の関係を「良好な感じではなかった」という人もいるが、それはどんな職場でもあり得ることだが・・・。

 取材を進めると、2人の関係悪化が決定的になった出来事が残された資料や関係者からの証言でわかった。Aさんの手帳には、昨年11月のある出来事を境に、「Bさんから無視されるようになった」という旨のメモが残されている。Aさんが受けたクレーム対応で、Bさんが利用者に謝罪したという内容だ。「これをきっかけにAさんは悩むようになった」(知人)。手帳には「パワハラだよね。ずっと無視が続いた」Bさんから向けられた発言として、「俺のいうことが聞けないなら、辞めて」などの記載も残っていた。

有田さんのメモ パワハラだよね
Aさんのメモ「パワハラだよね」

 またAさんから仕事の相談を受けたという知人は「昨年末、管理者(Bさん)とうまくいっていないと聞いた。利用者の担当割り振りが不公平で精神的につらい。利用者を訪問するときだけ、気持ちが晴れる」と相談されたという。

(つづく)
【東城 洋平】

【福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族】の記事一覧

福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(前)(2019年09月19日)
福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(中)(2019年09月19日)
福岡市の社会福祉法人で職員自殺 置き去りにされた遺族(後)(2019年09月20日)

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