2024年04月24日( 水 )

鹿島建設が犯した大罪(後)

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鹿島側弁護士による姑息な時間稼ぎ

 裁判が長期間におよんだ最大の原因は、鹿島建設側の代理人である山口雅司弁護士(萬年総合法律事務所)の姑息な時間稼ぎ工作だった。弁論準備の次回期日の日程調整においても、裁判所が指定した期日を「差し障りがある」と何度も延期させることは毎回だった。

 また、裁判所から「鉄筋のかぶり厚」に関する証拠文献の提出を求められた鹿島建設側の山口弁護士は指定された期日までに文献を提出しなかった。裁判長に提出を促されると「次回までに提出する」と答えるものの、次回も提出しないという不遜な行為を数回繰り返し、ついに文献は提出されることなく、補修に使用した製品の資料を提出しただけであった。

 そもそも、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚は、耐火性(火災などの熱からの保護)・耐久性(内部の鉄筋を腐食から守る)・構造上の理由(鉄筋の付着力の確保)などを目的としており、建築基準法施行令第79条に定められたかぶり厚は、絶対的な数値として厳守しなければならないものである。鉄筋のかぶり厚に関する重要な文献があるかの如く裁判官を惑わせた鹿島建設側の山口弁護士の言動は、裁判の時間稼ぎに過ぎなかったのである。

 不遜な言動を重ねる山口弁護士に対し、原告である区分所有者たちは毎回憤慨していた。裁判の場において弁護士らしからぬ不遜な言動を続けた山口弁護士であるが、本年(2019年)4月、福岡県弁護士会の会長に就任している。原告である区分所有者の1人は「あんな傲慢な人が弁護士会の会長とは・・・弁護士会には人材がいないのか!」と嘆いていた。

 鹿島建設側の山口弁護士が、なぜここまでして時間稼ぎを行ったのか?裁判が長期間におよんだことにより、原告である区分所有者たちは明らかに疲弊していた。マンション内には裁判に参加していない反対派もおり、出口の見えない裁判に関して原告を批判する声も強かったと聞く。そんな原告側の状況をさらに厳しいものとするために、鹿島側の山口弁護士は時間稼ぎをしたものと思われる。

鹿島建設・弁護士が最後まで続けた原告に対する嫌がらせ

 争点が「鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚」に絞られ、和解に向けて進行するなか、鹿島側の山口弁護士は「和解金により補修を行うのであれば共用部分に手を加えることになるので、区分所有者の4分の3以上の同意を得てもらう必要がある」という条件を原告に突き付けた。

 原告は92戸分の58戸であり4分の3(69戸)には到底届かないことをわかったうえでの嫌がらせである。プラス11戸の区分所有者の同意を得るため、管理組合理事長をはじめとする原告たちは奔走した。

 自身が部屋に居住せず賃貸している棟外区分所有者への連絡は困難を極めた。また、裁判が長引いた5年の間に原告が亡くなり遺族が相続をした家庭もあり、相続人が複数いるため連絡が大変な上、相続人が裁判そのものを理解していないケースもあり説明・説得に苦労をしたという。

 原告たちの苦労が実り4分の3を超える区分所有者の同意・委任状を集めることに成功したことは、鹿島側の山口弁護士にとっては予想外のことだったかもしれない。こうして令和元年8月31日、無事に和解が成立したものの、鹿島建設が和解金を速やかに支払うことはなく、支払いが実行されたのは期限最終日である9月30日だった。最後の最後まで見苦しい姿を晒した日本を代表するゼネコン鹿島建設には、誠に嘆かわしい印象しか残らなかったというのが原告であった区分所有者たちの意見である。

 以前、当サイトでも報じた鹿島建設の中村満義会長の日本建設業連合会会長としてのコメント(「殺人マンション裁判の顛末~毀損された強度・資産価値を適正な状態に戻せ!(9)」)が空々しく感じられる。

 この鹿島建設の会長のコメントと、久留米市の欠陥マンションにおける鹿島建設の不誠実極まる対応、どちらが本物の鹿島建設なのか?この裁判を取材してきた限りにおいては、鹿島建設の中村会長のコメントは偽善的なものに過ぎず、久留米のマンションの裁判において、弱者である区分所有者に示した冷酷な対応こそが、本物の鹿島建設の姿であると感じているのは筆者だけではないと思う。

 このマンションの裁判について鹿島建設の関係者に意見を求めたところ、「会社は常時何件もの裁判を抱えている。久留米のマンションの裁判もそのうちの1つに過ぎない。裁判が長期化して経済的体力のない住民側が自滅すれば、それに越したことはないと考えているのではないか?」と語ってくれた。これが巨大企業の本質なのだろう。そして、鹿島建設側の弁護士も同様である。福岡県弁護士会会長という要職に就いた山口弁護士は、その地位を大いに利用するであろうことは容易に想像できる。私たち市民は、福岡県弁護士会・山口会長の今後の言動に注目すべきである。

(了)
【桑野 健介】

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