2024年03月29日( 金 )

「コロナショック」需要減少による原油価格の暴落とその波長(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 18日の米原油相場は、コロナウイルスの世界的な感染拡大による景気の後退が懸念され、24%急落。1バレル=20.37ドルとなり、2002年2月以来の安値となった。

 この流れを受け、韓国でもガソリンスタンドのガソリン価格が7週間連続で下落している。今回は何が原因で今回の原油価格暴落が起こっているのかについてと、原油安が経済にどのような影響を与えることになるのかについて取り上げてみよう。

 コロナウイルスは新たな局面を迎え、米国、ヨーロッパなどを中心に急激に感染が拡大している。患者数も、米国では1日で5,335名が追加され、イタリアでも一日で5,986名が増加し、世界を驚かせている、感染拡大はこれからが本番ではないかという不吉な予感が拭えない。

 このような患者数の急激な増加に、各国政府は感染拡大を抑止するため、外出を規制したり、都市を封鎖したりと、強力な対応策を繰り出している。通常の自由な経済活動ができなくなった現在、産業活動は停滞し、全世界的に石油の需要が減少しつつある。世界第2位の石油消費国である中国で需要が著しく減少したからだ。工場は操業停止を余儀なくされ、航空便も運休が相次いでおり、夜になると、通りに人が少なくなり、タクシーの乗客も半分以下に減っている。

 原油安の1つ目の原因としては、コロナショックによる需要減少をあげることができるだろう。もう1つの原因は、3月5~6日に開かれたOPEC(石油輸出国機構)プラスの会合だ。石油の需要が減少しているなか、産油国同士で協調減産が話し合われたが、ロシアが反発し、協議は決裂。その後、中東最大の産油国であるサウジアラビアは、自国産原油の大幅値下げと増産を表明し、それが原油価格暴落の引き金を引いた。

 このような状況下、原油市場の代表的な指標であるWTI原油先物価格は大暴落。原油価格は今年2月までは1バレル=50ドル台で推移していたが、3月9日には2016年以来最安値である1バレル=30ドル割れとなり、18日にはついに20ドル台となった。問題は原油価格が今後どこまで下がるか誰も予測できないことだ。

 減産の合意期限である3月末までは、産油国がすでに合意した1日210万バレルの減産を続けることになるが、4月からは減産分の210万バレルが市場に供給されることになるので、原油価格はもっと下がる可能性もある。

 それでは、原油価格が下がれば、原油の輸入国にはどのようなメリットがあるのか。原油輸入国である韓国の場合、原油安は、原油を安く仕入れることを意味し、ガソリン価格が下がったり、暖房費用の負担も軽くなり、さらに、国の経常収支の改善にもつながる。また、電力会社や運送会社にとっては、原価が下落することになるので、企業活動には好影響となる。

 このように原油安は、購買力の上昇による消費の増加と、企業収益の増大につながる。しかし、原油価格の下落の原因が、供給側によるものではなく、今回のように世界経済低迷のような需要の減少による時には、原油価格が下がっても、需要回復にはならず、むしろ経済に悪影響を与えることになることが多い。

(つづく)

(後)

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