武雄アジア大学への公金13億円支援に「待った!」 市民団体が署名活動開始

 現在、佐賀県武雄市で進められている(学)旭学園による武雄アジア大学の開学に関わって、武雄市が13億円もの支援予算を決定している件について、撤回を求める署名活動が市民団体によって始められた。

 署名発信者は『武雄の未来を守る会』(代表世話人:野田尚之氏)。以下のページで署名活動を行っている。

武雄アジア大学に支出する13億円を、武雄市民及び武雄市内で働く人たち、学ぶ人たちを大切にする政策に充ててください。

 本件活動の主旨について、同会事務局を務める近藤憲治氏に話を聞いた。

 ──今回の署名の主旨は?

 近藤憲治氏(以下、近藤) 本署名は、武雄市が「武雄アジア大学」構想に対して支援を予定している13億円の支出について、市民的視点から撤回を求めるものです。教育・福祉・文化・子育てなど、地域の暮らしを支える分野に対して優先的に予算配分すべきではないか、そうした疑問を共有する市民の声を、署名というかたちで届けたいと考えています。

 ──小松政・武雄市長ならびに武雄市の姿勢についてどう思うか。

 近藤 現時点で市長および市当局から、この13億円支出に関する政策的な根拠の説明や成果指標の提示が乏しく、また文科省への申請以降、市民説明会や意見交換の場も設けられていない状況に懸念を抱いています。とくに、財政的に厳しい武雄市が長期的な視野に立った政策的な優先順位として、本当にこの大学設置が妥当なのか、疑問を感じる市民は少なくありません。

 ──当該大学は現在、文科省による設置認可の審査中だが、旭学園は認可を見込んで校舎建設を進めている。

 近藤 すでに建設が進められていますが、肝心の武雄アジア大学の教育内容や、地域との関係性、市民の理解・納得を得るプロセスが後回しにされていると感じています。税金を使う以上、こうした手続き的な正当性は極めて重要だと考えます。

 ──なぜ今、署名活動を行うのか。

 近藤 大学設置の認可は文部科学省による最終判断を待つ段階にありますが、それと武雄市の財政支出判断は別の問題です。認可に至らない場合は校舎建物による市有地の不法占拠という不利益を市民は被りますし、また、たとえ認可されたとしても、13億円という巨額の公費支出が「住民の理解と合意を得てなされたものかどうか」は、今からでも問い直す必要があると考えています。市民の間では、「いつの間にか決まっていた」という声も多く聞かれ、このまま黙って見過ごすべきではないと考えています。

 一方、武雄市文化会館大ホールについて、これまで維持存続に向けて議論が重ねられてきましたが、武雄市は「市にお金がない」ことを理由に突如解体方針を示しました。これに対して、市民からは「大学には13億円出せるのに、大ホールは財源不足を理由に解体するというのはおかしいのではないか。税金の使い方が間違っている」との声も多く聞かれます。

 今回の署名活動を通じて税金の使途を見直す声を広げていこうという狙いもあります。

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【寺村朋輝】

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