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2019年12月25日 07:00

貧乏脱しても財布のヒモは緩まず~財務データから見たカープの経営哲学(後)

財務データなどからわかる経営ビジョン

 では、業績好調が続くカープは今後、どこに向かおうとしているのか。それについては、この10年に6度の日本一に輝き、「球界の新盟主」ともいわれる福岡ソフトバンクホークスと比較検証すると、自ずと浮かび上がってくる。ホークスはカープと同じく地域重視の球団経営をしながら、人気、実力に加え、資金力もあり、チームカラーが好対照だからだ。

 たとえば、決算公告を基に両球団の直近3年の業績を比較しただけでも、両球団の経営の特徴が浮かび上がってくる。

[ホークスの2017年2月期]
売上高278億2,800万円
純利益19億8,300万円

[カープの2016年2月期]
売上高182億191万円
純利益14億4,619万円


[ホークスの2018年2月期]
売上高304億9,100万円
純利益18億6,700万円

[カープの2017年12月期]
売上高188億681万円
純利益12億9,705万円


[ホークスの2019年2月期]
売上高317億7,400万円
純利益2億6,000万円

[カープの2018年12月期]
売上高189億4,230万円
純利益9億3,020万円

 見ておわかりの通り、売上高は毎年、ホークスがカープより100億円前後多いのに、両球団の純利益は数億円しか差がなかったり、むしろカープがホークスより純利益が上回っていたりする。つまり、それだけホークスは多くの経費を計上し、カープは経費の節減に努めているわけだ。

https://www.data-max.co.jp/files/article/20191223-carp-02.jpg
※クリックで拡大

 また、前掲の【表Ⅱ】にもそんな両球団の特徴がよく現れている。つまり、売上高はホークスがカープより毎年100億円前後多いにもかかわらず、直近の決算公告で示された利益剰余金はホークスが82億7,400万円、カープは81億8,100万円で、その差は1億円に満たない。ホークスが稼げば稼ぐだけ使うのに対し、カープは稼いだ金を貯め込んでいるわけである。

 では、ホークスはどんなことにお金を使っているのか。

 まず、前掲の【表Ⅳ】に示されている通り、ホークスは現在、選手の年俸総額が12球団中1位である。そして実をいうと、ホークスの年俸総額が12球団中1位になったのは2016年から4年連続だ。チームはこの10年の間に6度も日本一になっているが、この戦績に見合った年俸が選手たちに支払われているわけだ。

 また、再び【表Ⅱ】を見ていただきたいのだが、ホークスの1,080億300万円という総資産額は、180億6,800万円で2位の阪神以下9球団を大きく引き離して断トツとなっている。これは本拠地の福岡ヤフオクドーム(2020年より福岡PayPayドームに名称変更)を所有しているためだ。

 ホークス球団の公式発表によると、その取得金額は870億円。先ほどはカープがこの10年余りの間に、財務状況が好転するとともに固定資産を47億円余り増加させていたことを紹介したが、両球団はお金の使い方のスケールがまったく違うと言っていい。

 このほか、両球団はファンサービスのありようも大きく異なっている。

 プロ野球では現在、観客へのユニフォームの無料配布がイベントの1つとして定着したが、これを2004年に最初にやったのはダイエー時代のホークスである。一方、これを12球団で唯一行っていないのがカープなのだ。

 また、現在はプロ野球でもチアガールがお馴染みになったが、ホークスも「ハニーズ」という公式チアリーディングチームを有している。一方、カープは12球団で唯一、チアリーディングチームをもっていない。カープはその代わり、ホームランを打ったカープの選手にホームラン人形を手渡すホームランガールがいるほか、5回終了時のイベントタイムにはスタンドでビールの売り子に踊らせるという独自路線を突き進んでいる。

 つまり、ホークスがファンを喜ばせるためなら、いくらでもお金を使うのに対し、カープはできるだけお金を使わず、ファンをもてなすことを目指しているわけだ。

 では、このような両球団の差はどこから生まれるのか。それは、経営ビジョンの違いに起因するのだと思われる。

 ホークスの孫正義オーナーは2004年、ダイエーから球団を買収した当初より「福岡から世界一のチームを目指す」と公言してきた。一方、カープの松田オーナーが常々言っているのが「広島にカープを残すのが使命」ということだ。

 つまり、ホークスは福岡から世界一を目指しているので、稼いだお金をどんどん使って球団をスケールアップさせている。これに対し、カープは広島で存続することが至上命令なので、お金を貯め込んでいるわけだ。

 カープは、松田オーナーの一族が株式の大部分を所有する同族会社のため、チームが低迷していた時期はファンの間で「オーナー一族は球団を私物化している」という類いの批判が飛び交っていた。今もそういう批判がないわけではないが、事実関係を見る限り、「広島にカープを残すことが使命」というオーナーの言葉は本心から発せられたものなのだろう。

(了)
【片岡 健】

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