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2019年12月10日 15:03

【凡学一生のやさしい法律学】さくら疑獄事件(7)

 筆者は「桜を見る会」の不適切者招待について、安倍晋三首相の刑事責任は問えないとしましたが、読者から公職選挙法の供応接待罪(同法221条1項)に当たるのではないかとのご指摘ご疑念をいただきましたので、より詳細にご説明します。

 まず、実質的関係においては議員が選挙人を供応接待した場合と同一の利益関係にあることはご指摘の通りですが、この実質的関係をつくり出した法律関係を正確に検討すれば、刑事責任を問うことは不可能であることがわかります。それを一言でいえば、日本の法律は性善説で表現されており、性悪人には極めて都合よく、法網にかからない構造であることです。

 まず、安倍首相は総理大臣の資格で「桜を見る会」の参加者を招待したもので、議員の身分は総理大臣の憲法上の要件から当然に付随したに過ぎません。従って、内容の実質が、選挙民を招待して供応接待しても、何ら違法行為とはいえません。問題は、安倍首相が不適切者と知って招待した場合には犯罪行為となりますが、それを巧妙にくぐり抜ける仕組みが「推薦制度」です。

 つまり、安倍首相の招待者決定過程は、一定の推薦権者による推薦に基づくもので、その被推薦者が不適切者であるかどうかは選定担当の内閣府担当者には判断できない仕組みとなっていることです。この仕組みであれば菅義偉官房長官の推薦者のなかにも同様な不適切者がいれば菅氏も同罪の被疑者となります。推薦した国会議員全員が同罪の被疑者となりえます。

 しかし、当然、推薦権者らは、被推薦者には「社会的功労者としての適格性・該当性があったと思う」と弁解するに決まっています。つまり、すべての被疑者には招待者を決定する権限はありませんから、供応接待罪の実行行為者とはなり得ない仕組みです。

 招待したのは安倍首相ですが、その招待は相当の推薦権者の推薦に基づくものですから、これまた、違法行為・犯罪行為の実行行為と見ることはできません。みんな、阿吽の呼吸で不適切行為を組織的にやっているのです。「呑舟の大魚は法網にかからず」を安倍自民党政権は実行しています。

 ただ、推薦権者に安倍首相自身である総理大臣の「枠」があることが問題ですが、安倍首相は実際の推薦人の選定は安倍事務所のスタッフに委ねていると主張していますから、安倍首相が自ら不適切者の選定に関わった証拠がない限り、同罪の実行行為とはなりえません。

 同罪は議員および候補者ならびに支援者が擬律される身分犯ですから、仮に支援者が被疑者となり得ても、安倍首相自身は被疑者になりません。ここもまた、法律の抜け穴となっています。

 ただ、極めて重大な発言として、安倍首相は、事務所員の選定作業において、相談を受け、それに応じたことはある旨証言しており、その具体的な内容が、不適切者の案件であり、それが推薦者となった場合に限り、安倍首相は被疑者となります。それらの事実が判明しないように、推薦者名簿、招待者名簿を違法に破棄したもので、実際の招待者のなかに不適切者が存在する限り、犯罪の証拠を隠滅した行為ですから、名簿破棄の責任者たる公務員は間違いなく、公文書毀棄罪と証憑隠滅罪の被疑者です。

 行政文書の保存期間に1年未満という規定は存在せず、名簿の破棄は明らかに犯罪であるのに、野党議員は誰もこれを指摘しません。よほど、基本的な法律知識が欠けていると見るほかありません。

 被供応者が実際に飲食をしたかどうかは法律上は問題にならないと考えられます。それは供応の申込みも犯罪構成要件としているからです。正確な条文上の文言は、「物品その他の財産上の利益・・の申込若しくは約束」です。案内状に飲食の準備がある旨の記述があれば、それは約束に当たります。また、四囲の事情から、被供応者が供応の事実を事前に認識している事情にあれば、それで十分です。宿泊したホテルから会場に直行しており、昼食の接待をうけることは事前の了解とみれますから、これで十分です。

 以上のことは、現実に飲食していない不適切招待者についても、同罪が成立するという意味となります。

(つづく)

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