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2020年03月26日 07:00

COVID-19感染拡大の裏で進む、より深刻な脅威の数々(後)

国際未来科学研究所代表 浜田和幸

 実は、多くの耳目が新型コロナウイルスに釘付けになっているのだが、その陰ではさらなる深刻なリスク要因が大きな影を投げかけているのである。マジシャンの手口に例えれば、右手を高く上げ、観客の関心を引きつけている間に、左手でマジックの種を仕込んでいるに等しい。どういうことか説明してみたい。

 というのは、今、東アフリカではイナゴの一種「サバクトビバッタ」が異常発生しており、国連によれば「人類の危機をもたらす緊急非常事態」というのである。なぜなら、4,000億匹と目されるイナゴの大群が人類の食糧を食い尽くし、卵を産みながら、アフリカから中東、そしてアジアに移動を続けているからだ。

 アフリカのケニアが最も深刻な被害を受けているが、「過去70年で経験したことがない」というほど大量にイナゴが発生し、ニューヨーク市の3倍にあたる広い面積の空を覆い、昼間も真っ暗闇になっている。アフリカからアラビア半島にも飛来しており、イエメン、サウジアラビア、イラン、パキスタン、インドと被害は拡大中である。

 そして2月27日、中国政府の国家林業草原局では「蝗害緊急通知」を発令。現在4,000億匹といわれるイナゴが「今後500倍に増加し、中国に侵入する恐れがある」というのである。「一難去ってまた一難」ということであろうか。新型コロナウイルスは目に見えない敵であるが、サバクトビバッタは目に見える脅威に他ならない。

 FAO(国連食糧農業機構)も「このままでは6月までにイナゴの数は500倍に増える。対策費用は1億3,800万ドルが必要だが、2月末の時点で5,200万ドルしか集まっていない」とお手上げ状態を告白している。日本ではまったく関心のレーダーに引っかかっていないようだが、ただでさえ食糧難に襲われているアフリカや内戦状態に直面している中東や南アジアにとってはコロナとのダブルパンチに違いない。

 残念ながら、FAOが発するSOSに対して、日本をはじめ各国は無関心の鎧を纏ったままである。しかし、早晩、COVID-19より深刻なパンデミックをもたらしかねない。迫りくる危機の予兆に対して、日本はあまりにも無防備といえるだろう。

 さらなる迫りくる危機はヨーロッパに押し寄せる難民である。その最前線に晒されているのはギリシャに他ならない。2月28日、トルコは国境閉鎖を緩和する措置を発表した。そのため、陸路、海路を問わず、大量の難民が雪崩を打って押し寄せることになった。難民の発生源はシリアである。2016年、トルコはEU諸国との間で、食糧や財政援助と引き換えにシリアやその他からの難民を自国内で保護しEUへの流出を抑える協定を結んだ。

 しかし、シリア情勢は一向に改善せず、トルコにとっては500万人に達する難民の保護は限界を超えたようだ。「もうこれ以上、難民の保護はできない」とお手上げ宣言。その結果、続々と難民はギリシャを目指し始めた。もちろん、この流れはほかのヨーロッパ諸国にも波及することは目に見えている。

 危機的状況に陥ったギリシャでは国境を固め、難民を追い返すため、催涙ガスやホースでの散水を繰り返している模様だ。ボート難民が違法に侵食しつつあるギリシャ国内の島々では現金を支給し、出身国に帰国するよう促しているが焼け石に水の状態である。

 実は、シリアに限らずアフリカ、中東、南米、そしてアフガニスタンやミャンマーなどアジアでも難民が発生している。内戦や宗教的な対立に加え、自然災害の影響が大きく影を落としていることは間違いない。国連の推計によれば、全世界で1億人を超える難民が発生している。彼らが暮らす難民キャンプでは医療施設はいうにおよばず、水や食料もままならない。こうした劣悪な環境に新型コロナウイルスが発生すれば、その行く末は想像に難くないだろう。

 加えて、全地球的な危機としての温暖化が指摘できる。人類は1880年から気候に関する記録を取り始めた。アメリカのNASA(全米航空宇宙局)やNOAA(全米海洋大気管理局)の報告によれば、2020年2月の平均気温は1880年以来、2番目の高温を記録したという。北半球は異常に暖かい冬となり、とくにヨーロッパでは記録的に暑い冬場を経験した。

 何しろ、氷に閉ざされているはずの北欧ノルウェーでは1月に19℃を記録したのである。これは過去の平均気温を25℃も上回る異常気温であった。2019年12月から2020年1月、2月にかけて、ヨーロッパもアジアでも記録が塗り替わる異常な高温が続いたものである。こうした異常気象は北極の永久凍土を溶かし、これから各地の海面上昇を引き起こすことは避けられないだろう。

 これまでも水没が危惧される島しょ国家は数多く存在していたが、海岸沿いの大都市も安心できない。万が一、地震や津波が発生した場合には、東京や上海などは真っ先に飲み込まれるリスクに直面する。

 こうした数々の目前に迫る危機に対しても、我々はどこまで真剣に対応策を検討、構築しているのだろうか。「自分だけは大丈夫」という根拠なき楽観論では「後の祭り」にならざるを得ない。世の中は「新型コロナウイルス一色」の感が無きにしもあらずであるが、危機は忖度してくれない。安易な思い込みで後々後悔しないように、危機意識のレーダーを研ぎ澄まし、危機が顕在化する一歩前に回避策を講じる発想と実行力が今こそ問われる。

(了)

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