2024年04月19日( 金 )

動き出した5G通信市場(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 5G通信の商用化が世界各国で本格化している。大容量データを遅延なく高速にやり取りできるのを特徴とする5Gは、既存の4G/LTEと比べて、「高速大容量」以外にも「多数同時接続」「低遅延」という特性を有している。

 5G通信では、映画1本を6秒くらいでダウンロードできるようになるというので、この技術は通信の世界だけでなく、いろいろな産業を変えていく可能性を秘めている。

 そのような状況下、韓国で4月3日より5G通信のスマートフォン向けサービスがスタートした。韓国のスマホ向け5G通信サービスは、米国のベライゾンより2時間早く発表されたため、世界初のスマホ向けの5G通信サービスとなった。

 韓国の3つのキャリアは莫大な投資をし、5G通信のサービスは6大都市と85の地方都市に展開されることになる。米国の通信会社ベライゾンも、同日の4月3日に、スマートフォン向けの5G通信サービスを開始した。米国と韓国が先陣を切り、中国、日本もこれに負けないように、5G通信サービスのための投資を積極的に行っている。いよいよ5G通信時代の幕開けである。しかし、今回の5G通信の普及は、すでに普及しているLTE通信を補うかたちで、徐々に浸透していくことになるだろう。

 5G通信サービスでは非常に高い周波数帯域を使うことになる。従来は、このような高い周波数帯になると、電波の減衰が大きく、遠くまで電波を飛ばすことが難しかったため、実用化が困難とされていた。このような課題を解決するために、複数のアンテナを束ねてビーム化し、通信中の端末にめがけて照射する「ビームフォーミング」という技術が必要だった。この技術が開発されたことで、いよいよ5G通信のサービスは安定的かつ効率的にできるようになったわけだ。

 さて、通信設備の世界的な会社といえば、米中貿易戦争で全世界に名前が知られるようになったファーウェイ(中国)、エリクソン(スウェーデン)、ノキア(フィンランド)、サムスン電子(韓国)などがある。ノキアとエリクソンは、かつて通信市場に君臨していた存在だったが、最近市場に激変が起こって、ファーウェイとサムスンが浮上し、ノキアとエリクソンはフォロワーに変わりつつある。

 ノキアの5G基地局向けのネットワーク設備の供給が遅延したことで、世界初の5G通信のサービスに設備を納入した実績のあるサムスン電子と、ファーウェイに市場シェアを伸ばすチャンスが訪れている。

 近年通信設備で世界1位の座に上り詰めたファーウェイは170カ国、40数社のキャリアに通信設備を納入している。ファーウェイの通信インフラを使っているのは、全世界で30億名に上るだろうと推測されている。

 ファーウェイの売上高の半分以上は、中国国内で発生しているが、その他にヨーロッパ、アジア、アフリカ、中東などでもファーウェイはシェアを伸ばしている。ファーウェイは5G通信において先頭を突っ走っており、昨年設備を納品した基地局は7万基を超えるほど、ファーウェイはすごい勢いで伸びていた。ところが、米国トランプ大統領による制裁発動で、ファーウェイの快進撃にブレーキがかけられた。

(つづく)

(後)

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