2024年03月29日( 金 )

韓国で11社目のユニコーン企業が誕生(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 巨大な市場で大きく成長できるポテンシャルがあると評価できるので、ベンチャーキャピタルも企業の将来に巨額の投資ができるわけだ。一方、ユニコーン企業が少ない国には、それなりの事情がある。

 米国や中国でも皆が成功しているわけではなく、多くの人が失敗をするが、失敗を恐れずにトライしようと思えるくらいの魅力があるわけだ。しかし、日本やヨーロッパのような安定した社会では、成功で得られる結果と、失敗で経験する結果を天秤にかけるようになり、どうしても安定志向になってしまうのではないだろうか。一方、米国や中国は、現状がそれほど満足できるような状態ではないので、新しいことに挑戦するようになるのだろう。

 日本にはユニコーン企業が3社しか存在しない。日本のこうした現状に対し、「日本の将来を映す鏡だ」と憂慮する声がある反面、ユニコーン企業が少ないからといって、何も問題にならないので、気にする必要がないという意見もある。日本はコストが高く、起業しても大きく成功するのが、なかなか難しいような気がする。そのような背景もあり、日本のベンチャーキャピタルのベンチャー企業への投資額は、米国や中国に比べて少額で、この金額の差がユニコーン企業数の差に直結しているのかもしれない。

 日本の若者は安定志向が強く、優秀な人材はまず大手企業を希望するので、中小企業にはなかなか優秀な人材が集まらない。前例や大手企業との取引実績などを大事にする価値観が変わらない限り、日本におけるユニコーン企業の誕生は、それほど期待できないような気がする。

 韓国の状況はどうだろうか。実は韓国人は起業して新しいことに挑戦するのが好きだが、韓国は市場規模が小さく、それに、各種の規制が多く、ベンチャー企業が育つような土壌ではない。ベンチャー企業は新しい分野で起業をし、社会を変えていくことになるが、配車アプリ、宿泊アプリ、遠隔医療、フィンテック分野などでは、既存勢力の抵抗で規制に阻まれ、韓国では事業の展開ができない状況である。しかし、市場規模が小さいだけに、韓国のベンチャー企業は最初から世界の市場をターゲットにし、その結果、グローバルベンチャーキャビタルの資金を受けることに成功し、ユニコーン企業となっている。

 昨年12月に11番目のユニコーン企業になったのが、バイオ企業としては初めてとなるエイプロゼンという会社である。エイプロゼンはバイオシミラー企業で、第2のセルトリオンを目指す企業だ。 韓国の中小企業庁は、ユニコーン企業の数はベンチャー強国のバロメーターとなるので、ユニコーン企業の育成に力を入れたいと強調している。

 最後にベンチャー企業の育成にはどのような課題があるのだろうか。韓国政府の企業への支援は成長段階別ではなく、初期に集中しているので、それを是正する必要があるとの指摘がある。支援が初期に偏っているため、事業で一度失敗すると、なかなか立ち直れないのが現状のようだ。それだけではなく、各種規制を取り払うことによって、もっと競争を促し、経済を活性化させると、現在より倍以上のユニコーン企業が誕生する可能性があると言われている。世界的に通用するユニコーン企業がもっと多く誕生することを祈ってやまない。

(了)

(前)

関連記事