2024年03月19日( 火 )

コンビニ業界大激変時代~月刊コンビニ 編集委員 梅澤 聡 氏(6)

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 コンビニ深夜休業の是非。各方面からさまざまな“論客”が参戦してメディアを賑わせた。誰もが毎日のように利用するコンビニ。1日1店舗の利用客数を800~1,000人、全店舗数を5万8,000とすると、毎日5,000万人がコンビニを訪れている計算になる。国民の生活の一部に組み込まれたコンビニが今、内部で深刻な問題を抱えている。一連のメディア報道が人々に不安を与えたことはたしかだろう。コンビニ業界は今後どこへ向かうのか。

セブン-イレブンのセルフレジ実験
セブン-イレブンのセルフレジ実験

 セブン-イレブンは、従業員の作業時間と作業量の削減を目的とした省人化の実験を19年7月「セブン-イレブン町田玉川学園5丁目店」(東京・町田市)でスタート、同年12月、本部近くの「麹町駅前店」(東京・千代田区)でも実験を加速させている。両店でとくに目を引くのがセルフレジ。独立した場所に設置して、どの程度の人時数削減(省人化)が図れるのか検証している。

 作業として捉えたときに、レジに関わる時間が全作業のなかで最も長く3分の1を占めるとセブンは試算している。そこで、レジカウンター上には、フルセルフに切り替えが可能なレジを設置した。このレジは、通常時にはフルセルフレジとして運用し、状況に応じてスキャンと袋詰めを従業員が実施するセミセルフレジに切り替えることとした。また、レジカウンターとは別の壁に面した場所にフルセルフレジを設置している。

 JR東日本リテールネットは19年7月、JR武蔵境駅改札口の外に、本格的“無人”店舗としては「日本初」となる「NewDays 武蔵境 nonowa」店をオープンした。セルフレジ2台を設置して「売り場」に人員は配置しない(バックヤードに1人配置)。同店は午前7時から午後10時まで不特定多数のお客さまに向けて営業する本格的な(売り場)無人店舗である。

 同店の売場無人化を実現した条件は大きくは6つある。第1にキャッシュレスのセルフレジのみで対応(現金を扱わない)。現金を扱わないため、レジの管理をほとんど必要としない。セルフ決済の方法がわからない人は、バックヤードの従業員を呼び出すことができる。

 第2に同じ施設(武蔵境駅)内に同じ経営の店舗がある。立地するJR武蔵境駅には同じニューデイズの店舗がすでに2店舗出店している。荷受けや品出し、フェースアップ、清掃業務などを行う店舗従業員は、駅施設の他の2店舗から交替で配置することができる。店長も同駅の別の店舗と兼任ができ、売り場管理がしやすい。

 第3に免許品、収納代行、サービス品の取り扱いが不可。酒、たばこやサービスが必要であれば、ニューデイズの他の店舗で対応が可能なので、割り切ることができる。第4に交通系ICカードの所有率が高い場所での営業。交通系ICカード専用改札口の外なので通行客のほとんどがキャッシュレスに対応できる。第5に買上点数が少ない。駅施設のコンビニは買上点数が少なく、袋詰めを必要としないお客が多い。セルフレジであっても時間のロスが少ない。

 第6に小型店舗のため売り場管理にかかる人時数が少ない。駅施設のコンビニは店前通行量が多く、同時にお客の用途が限られるため、小型店舗でも成立できる。そのため、売り場の管理がしやすい。

 こうした条件が整えば、レジにかける人時をゼロにして、損益分岐点を引き下げることができる。結果、それまで見落とされてきた立地にも出店の可能性が拡大できるのだ。

 店舗オペレーションの負荷軽減に対しては、AIの発注予測や「AmazonGo」のような画像認証など、最先端技術を用いた実験が、各コンビニチェーンのもとで進行している。一番の課題は顧客接点であるコンビニ加盟店が将来にわたって持続できるのかということだ。日本全国に張りめぐらされたコンビニ網はもはや日本人にとってなくてはならない生活の一部となっている。さまざまな業界の知見を活用しながら、コンビニビジネスの再構築を図るべきところまできている。

(了)

<プロフィール>
梅澤 聡(うめざわ・さとし)

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中に『東京学生映画祭』を企画・開催(映画祭は継続中)。1989年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と飲食店巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。

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