2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

『脊振の自然に魅せられて』「ショウジョウバカマに会いに行こう」

 今年の山の春は訪れが早い。春をいち早く知らせるマンサクの花や、ホソバナコバイモ(ユリ科)の花も、例年より1週間から10日は早く咲いた。
 山の情報アプリ「ヤマップ」を検索し、登山者から花の情報を得ると、やはり早く咲いている。
 最近は登山アプリ「ヤマップ」で初心者でも気軽に山歩きができるようになった。また、スマホの普及で撮影も簡単だし、すぐにSNSへアップできる時代である。

 今年の2、3月は道標のメンテナンスやブナ林の調査を行ったので、花の撮影に行く時間が取れなかった。
 「ショウジョウバカマに会いに行こう」
 天気予報を確認すると、3月29日(日)の前後は雨予報だ。29日しかない。

 久しぶりの花の撮影にワクワクする。
 カメラとレンズを選ぶ。軽量にするためソニーのミラーレスカメラ「アルファ6000」と専用レンズ、それに仲間から借りたキヤノンの100mmのマクロレンズをソニー用にマウント変換し、試してみることにした。

 自宅から糸島市にある白糸の滝駐車場へ向かう。所用時間を1時間とみていたが40分で到着した。
 車から登山靴を出し、スニーカーから履き替える。前日は雨だったので、登山道が濡れていると思いスパッツも装備する。
 行き先は羽金山(900m)へ、この周辺に九州で最大のショウジョウバカマの群生地が広がり、杉木立とうまく共生している。木漏れ日を受けながら自生しているのである。
 この花を求め、羽金山を目指す登山者のグループを見かけた。高齢者、若者グループなどそれぞれである。
 芽吹きを始めたシロモジを見つける。「春なのだな。植物はどのようにして季節を知るのであろう。気温と日照を図るセンサーがあるのかもしれない」と思っている。

 登山道を30分も歩くと、少しずつショウジョウバカマを見かけるようになった。
 脊振山系の縦走路は福岡県と佐賀県の県境を歩く。
 ここのショウジョウバカマは、なぜか北斜面の福岡県側に自生している。桜は休眠打破をして開花するが、この花も北風を受ける場所で生き延びている。
 群生したショウジョウバカマが登山道から外れた杉木立のなかで目に入った。立ち枯れた木のなかを分け入って、ショウジョウバカマに目を配る。
 そして、どの花が生き生きとし、かたちが良いかを見分ける。
 ショウジョウバカマは家族で咲いていることが多い。そのかたちの良い家族を探すのである。雨上がりで少し水滴を含んで生き生きしている。

羽金山のショウジョウバカマ(2020年3月29日撮影)

 腰を屈めて小型三脚にカメラを固定、キヤノンのマクロ100mmを試し撮影する。カメラをマニュアルにして絞りと露出を調整するが、撮影がうまくいかない。
 相性が悪いとキヤノンレンズを諦め、ソニーレンズに交換しローアングルで撮影する。

 いつもはファインダーをのぞいてアングルを決めるけれど、地面すれすれでカメラを花に向けているので、液晶モニターを確認しながら撮影した。
 登山道をさらに進み、花の群生を見つけながら撮影を続けた。

 毎年のように撮影に訪れていたが、たくさん咲いていて撮影に最適な場所を忘れてしまった。ここだと思う場所に向け、小枝や倒木を避けながら斜面を降りてみるが見つからない。諦めて先へ進む。

 1時間ほどのショウジョウバカマの撮影を終え、羽金山山頂の電波塔見学へ行く。入り口のインターホンで見学を申し込む。
 この電波塔は日本に2本しかない。東日本は福島県 「おおたかどや山(790m)」、西日本はこの羽金山にある。二等三角点の羽金山(900m)の山頂は、学生時代に道標を設置した場所で、そのころ二等三角点を表示するヤグラが立っていた。今はこのヤグラはなく、御影石の標石となっている。
 高さ200m、青空にそびえる電波塔を間近で見上げると、青空に体が吸い込まれそうになる。

国立研究開発法人情報通信研究機構・はがね山標準電波送信所

 帰りは電波塔の専用道路を下り白糸の滝へ向かった。糸島半島を見渡せる場所で強い風が吹き、帽子が飛ばされそうになった。風を受け手も冷たくなったので手袋をする。首筋も寒いのでネックウオーマーをする。帽子を深くかぶり直して林道を下った。
 この日、関東は雪であった。この風とともに、新型コロナウイルスも飛び去ってくれと願うばかりであった。

 「ショウジョウバカマ」の学名は「ツクシショウジョウバカマ(ユリ科)」で、ピンク色も見かけることがあり、関東方面で咲くショウジョウバカマとは種類が違います。
 花が咲き終えると、10㎝ほどの茎は種を遠くへ飛ばそうとグングンと伸び30㎝ほどになります。
 「ショウジョウ」とは空想上の動物で、オランウータンの赤い頭の毛に見立てられ、葉がそれの袴にイメージして名前が付けられています。

2020年3月31日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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