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2020年03月09日 09:30

超高齢社会における医療課題は「フレイル対策」 介入手段は薬物療法から栄養療法へ(4)

 令和元年度の高齢社会白書によれば、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.0%、75歳以上人口は65〜74歳人口を上回る1,798万人となり、総人口に占める割合は14.2%となった。2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になると推計されている。超高齢社会における医療課題はそのまま高齢者医療であり、とくに地域医療では認知症、サルコペニア(筋肉減少症)などにつながるフレイル対策が大きな課題となっている。

 

富士山静養園
富士山静養園

自然環境を生かしストレスケアの場を提供

 地域医療を実践しながらメンタルサポート施設を運営する医療機関もある。静岡県・朝霧高原で診療所を開業する山本竜隆医師は、地域医療に携わる一方で、自然・環境・癒し・食などをテーマに、仲間が集う場として「富士山静養園」「日月(ひつき)倶楽部」を開設。世界のウェルネスリゾートやホリスティックリトリートに精通する医師が、各種ヘルスプログラムで心身のアップグレードをサポートしている。

 富士山頂上から駿河湾までの稜線を眺望する朝霧高原は、丘陵地帯に自然林が広がる地域で、気候療法の適応がある環境としても知られている。富士山麓の希少なロケーションにある日月倶楽部は、ストレス解消の場として、山本医師が手づくりで開設した自然療法を兼ねたウェルネスリゾートだ。

 約2万坪の敷地内には6室のメゾネットタイプの宿泊施設があり、窓からは雄大な富士山を臨むことができる。また、エアストリームを堪能できるコテージ付きの部屋も用意してある。テーラーメイドの食膳薬膳茶、山本医師監修の各種ヘルスプログラムで、心身のリフレッシュ、自然体感、自然欠乏対策に利用してもらう日本初の滞在・体感型施設となっている。

 施設は、築200年の貴重な建築資産である古民家を移転・増改築したものをはじめ、周囲を取り巻く富士山麓の自然環境とともに、利用者の健康意識向上や行動変容、気づき、伝統的な食育や環境教育を行う場でもある。このため、食事はレストランでの食事ではなく、栄養学としての食でもない。

 「自然の命をいただく実感や、いただけることに感謝の念をいだくことが本来の食育である」(山本医師)との考えから、敷地内に自生する野草や野菜を提供。宿泊客の要望に応じて、タイミングが合えば、シカ肉やイノシシ肉を使ったジビエ料理を出すこともある。

 日月倶楽部では、自然療法の考え方に基づいたヘルスプログラムを用意している。入所時に行う東洋医学的自律神経検査(良導絡検査)は、自律神経のバランスから心と体の状態を調べる検査で、皮膚に微弱な電流を通し、交感神経の興奮性を測ることで自律神経のバランスをみることが可能となる。また、女性限定で行われる良導絡トリートメントは、良導絡検査の結果を基にアロマオリジナルブレンドを作成。経絡を刺激して五臓六腑のバランスを整える、同施設のオリジナルトリートメント。さらには森林浴をしながら、標高700mの中山保養地で、新鮮な空気のなか、呼吸法としてのフィールド吹矢を楽しむこともできる。

自然から遠ざかるほど病気に近づく

 山本医師が、この施設をつくるきっかけとなったのは、「人間は、自然から遠ざかるほど、病気に近づく」というヒポクラテスの言葉だった。そして、山本医師が注目したのが、ヒポクラテスの哲学を実践する「ミリューセラピー」だった。

 「ミリュー」とはフランス語のMikieuから派生したもので、真ん中、中間、環境とか境遇、社会、空間として自然環境や地球環境を指し、とくに人間を中心として取り巻かれる環境、人間の行動を志向させる空間といった意味がある。つまり、人間を取り巻く文化や生活を基盤とする風土、それに基づいて生きられる環境といってもよい。ミリューセラピーにおいて重要な要素は、「時間の経過が感じられる」「自然の循環が感じられる」「五感を刺激して知覚を開き、心を開く」「瞑想できる」「人との交流を促進できる」などが挙げられる。

 山本医師は、「人間は数千年、数万年という長きにわたって自然のリズムに従い生きてきた動物で、遺伝子にもその影響が深く刻まれています。太陽や月のリズム、四季の変化、自然素材の食材と衣服での生活。このように人工物がほとんどない生活様式を取ってきました。しかし、産業革命を経て、近代化を推し進めてきた結果、自然界には存在しない化学物質が生活のなかに溢れてきました。今やどこに行っても電子音が鳴り、電磁波が私たちの周囲を覆っています。私はかつて東京で西洋医学と民間療法を組み合わせた統合医療を実践していました。実は、統合医療の考え方は予防や養生法も含まれるのです。私は地方ならではの特性を生かしたやり方で、統合医療を実践しているのです」と話す。

(了)
【吉村 敏】

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