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2020年02月11日 07:00

「リゾート再生請負人」加森観光・加森公人会長の挫折~なぜカジノ誘致に勝負を賭けたのか?(後)

 「リゾート再生請負人」。カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で、贈賄容疑で在宅起訴された加森観光(札幌市)の加森公人会長(76)は、こう評される。 

 九州では大分県別府市の巨大ホテル「別府杉乃井ホテル」や北九州市のテーマパーク「スペースワールド」を再生させた。カジノ誘致に勝負を賭けるまでの加森氏の足跡をたどる。

固定資産税を払わない奇策で収益を上げる

 1998年、仙台の不動産会社、関兵精麦(せきひょう・せいばく)が開発を進めた北海道占冠(しむかっぷ)村のアルファリゾート・トマムの運営会社が1,000億円の負債を抱えて倒産した。そこで、加森氏は占冠村に5億円を寄付し、その資金で村が破綻した施設を買収。加森観光は、村から施設を15年間に渡り、無償貸与を受けた。

 加森氏が運営を引き受けたことで、雇用は確保された。運営だけを担うから固定資産税を払わなくてすみ、収益はしっかり手にした。加森氏は、2005年までトマムの運営に携わった。

 1999年、セゾングループ傘下の西洋環境開発(2000年7月特別清算)がフランスの地中海クラブと提携し、開発した北海道新得町(しんとくちょう)のサホロリゾートの運営を受託した。

 固定資産税相当分として新得町が加森観光に毎年5,000万円を10年間、雇用対策奨励金として支払う。それで、町民400人の雇用が守られるうえに、サホロリゾートによる税金や食材の購入で毎年6億円の効果を町の財政に与えた。

加森氏が経営に失敗した岩手ホテルアンドリゾート

 2003年にはリクルート創業者、江副浩正氏が心血を注いだ岩手県の安比高原スキー場と、盛岡グランドホテルを経営する岩手ホテルアンドリゾートを手に入れた。リクルートがグループの借入金を減少させるために、加森観光に売却したのである。

 2016年、加森観光はルスツリゾートに経営資源を集中させるとして、アジアゲートホールディングスと海外投資家に、岩手ホテルアンドリゾートの全株式を売却した。

 同社は過去3期赤字。加森氏は経営に失敗した。なぜか。固定資産税を払わなくすむように、運営だけ引き受けるというのが、加森氏の再生手法だが、施設も含めてすべて買収したからだ。江副氏に代わって、一流スキー場と評判の安比高原スキー場のオーナーになりたかったのかもしれない。

 岩手ホテルアンドリゾートは欲が出て丸抱えしたが、加森氏は買収にカネをかけない。従業員も解雇しない、固定資産税も払わない。その手法でリゾートを再生してきた。

 国土交通省は観光政策の一環として観光カリスマを選んでいるが、公人氏は多くの破綻した観光地を再生させたとして、2014年、観光カリスマに選定された。どのリゾート再生も雇用の継続を前提としたことが評価された。

杉乃井ホテル、スペースワールドの再生を引き受ける

 リゾートの施設の所有は行政および金融機関とし、加森観光は運営について携わり、収益を得て投資リスクを回避するという手法を確立した。破綻したリゾート施設の営業再開に、加森観光は積極的に関わっていき、北海道にとどまらず、本州や九州でも活躍する。

 大分県別府市の大型温泉リゾート、杉乃井ホテルは2001年に大分地裁に民事再生法適用を申請した。再建にあたっては、所有と運営の分離が図られた。オリックスグループが施設を買収し、加森観光が運営を引き受け翌年から再建を進めた。

 2004年頃から韓国や台湾の団体客を積極的に誘致。これで集客力は抜群に高まった。観光事業の国際化のビジネスモデルといわれた。2008年に、加森観光は杉乃井ホテルの運営会社を、施設を保有するオリックス不動産に譲渡。所有と運営はオリックスグループに一元化された。

 杉乃井ホテルの受託で知名度を高めた加森観光は2005年に、新日本製鉄(現・日本製鉄)系の宇宙テーマパーク、スペースワールド(北九州市)の再生を引き受けた。新日鉄は遊休地の跡地利用としてスペースワールドを立ち上げたが、いかんせん「鉄屋の商法」。運営会社が民事再生法を申請して破綻したため、加森観光に営業権を譲渡して再生を託した。

 ユニークな企画で集客が安定し、16年3月期は過去最高益を達成したが、2017年末に閉園した。地主の新日鉄住金と加森観光の間で賃貸契約の交渉が決裂したからだ。新日鉄としては、利益が出ているのに、いつまでも土地をタダで使わせるわけにはいかない。しかし、地代を負担せずに、運営だけを請け負うのが加森氏の再生手法なので、スペースワールドの運営から手を引いた。

勝負を賭けたカジノの誘致が墓穴を掘る

 加森氏は、数多くのリゾート地のスキー場と宿泊施設を再生させ「リゾート再生請負人」という異名がついたが、請負人だけにとどまるつもりはなかった。

 事業家としての起点は、1981年に加森観光を設立し、ルスツ高原スキー場をオープンしたこと。スキー場と宿泊施設のみであったルスツを、ホテル、遊園地、ゴルフ場をもつ通年型のリゾートへと変身させた。

 ルスツリゾートは、加森氏の「1丁目1番地」であり、加森観光の本拠地である。だが、ルスツの代名詞となるような施設がない。その地に、加森城の”天守閣”をつくりたかったのではないか。ルスツリゾートのランドマークとするべく、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)誘致に勝負を賭けた理由だろう。IR施設という1枚のパーツをはめ込むことで、カジノを中核に集客力が高まり、通年型リゾートが完成するというシナリオだ。

 中国企業「500ドットコム」と組んで衆院議員の秋元司容疑者(収賄罪で起訴)に働きかけたことにより、贈賄罪に問われた。組んだ相手が悪かったのか、働きかけた議員が曲者すぎたのか。人生は残り少ない。自分が目の黒いうちに事業家人生の集大成にしたいという加森公人氏の焦りが、墓穴を掘ってしまったのかもしれない。

(了)
【森村 和男】

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