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2020年03月27日 16:57

「グローバル人材共生」に向けて~自民党が実習生制度の抜本的改革を議論

変革が求められる実習生制度

 自民党が技能実習生制度の抜本的制度改革を議論しているようだ。技能実習生制度に関して、従前多くの問題が報じられてきた。本来の趣旨である技能習得とは無関係の単純作業労働への従事のほか、長時間労働、低賃金、暴言・暴力、セクハラなど人権に関わる問題も多い。これらの問題が生じている背景には、企業と実習生との意思疎通の問題、企業に教育・指導を行う余裕がないこと、実習生またはその家族が来日時に多額の借金を背負っているため、勤務先の要求を断りづらいことなどが指摘される。

 自民党は今般、技能実習生制度を過去30年、開発途上国の人材育成施策として評価を得ているものとしたうえで、抜本的制度改革を行うことを提唱している。現在の実習生制度のままでは、SNSの普及も後押しして上記の問題に関して日本の悪評が派遣国で広まる一方で、同制度は早晩行き詰まるであろう。制度が大きく変わることを期待したい。

外国人人材を企業のメリットに

 自民党は「グローバル人材共生」という概念を提示し、実習生を単なる代替労働力ではなく、日本に以下のプラスの影響をもたらし得るグローバル人材として提起している。そこで想定されていることは、日本人の国際性を高めるきっかけとなること、日本の魅力を磨くチャンスとなること、実習生が帰国後に日本の魅力を伝える伝道師となることなどである。

 そのため、送り出し国や外国人人材の立場になって考えること、悪徳ブローカー、悪徳送り出し機関や監理団体、悪徳企業を排除することの重要性を説く。また、彼らを就労者としてのみならず生活者でもあるとしてその存在を捉え直すとともに、人材のキャリアステージに合わせた在留資格を認めることも議論している。

 このように、コスト削減ではなく、日本人採用では得られないメリット、たとえば優秀な外国人人材の確保、社内への刺激という点から実習生制度が再定義されるのは望ましい。福岡県の監理団体関係者は、実習生に正当な待遇を保証し、技能を習得させるのであれば、費用は決して日本人より安くないと受入企業に理解を求めたうえで、帰国した元実習生が日本と派遣国との間の架け橋となり、現地での企業の事業展開に貢献する存在になり得るとメリットを説く。企業には、実習生制度を通して、いわば企業にとっての付加価値の創出を図るようにとの発想の転換が求められていく時代になったと理解してよいだろう。

「グローバル人材共生」に向けて

 自民党は制度面の具体的な変更に関して、「人材育成マネージャー」(仮称)「企業内管理者」という資格での在留を認めることも議論している。企業側にとってこれらの人材の活用は、実習生との意思疎通の向上に役立つとともに、実習生の長期的視点からの育成を行いやすくなるのではないか。

 また、以下の変革を行うことを議論している。従前の技能実習制度と特定技能制度の統合、一本化、待遇を日本人と同等とすることの実効性を担保する体制づくり、制度の悪用、人権侵害などを絶滅する措置を講じることなどである。これらは長年意識されてきたことであるが、より具体的な制度および厳しい監理を担保する仕組みが求められており、最終案として世に出る時には「グローバル人材共生」に向けた自民党・政府の本気度を示してもらいたい。

 記者が以前に数社の技能実習生に取材を試みた際、全員から拒否されたことがあったが、マスメディアに情報提供をしたことが勤務先に知られると不利益を被ると懸念したのであろう。業種、勤務地、国籍などがわからないように記事にすると説得してもその懸念を払しょくできなかった。深刻な問題を抱えている人が、声を上げにくい状況にある。このような状況がなくなり、実習生が気軽に良い点も悪い点も含めて話せるようになる制度設計および運用を望みたい。

 ※特定技能制度は2019年4月から導入されており、実習生の技能習得よりも国内の人手不足問題への対応を主眼としたものである。ただ、同年末の時点で1,621人と、数は伸び悩んでおり、原因として、派遣国との二国間協定の締結の遅れ、派遣国現地での技能試験実施の遅れのほか、受入企業に法令順守、以前の技能実習生の受け入れ時にトラブルが発生していないことが条件となっていることなどが挙げられる。

【茅野 雅弘】

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