2024年03月19日( 火 )

具体的な審理に踏み込まず 豊洲市場裁判が結審!

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実質1回目の審理 わずか数分で結審。結論ありきの裁判

 豊洲市場の仲卸業者5社が原告として東京都に対し、豊洲市場の建築基準法違反の是正を求めていた裁判は、2月20日(木)午前11時より、東京地方裁判所民事51部(清水久美子裁判長)419号法廷において、口頭弁論が行われた。

 前回、清水裁判長が強引に結審しようとしたことから 原告側が「裁判官忌避」を申し立てたため、裁判は1年ぶりの再開。本日の口頭弁論は、忌避を申し立てられた裁判官(清水久美子裁判長)と同じ裁判長の下で裁判が行われた。

 原告側の武内更一弁護士は、豊洲市場6街区に所在する「水産仲卸売場棟」(本件裁判の対象建築物)の南側に隣接する7街区「水産卸売場棟」1階南西部の「活魚の荷捌きスペース」の壁面に異状が生じていることが判明したと主張し、7街区「水産卸売場棟」の異常を報じた日刊ゲンダイ2020年1月15日号の記事を引用した。日刊ゲンダイの記事を要約すると下記の通りである。

「C-33の柱の左側の壁は奥に引っ込んでいる」

「正面の壁の下部は大きく前後にズレ、表面に張られたパネル2枚にも大きな切れ目が生じている」

「左奥の壁の下部には幅30㎝ほどの裂け目があり、青いスポンジ状の建築部材や黒い構造物がムキ出し」

「発砲スチロールのカスや古びた木材片が落下し、壁がズレ、随分と時間が経っていることがうかがえる。」

「壁に車両などが衝突した形跡は見られない。」

 武内弁護士は「南側に隣接する7街区の水産卸売場棟も同じ日建設計が担当したため、同じことが本件6街区の建物でも起こり得る。1階柱脚の鉄量が規準より不足していることは被告の東京都自身が認めている(東京都は41%の鉄量不足を認めている)

 このままでは倒壊の危険があるので、裁判所が被告東京都をして本件建築物の所有者である東京都の知事に対し、原告らが指摘した事実について建築基準法18条23項に基づき同法違反の事実を通知させ、必要な措置をとるべきことを要請させるならば、東京都知事としては、「要請」された措置を執らざるを得なくなることが極めて高い確度をもって予測される。よって、本件通知および要請について処分性を認めるべき」と主張した。

 しかし、清水裁判長は原告の主張に耳を貸さないばかりか、建築基準法令違反の実質的な審理に踏み込むことなく、弁論終結=結審を宣言し、3カ月後の5月19日(火)13時30分より判決が言い渡されることとなった。

 閉廷の際、逃げるように法廷を退席する清水裁判長に対し、傍聴席からは監置されてもおかしくないくらいの抗議の声が挙がった。

 ※「監置」:裁判の威信と法廷等の秩序を守るため留置場に留置すること

 法廷において裁判長を弾劾した行為は法廷の秩序を乱したかもしれないが、弱者たる原告仲卸業者の心情をよく知る支援者からすれば、裁判所の暴挙を許せなかったものと推察される。

 日刊ゲンダイが報じた7街区「水産卸売場棟」はマグロを解体する場所であるが、今後、店舗で亀裂が発生すれば、店舗での業務に支障を来たすことになる。現在も、トイレに入れば常に縦揺れを感じ、建物が振動していることがわかるという。

この振動について質問を受けた東京都は「振動するようにつくった」と答え、市場関係者の怒りを買っているという。また、舗装した横断歩道のつなぎ目が大きく歪み、「何が起きているのか不安だ」と市場関係者は語っている。

 この裁判は、豊洲市場の設計を担当した日建設計が、構造計算における重要な係数を偽装するという建築基準法違反を指摘したものである。この指摘について、裁判所は一切踏み込んでいない。それは、建築基準法違反に踏み込むことが東京都や日建設計にとって好ましくないからである。

 以前NetIBNews編集部が日建設計や東京都に質問書を送付した際、日建設計は「市場問題プロジェクトチームで確認済み」と結論ありきの会議に過ぎないプロジェクトチームを逃げ場とした。

 東京都は「東京都の建築確認においては建築基準法以外の法令規準はチェックしない」と詭弁を弄した。この点は民間の建築確認検査機関に問い合わせたところ「建築基準法以外の法令規準も当然チェックする」との回答を得ており、建築確認の実態はこの民間検査機関の回答通りである。

 建築基準法では「政令で定める技術的基準に適合すること」などと示しているが、具体的な基準・方法として、施行令、告示、日本建築学会規準、「建築物の構造関係技術基準解説書」などに定められた方法により、安全を確認しなければならない。これらの方法により行われていない構造計算は、建築基準法令に不適合なのである。

 東京都が日建設計を擁護していることはこれまでにも報じてきた。豊洲市場をめぐる裁判においては、東京地裁までもが東京都に忖度することも明らかになった。公正中立であるべき司法が行政に忖度するようであれば憲法に定める三権分立の崩壊である。

 東京都の説明のように建築基準法以外の法令規準を遵守しなくても良いのであれば、各種法令規準を遵守して設計された建築物は過剰な設計となっており、必要以上の建築コストが掛けられていることになる。言い換えれば、建築主は不当な建築コストの負担を強いられているのである。東京都は、民間の建築物については建築主に不当な建築コストを負担させ、東京都所有の建築物については法令規準に適合していない設計により建設を行っている。

 支離滅裂な東京都や日建設計の主張がまかり通り民間の建築主に不当な建築費を負担させるのであれば、建築確認制度を撤廃すべきである。

 東京都所有の建築物でも民間の建築物であっても、地震の被害は等しくおよぶ。重要な公共建築物は民間の建築物よりも高い耐震性が求められており、豊洲市場のような公設市場は基準の1.25倍の耐震強度をもつよう東京都条例で定められている。これほど重要な施設であるにもかかわらず、豊洲市場の建物は法令違反の建物となっているのである。

 裁判審理における東京地裁の東京都への忖度ぶりを見る限り、5月の判決は東京都に忖度した結果となることが予想される。そうなれば原告は控訴するであろう。控訴を受けた東京高等裁判所がどのような判断を下すのか?高裁までも東京都に忖度するのか?まずは、5月19日の東京地裁の判決に注目したい。

【桑野 健介】

▼関連リンク
豊洲市場における設計偽装 政商・日建設計

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