2024年03月29日( 金 )

「コインランドリー業界」と「宮崎の地域振興」に大きな転換点を引き起こす2020年(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

WASHハウス(株) 代表取締役社長 児玉 康孝 氏

 企業活動では、理念を現実のビジネスにどのように落とし込み、達成させていけるかという点に経営者の手腕があらわれる。児玉社長が創業当初から、コインランドリー事業の先に見据えてきた構想の現実化がいよいよ近付いてきた。地元宮崎の地域振興にも範囲を広げ、さまざまな仕掛けを施してきた活動が、業界に大きな転換点を引き起こす。

(聞き手:弊社代表取締役社長・児玉 直)

 ――この機会を生かして、中国でどのような活動を考えていますか。

福岡那珂4丁目店

 児玉 今回設立した合弁会社は、弊社がコインランドリー「WASHハウス」の展開を始めた当初からのテーマである、付加価値を生み、利用料を無料にすることを可能にする洗濯機を開発する会社です。これにより、長年開発を進めてきた広告機能をもつ独自の洗濯機が、2020年末までには製品化できる見込みです。

 青島市は近年、陸路、海路、空路と整備を進め、あらゆる交通のハブ化を進めており、年内にはハブ空港も完成するようです。そのため宮崎・青島の両市は交流のためのインフラとして直行便を就航させる構想があります。

 先頃の交流では、両市の旅行会社の方々も参加していただいています。そして観光の次には、交換留学などの本格的な文化交流が始まっていって欲しいと思います。このような流れのなかで弊社も何らかのかたちで貢献できればと考えています。そして本当に青島市の人々が宮崎の物や文化に憧れて、日本といえば「宮崎」をイメージするような状況をつくることができれば、ビジネス面でも人や文化の面でも、本物の交流になるだろうと考えています。

 昨年11月の宮崎市からの30名以上の訪問団は、これらの目的でそれぞれがテーマをもって、皆さまと手を繋いだことで成立したものです。

 ――自社のことだけでなく、地域をそこまで売り込んでいこうという児玉社長の原動力は何ですか。

 児玉 やはり地元宮崎が、海外との交流を通じて活気を取り戻してほしいという想いですね。私は事業を通じて世の中にとって必要な会社になっていきたいと考えていて、コインランドリー事業はその手段です。「洗濯」は地域社会や災害復興支援にも貢献できますし、こうして地域とつながり、関係性が深くなることは、お互いのビジネス基盤を強固にすることにもつながりますので、地域との連携は非常に重要なものと考えています。

中国での事業展開が動き始める

店内イメージ
店内イメージ

 児玉 我が社のテーマである、洗濯機の利用料を無料にすることを目標とした、独自の洗濯機の開発の構想を私はずっともっていました。思い通りの機器をなかなか造れずに困っていた時、ある機会に青島市長にその状況をお話ししたところ、「中国で最高の技術者たちを紹介するから青島市にきてやらないか」と言われ、これがきっかけで話が大きく動き始めることになりました。

 この過程で最大のポイントは、実は私が数年前から使っているWeChatでした。私は中国では名刺交換ではなくWeChatのID交換をしています。これは中国を中心に10億人以上のユーザーをもつメッセージアプリで、中国では行政の方やご年配の方なども、多くの人がWeChatを利用しています。

 日本のLINEのようなものですが、WeChatは日本語で入力すると、そのまま向こうの言葉に翻訳されるので、本当にダイレクトに話しているかのようです。そうすると性格もみえてきて、お互いに言葉の壁がまったくないような感覚でコミュニケーションできます。中国の方は個人で直接話したことは責任をもって動いてくれますので、このツールで個人的につながりをもてたのが大きかったと思います。

 ――海外では店舗展開も計画されていますか。

 児玉 青島市に設立した合弁会社は洗濯機の技術開発を行う会社ですが、同じ山東省の済南市からは、コインランドリーの店舗展開もやって欲しいと要望を受けています。合弁相手の小鴨集団は済南市資本の会社で本社も済南市にあり、そのご縁で済南市長からそういったご要望をいただきました。現時点では中国ではコインランドリーを利用する文化がまだ根付いてないので、そうそうには売上は上がらないと考えていますが、済南市のバックアップのおかげで、私たちは有利に店舗を展開できるのではないかと考えています。

 ――なぜ中国では、コインランドリーが文化として根付いてないのでしょうか。

 児玉 生活環境の違いだと思います。しかし中国でも生活水準が上がり、共働きも増えてきて、清潔な環境を求め始めており、中国でのコインランドリーを利用する文化はこれから広がっていきます。生活水準とコインランドリーの利用率の高さは比例し、ニューヨークの利用率は人口の約7割と言われています。コインランドリーは非常に将来性の高い事業です。

(つづく)
【文・構成:吉田 誠】

(前)
(後)

関連記事