2024年03月29日( 金 )

2020年のIMO規制の導入で激変する造船業界(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 中国の造船産業は現在どのような状況に置かれているのだろうか。中国の造船産業はバルク船、コンテナ船などにおいて、価格競争力を武器にし、韓国の造船産業の大きな脅威だった。しかし、米中貿易摩擦など世界経済が不安定化することによって、バルク船、コンテナ船の発注が急減し、造船産業に冷たい風が吹いている。

 中国は2018年に造船受注1位の座を韓国に明け渡すことになった。そして現在、中国の造船産業は崩壊の危機に瀕している。中国の受注の60%以上はバルク船と自国からの発注が占めており、韓国とは受注の内訳がまったく異なっている。

 中国政府による資金支援などで受注には成功していても、その間造船産業の競争力や生産性はそれほど向上していないのが現実のようだ。

 今年は世界の造船会社の半分くらいが受注できずに淘汰されるという予測があるが、そのほとんどは中国の造船会社になりそうだ。世界の造船会社330社のなかで、今年150社くらいが廃業になるとされている。

 中国の場合、2009年に造船会社が396社あったが、昨年末は110社と急減している。発注量の減少だけではない。中国の造船業界の品質問題も浮き彫りになっている。 昨年、試運転から2年目に廃船が決定された浦東中華造船のLNGタンカーがよい例である。

 中国政府の支援を受けて低価格で受注に成功したものの、技術力不足で、品質はもちろん、納期を守れず、中国の造船会社に顧客が背を向ける結果を招いた。また2017年、フランスの海運会社であるCMA-CGMが中国の中国船舶工業集団(CSSC)に9隻のLNG推進コンテナ船を発注した。引き渡しは今年7月だったが、二度にわたり納期が延ばされている。

 日本の場合はLNG推進船の建造能力はあるが、規模の経済の面で、韓国に太刀打ちできる状況ではない。その結果、日本はLNG推進船を16年以降1隻も受注していない。

 環境規制で韓国造船業界に追い風が吹いているのは間違いないが、課題がないわけではない。造船受注がLNG船に偏っているとの指摘があるのだ。実際、今年韓国の造船3社はコンテナ船を1隻も受注できていない。なぜかというとLNGタンカーの場合、寿命が20年ととても長い。だから、カタールやロシアなどの発注が一段落したら、その後どうなるかを懸念する声が多いのだ。それに、LNG船の雇用創出効果は海洋プラントなどと比較すると、4分1の水準に過ぎない。

 韓国の造船会社はLNG船の納品が終わった後の新しい成長エンジンをまだ見つけていないという課題を抱えている。また、今現在、中小造船会社は厳しい現実に立たされている。市場環境が変わっているこの時期こそ、好況に踊らされることなく、将来を見据えたしっかりとした対策が必要である。

 造船産業の覇者をめぐる中国と韓国の戦いはこれからも続きそうだ。

(了)

(前)

関連記事