2024年04月19日( 金 )

動き出した5G通信市場(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 制裁の影響で、今まで良い関係を維持していたソフトバンクも今回ファーウェイの設備を除外し、ノキアとエリクソンの設備を選定することにした。デンマークの最大手通信会社であるTDCも、ファーウェイと12年間取引をしていたが、5G通信設備ではファーウェイを排除し、エリクソンを採用した。

 日本、豪州、ニュージーランドなども米国の制裁に賛同している。このような隙を狙って、エリクソンなどの他の通信設備会社はシェアの上昇を狙っている。そのなかでも、サムスン電子の躍進は目を見張るものがある。

 サムスン電子は昨年までは通信設備市場でのシェアは6.6%に過ぎなかった。ところが、市場調査会社の報告書によると、昨年の第4四半期と今年の第1四半期の市場占有率は、サムスン電子が37%で1位に、ファーウェイが28%で2位に、エリクソンが27%で3位に、ノキアが8%で4位になっていることが明らかになった。

 昨年の市場シェアはファーウェイが31%で1位、エリクソンが29.2%で2位、ノキアが23.3%で3位、ZTEが7.4%で4位、サムスン電子が6.6%で5位であった。通信設備市場に大きな変化が訪れているわけだ。

 サムスン電子が急激にシェアを伸ばすようになった背景には、韓国が世界で初めて5G通信を商用化し、3社が莫大な投資をしたことが原因となっている。このシェアは米国と韓国だけの数字で構成されているので、今後本格的に5G通信のサービスが開始され、各社がどこで、どのようにシェアを伸ばしていくかによって、状況が大きく変わる可能性はある。それでも、サムスン電子は日本の東京オリンピック向けの5G通信サービスの設備をNTTドコモ、KDDIにも納品するようになるなど、5G通信市場で地位が向上したことは間違いない。

 サムスン電子はKDDIから2兆3,000億ウォンの通信設備を受注し、納品することになっただけでなく、今後両社は協力関係を強化していくとされている。サムスン電子はアメリカでも米国の4つの通信事業者のなかで3社と契約することに成功している。それに、モデムチップとモバイルアプリケーションプロセッサーを統合したチップでエクシノス980も開発に成功した。このチップはクアルコムのスナップドラゴンを代替していくことになるチップである。

 5G通信市場の市場規模は2020年に387億ドルになると言われている。市場規模は2035年には12兆3,000億ドルに成長することが見込まれている。5G通信のサービスは今後2,200万人の雇用を創出することになるというので、各国は次世代の大きな産業に狙いを定め、鎬を削っている。通信市場はすべての産業の根幹になるので、市場規模の以上の意味合いをもっている。

 韓国では、サムスン電子は非メモリの1つの領域として5G通信市場を狙っているし、通信会社3社も5Gサービスで競争優位性を確保するため躍起になっている。今年4月基準でSKテレコムの4万カ所を筆頭にインフラ投資に余念がない。

 最後に、このような期待がもたれている5G通信ではあるが、一部では費用対効果で、5Gはどこでどのような収益が上がるのかを疑問視する向きもある。なので、もう少し市場の動向を見守る必要はあるだろう。それでも、5G通信が動き出したのは間違いない。今後の動向に目が離せない。

(了)

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