2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

『脊振の自然に魅せられて』「脊振の山に春の訪れ」

 福岡管区気象台の発表によると、この冬の平均気温は統計開始以降、最も高かったそうだ。福岡市のこの冬の平均気温は9.8度、昨季の暖冬を上回り、平均より1.9度〜2.4度高かったという。今年は山の春の訪れが早いのではないかと思っていた矢先の気象台による発表である。

 登山アプリのヤマップに登山者の活動日記がある。脊振山を検索すると気にしていた山野草や樹木の花が咲いていると記された活動日記があった。

 早春に咲く花、ユリ科のホソバナコバイモと灌木のマンサクの花である。

 私のパソコンで写真ファイルのデータを見ると、例年より開花が1〜2週間は早い。行ってみよう。

 3月1日(日)、前日の雨もやみ、曇り空だったが出かけることにした。雲が厚いが雨は降らないだろう。

 撮影に出かけるときはカメラ用ザックを使用するが、この日は登山用ザックにミラーレスカメラ、マクロの交換レンズ2本と最近手に入れた小型三脚を準備した。

 いつもは会員を誘うが、撮影もするので1人での山歩きである。1人だと時間を気にせず撮影に集中できる。

 雨上がりなので道標も濡れていて磨きやすいため、道標磨きも兼ねての山歩きである。

 小型道標の両サイドに黄色いペンキを塗り、支柱タイプの道標をタワシで磨きながら、ホソバナコバイモの咲く場所へと向かう。

 はたして、花は咲いているのだろうか。腰を屈め四方に目をやる。この場所には例年、登山道の両端にホソバナコバイモがたくさん咲き、登山者を出迎えてくれる。

 しばらくして、この花の群生を見つけた。雨上がりなので雨露をいっぱい含んで輝く背丈15㎝ほどのホソバナコバイモたちが周辺に咲き誇っていた。

 生き生きと、みずみずしいホソバナコバイモたちである。

雨露を含んで咲く「ホソバナコバイモ」 2020年3月1日撮影
雨露を含んで咲く「ホソバナコバイモ」 2020年3月1日撮影

 イメージ通りの姿だった。天気の良い日はこうした光景は見られない。自然が生み出すすばらしい光景が魅力的である。

 ザックのチャックを広げ、カメラとレンズを探る。雨が降るかもしれないので作業はザック内で行う。

 1月前にザックからカメラを落として壊してしまった。やっと修理が完了したばかりである。また落とすかもしれないので、いつもより慎重にカメラにレンズをセットした。

 使うのはニコンのマクロ55ミリ、顕微鏡撮影に使われていた優れたレンズで被写体に10㎝手前まで接近できる。

 カメラはソニーのミラーレスを使っている。子どもたちが古希のお祝いにプレゼントしてくれたカメラである。

 マウント変換アダプターでソニーのカメラにマクロレンズを装着している。だから撮影はすべて絞り、シャッタースピードもマニュアル撮影になる。

 デジタルカメラが世に出る前は、カメラ撮影はマニュアルが基本だった。絞りリングを回す、シャッタースピードのダイヤルを回す、などを計算して撮影する必要があったし、現像、プリントなどにも手間がかかっていた。従って1枚にかける思いが強い、そして撮影には技術が必要でもあった。

 今はデジタルカメラ、スマホが登場し、誰もがいとも簡単に撮影できるようになり、1枚にかける思いは薄くなってしまったのではないかと思う。

 ホソバナコバイモの撮影に入る、腰を屈め、膝をついての撮影になるため銀色のシートを準備する。このシートはアイスクリームの保冷用で便利なので、ザックのなかにいつも入れている。時には、草花に光を充てるレフ板として、ときには休憩用の座布団にもなる。

 ベルボンの小型三脚のカメラをセットする。この小型三脚は行きつけのカメラ店で格安で手に入れた中古品で今回、初めて使用する。

 三脚はしっかりカメラを固定できる物でないとカメラが倒れたり、固定ネジが緩んだりする。そして、手ブレを防ぐためにカメラの挿入口にレリーズを差し込んだ。

 ホソバナコバイモたちにレンズを向ける。ポイントとなる花を探し、周辺の花がポイントとなる花を盛りたてているかを確認する。

 かつて「春一番」を歌った女性コーラスユニット・キャンディーズはセンターに蘭ちゃんがいて、スーちゃん、ミキちゃんがサイドで盛り立てていた。AKB48などもほかのアイドルグループも同様で、センターだけでなく、脇にいるメンバーが大事なのです。

 アングルとセンターを決め、周辺の写り具合までファインダーのなかで確認する。

 絞りを決め、シャッタースピードのリングを回して露出を調整する。そして、レリーズボタンを押す。カメラのシャッター音が「カシャ」と心地よく響いてくる。感動の瞬間である。

 そんなイメージでマクロ55ミリの撮影を終え、マクロ90ミリのレンズに交換した。90ミリを使うとボケ具合が一段とよくなり、時には神秘的な写真が撮れる。

 マクロレンズでの撮影を終え、ソニーレンズに交換し、一期一会の出会いを逃さないようオートで撮影した。

 マンサクが咲く谷まで足を延ばす。標高650mあたりである。ここに取り付けた小型道標に黄色いペンキを塗り終え、谷から流れてくる小さな沢のそばに腰を下ろして休憩する。

 コンデンスミルクのチューブを絞ってコップに入れ、保温ポットのサーモスから湯を注ぐとホットミルクのできあがり。コンビニで買ったカレーパンを頬張ると皮がやたら硬い。趣味期限を見てみると今日の日付になっていた。「売れ残りかな」と思いつつ、口のなかで硬い小麦粉の感触を味わった。

 休憩を終え、ザックを置いたままマンサクを見に行く。ここは私がマンサク谷と名付けた場所でマンサクが10本近くある。

 スズ竹の藪をかき分け、谷を登ると周辺のスズ竹がすべて枯れていた。その理由は昨年、竹の花が咲いていて、その後、枯れたからである。

 枯れた笹の茎を折りながら藪を入って行く。いつもは竹藪を掻き分けて藪漕ぎをせざるを得ないが、今回は葉がないので進むのが楽だった。

 やがて小さくて黄色い花をつけたマンサクの花を見つけた。2分咲きくらいである。周辺の藪を歩くとほかにも咲いていた。場所を変えて対岸の谷を見ると、そこにもマンサクの花が確認できた。

春を知らせるマンサクの花 2020年3月1日撮影
春を知らせるマンサクの花 2020年3月1日撮影

 記録用にマンサクの花の撮影をして、ザックを置いてきた場所に戻った。ガーミン(GPS測定器)で標高と緯度経度を測定、携帯電話の受信状態も確認した。

 区役所、消防局、ドコモ九州と準備を進めているレスキューポイント作成の作業の1つである。

 マンサクの花も確認できたので、ここから降って登山口へと向かった。途中、若い夫婦と思われる2人連れが登ってきた。軽装である、とりあえず「こんにちは」と声をかけた。雨にあわなければいいが…。

2020年3月5日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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